第二十三話

「儂はもう駄目じゃ、こんなんじゃあやつを倒す事など出来ん……」


 目の前のロリっ子は四つん這いになりながら嘆いている。


「あの……もしかしてさっきのお姉さんなんですか? あのワガママボディはどこにいったんですか!?」


 俺は一縷の望みにかける!

 頼む、元に戻ってくれ!


「駄目じゃ……おそらく鎖の封印を解く際に今までに溜め込んでいたエネルギーも一緒に開放されてしまったんじゃ……。だから本来の姿に戻れん、言わばこの状態はセーフモードなんじゃ」


 確かにさっきのお姉さんがそのまま小さくなって、可愛くなって新登場! て感じになってるな……若干キャラも子どもに寄せて来てフレッシュさも出てる。


「儂はこのまま身体は子ども、頭脳は大人でずっと1人でここで生きてくのじゃ……ああ、可哀想な儂……」チラチラ


 なんでこっちをチラチラ見ているんだ?

 おい、何を考えてるロリっ子よ?


「解、何とかしてあげれないかな?」


 楓さん、騙されちゃあ駄目ですよ。あのワザとらしい行動は俺達を騙す演技ですよ。


「あーーー! 可哀想な儂! おーいおい……」チラチラ


「解……」


「あーーー! 分かった、分かった! しばらくの間、俺の家にいればいいよ……」


「おお、話の分かるエロガキじゃの!」


 おい、今なんつった?


