第二十五話
「出来たぞ、“明けゆく虫の鍵”だってさ……」
「むむむ、虫!?」
楓は顔が青くなりながら叫ぶ。
そう、楓さんの弱点。
虫が大嫌いなんです。
「楓は昔から虫が嫌いだったよな、どうする? 今回は楓はお留守番しとくか?」
「え!? うーん、いや、けどなぁ……」
めちゃくちゃ悩んでる。
「おい楓。これは助言じゃが、今のお主らなら20の鍵を使っても大丈夫とは言ったけど、どちらか1人で挑むんじゃったらおそらく死ぬぞ」
「ごめん、悩む事すら間違ってた。それなら行くよ、解は絶対に私が守るから」
楓は真剣な目でルキを見つめる。
「……すまんの、ちょっと心構えを知りたかっただけじゃ。これから厳しい戦いが始まるかもしれんしの、中途半端な考えじゃ危険すぎる」
「大丈夫、中途半端な気持じゃないよ。苦手なものも克服する」
「それならいいんじゃ。あ、ちなみにこの鍵たちを合成するなら虫の鍵じゃなくなるぞ」
「「えっ!?」」
「そうじゃ、右手に合成元になる鍵を持つと言ったじゃろ? 合成元が“明けゆく虫の鍵”の場合“明けゆく”部分が残されて、素材となる“密かな森の鍵”の“森”部分が引き継がれるんじゃ」
「と言う事は“明けゆく森の鍵”になるって事か?」
「じゃの、しかし同ランク帯の鍵同士ならその法則は当てはまらんのじゃ……基本的に同ランク帯のランダムな鍵に生まれ変わるか、1つ上のランク帯の鍵に生まれ変わるんじゃ。ただ中には合成出来ない特別の鍵もあるがの」
「同ランク帯ってどこまでが同ランク帯なんだ?」
「基本的に〈天啓力〉の消費量が1〜9、10〜19……と言った具合じゃの」
「なるほどな。あと特別な鍵は合成出来ないってもしかして、ルキと会ったあの鍵は合成出来ない、とか?」
「よく分かったの、あれは特別も特別、普通じゃったらお目にかかれない超特別な鍵じゃからな」
ルキがフフンと無い胸を張る。
「なんか難しいねー、けど今回は虫じゃないって事でしょ!? ラッキーだね!」
(さっきの真剣な眼差しの楓さんはどこへ行ってしまったんですか?)
「じゃあさっそく合成してみるか!」
俺は右手に“明けゆく虫の鍵”、左手に“密かな森の鍵”をもってキーメイカーを発動する。
『鍵の合成を行うには〈天啓力〉が10必要です。合成を行いますか?』
あ、合成には〈天啓力〉を10消費するんだな。
(いいよ)
『“明けゆく虫の鍵”に“密かな森の鍵”を合成します………………“明けゆく虫の鍵”は“明けゆく森の鍵”に変化しました』
「おお、ちゃんと“明けゆく森の鍵”になったぞ!」
「ほんと!? やったぁー!」
「じゃあダンジョンに入る準備を始めるか」
俺と楓はいつもつけている装備とお揃いのポケ○ンパーカーを着る。
「なんじゃお主ら、同じ服を着て仲が良いの? 儂にもその服はないのか?」
「な、仲がいいっ!? ちょっとルキちゃん! そりゃ悪くはないけど仲が良いってそういう事じゃなくて別にまだ友達としての仲良さであってそれ以上はこれからごにょごにょ」
「ああ、ただこのパーカーはもうないし、あったとしてもサイズがな……」
「まあ無いなら無いでいいぞ、儂は創れるしの」
「「えっ!?」」
ルキがそう言うと全身が光り、おさまった頃には俺達が着ているパーカーとそっくりな服をワンピースの上から着ていた。
「おいルキ、なんだそれやばすぎるだろ、何でも創れるのか?」
「なんでもは創れないぞ、創れる物だけじゃ。ちなみにこれは魔力をそれなりに使うからこの身体ではあまり使いたくないんじゃけど……儂達はパーティーだからの、形から入ったわけじゃ」
(なんだこのチートキャラは。ルキえもんじゃねーか)
「そうだ楓、お主はダンジョンに入ったら自分と解に守護者スキルのプロテクションをすぐ使うのじゃぞ、それを使えば大抵の攻撃は防げるからの」
「解、ほんとにルキちゃんて何者なのかな?」
「……多分、ルキえもんだ」
「ルキえもん!? ああ、チートキャラって事?」
楓は笑いながら察する。
「便所の前で突っ立ってないではようダンジョンに行くぞ、ほらほら儂に続くのじゃ!」
足取り軽くトイレのドアを開けようにも、俺がドアを開けないとダンジョンに繋がらないことをルキは思い出し、俺の後ろに周りこんで「はよう!」と言いながら俺の背中を押す。
俺は文字通りルキに背中を押されつつ、“明けゆく森“のダンジョンに入った。
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