「何がエロガキだ、俺は汚れを知らないピュアボーイだぞ!」


「ふふん、何を言っておる、さっきは儂の身体を見て欲情しておったくせにのう」


「ちょちょちょ、何言ってるのかな!? そんな事思ってないし! ハッ、いやいや本当なんだって楓さん!」


 楓のめちゃくちゃ冷たい視線がこちらに向いている。


「何でも言う事聞くと言ったのは儂じゃし……いいんじゃぞぉ……? この身体を好きにしても……」


 ロリっ子は上目遣いでこちらをのぞき込んでくる。


「あ、ロリっ子は本当に興味ないので大丈夫です」


 俺は真顔で答える。

 俺はあのお姉さんが良いんです。


「なんじゃとおおおおおお!!! 失礼な奴め!!!!!!」


「なんだよ!」


「はいはいはい、とりあえず解の家へ帰ろ、私なんだか疲れちゃったよ〜!」


 楓がそう言って伸びをする。


「そうだな、帰るか……」



……


……………


…………………………



「なんじゃこの緑色の飲み物は!!! 甘くてシュワシュワでとても美味いぞ!!!」


 ロリっ子は椅子の上でピョンピョン跳ねて“ロー○ルさわやか”を飲んでいる。

 とりあえず、俺と楓が普段着に着替えてる間、ロリっ子に“ロー○ルさわやか”を出して待っててもらっていたのだが、ロリっ子はそれをとても気に入ったようだ。

 良く分かるロリっ子だな。


 そうして、3人がテーブルに座りこれからの話を始める。


「とりあえず自己紹介からするか……俺は南條解でこっちが佐藤楓。ロリっ子はなんて名前なんだ?」


「ロリっ子言うのやめるのじゃ! 儂は王じゃぞ、ほんとに失礼な奴め!」


 ロリっ子はプンプンしながら“ロー○ルさわやか”を飲んでいる。


「んで王さま、名前は何ていうんだ?」


「ふん! ……色々な呼び方をされていたが、そうじゃの、儂の事は“ルキ”とでも呼ぶが良い」


「ルキちゃん、よろしくね。でも何であんな所に閉じ込められていたの?」


 楓がルキに質問する。


「ルキちゃんっ……。 わ、儂は父上との喧嘩に負けて、仕方なくあそこに閉じ込められていたのじゃ」


 ルキちゃん言われて照れてないか? てかお父上やばすぎだろ。

 大丈夫かこいつの家庭環境。


「どれくらい閉じ込められていたんだ? 3日くらいか?」


「バカ者、そんなわけあるか! もう詳しくは憶えておらぬが、うん1000年は閉じ込められておったわ!」


「またまたぁ、そんな嘘ついても騙されないぞ」


「本当なんじゃ!! 人間の尺度で考えるな、儂は本来は不滅の存在なんじゃぞ!」


 ルキは本当に人間じゃないのかもな。

 角生えてたし……今はちょこんとおでこに角が生えてるくらいだけど……。


「じゃあ、どんな存在なんだ?」


「神とでも思うが良い! フハハ!」


 なんか、とても残念な子なんだな……。


「あーっ、今残念な子とか思ったじゃろ!? 許さんぞぉ!」


 ルキが椅子の上で地団駄を踏んでいる。


 なんで分かるんだ?

 俺って本当に顔に出やすいのか!?


「いやいや、思ってませんよ」


「ほんとかのぉ、まあいい。それで儂は待っておったのじゃ、ずっとずっとあの場所で。お前が来るのをな…………」


「……そういえば、なんで俺の能力であの鎖が外せると分かったんだ?」


「まあそれは……おいおいじゃ。とりあえず儂はあの場所で少し前からキーメイカーの力を感じ取っておった。そして儂と因果がある数字を使われるのを待ってたんじゃ、そして丁度それが使われる時を見計らって、少しだけこちらから干渉させもらいそっちの次元とこちらを繋げた。って訳じゃの」


 干渉……?


「あーー! やっぱりキーメイカーがバグったのはルキのせいだったのか! おかげでこっちは〈天啓力〉が1になったんだぞ!」


「それは悪いと思っておる。どれ、儂が少しだけ〈天啓力〉を戻してやろう……ほれ」


 ルキは俺のおでこに手を当て、目を閉じる。

 ルキの手が光ったと思ったらルキから「完了じゃ」という言葉が出る。

 

 俺は不審に思いながらもステータスを出してみる。




【名前】南條 解

[レベル]9

[職業]鎖使い

[スキル]チェイン

【天啓】キーメイカー☆0、鑑定(初級)☆2、幸運☆1

【天啓力】300

[HP]54(65)

[MP]5/22 

[筋力]37(45)

[敏捷]32

[魔力]18

[運]65



(本当に戻ってる……でも何で300なんだ?)


「戻ったじゃろ? 儂は〈天啓〉を治癒したのじゃ、楓の持っている治癒師が身体を治すように、これは〈天啓〉本体を癒やせる力じゃの」


「ああ、だから☆0、1、2で〈天啓力〉300って事か……」


「そういうことじゃの」


 てか何だこの力は……。

 次元に干渉したり、〈天啓〉を癒やす力を持っていたり……本当に神みたいな力だな……。


「……そういえば俺の持つ〈天啓力〉を超えて鍵を作ったのに、なんで俺は死ななかったんだ?」


「ああ、それは儂が手を加えたのじゃ、だから儂が関わっておらん時にそれをすると本当に死ぬぞ」


 ますます分からん、なんなんだこのルキは……。


「なんでルキちゃんは私の〈天啓〉が治癒師って知ってたの?」


 静かに聞いていた楓が口を開く。

 確かに、俺の時もそうだったが……俺達の事は何も知らない筈なのになんで知ってるんだ……?


「それはな……乙女の秘密じゃ☆」


 ぐぬぬ……気になる。

 

「まあ、とりあえずこれから世話になるの。ダンジョン攻略は儂も手伝ってやるし大船に乗ったつもりでいると良い!!」


「えっ!? ルキもついてくるのか?」


「そうじゃ、どこまでもついて行くぞ! なんなら解のベッドの中までついていってあげても……良いんじゃぞ?」


「あ、ロリっ子は本当に興味ないので大丈夫です」


「ほんとに失礼な奴じゃのおおおおおおお!!!!」


「ほらほら、喧嘩しない!」



 ひょんな事から自称王で神、婆口調のロリっ子“ルキ”が仲間になった。

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