第二十二話

(やばいやばいやばいやばいやばいやばい!!!)


 このままじゃ〈天啓力〉をすべて消費して死んでしまう!

 まだこれからって時に俺は死んでしまうのか……。

 楓すまない、俺は楓を守ってやれそうに……ない……。




 俺は椅子に座り真っ白になった、そう…灰の様に真っ白に……。





「何やってるの? 解?」


「え? 俺生きてる?」


「うん、普通に生きてるけど。」



 よ、よかったあああああああ!!!!

 キーメイカーがバグって発動しなかったのか!!

 666消費とか絶対あかんやつやん!

 まじで助かったわ!



 俺は鍵を持った右手で額の汗を拭う。


「ふぅーーー。……ん? なんで右手に鍵があるの?」


「ちゃんとキーメイカーは発動してたよ、解。」




 ……わりい、俺死んだ。






(いやいやいや、ちょっと待て待て、なんでほんとに生きてるんだ? これはしっかり確かめなきゃだめだぞ)


 俺は自分のステータスを出す。



【名前】南條 解

[レベル]9

[職業]鎖使い

[スキル]チェイン

【天啓】キーメイカー☆0、鑑定(初級)☆2、幸運☆1

【天啓力】1

[HP]42(50)

[MP]17

[筋力]29(34)

[敏捷]25

[魔力]14

[運]50



 うーん、何にも変わりはないよな?



 ……あれ?




(わたしの〈天啓力〉低すぎっ…!?)



……


……………


…………………………





「大変な事になったね……」


 楓は口をぽかんと開けながら俺のステータスと新しく作った鍵を見ている。


「てか、なんでこの鍵の名前分からなかったの?」


「そうなんだよな、なんかアナウンスされた時も聞き取れなかったし、鑑定を使っても伏せ字みたいになって見えないんだよ。もっと上の鑑定だったら分かったのかな?」


「まあ、分からないものは仕方ないよね。」


「ああ、てか頑張って増やした〈天啓力〉が1になってしまいますた……。それに伴いステータスも低くなりますた」


 これはめちゃくちゃ悲しいぞ……。

 なんでか知らんが生き残ったのは不幸中の幸いだけど、〈天啓力〉1って……。


「ま……まあ、またダンジョンに潜ってコツコツ〈天啓力〉上げてこうよ! 私も手伝うし、ね!」


「どうやって……?」


「え?」


「この〈天啓力〉を666消費した鍵以外、ダンジョンに入れる鍵ないよ……」


「あっ……」



 事態は思ったよりも深刻だった。




……


……………


…………………………





「まじで、本当にまじでやばかったらすぐ戻るぞ、フリじゃないからな? まじで〈天啓力〉666分の鍵は何が起こるか予想もつかないぞ?」


「わ、分かってるよ、私だって怖いんだからね……」


 話し合いの結果、俺達はこの“縛られし■■の王の鍵”を使う事にした。

 危険なのは承知だがこのまま何も出来なくなるのは嫌だし、ちょっとだけ、さきっちょだけ鍵を使って中の様子を見る事にした。



「じゃあいくぞ……。てか楓、俺を押すなよ? 絶対に押すなよ?」


 フリじゃないからな、まじで。

 ガチャリとドアを開け、中を確認する。





《やっと来おったか……はようこっちへ来い……》




!?


(なんだ!?体が影みたいなものに縛られ……)


 俺達は影の様な物に全身を縛られて、何も出来ず宙に浮く。

 そして凄い力で部屋の真ん中へ引き寄せられる。


 俺は体も首も全く動かすことが出来ず、目だけで周りを確認する。

 部屋は前に入った宝箱の鍵の石室と同じ様な造りだったが、決定的に違う所が1つ。


 石室の真ん中に、ボロボロの服を着たエッチなお姉さんが紫色のメッシュが入ったピンク色の髪を地面まで垂らして、膝立ちの状態で両手両足を天井から伸びる鎖で縛られていたのだった。


(ふーん、エッチじゃん。)


 ……いやいやいや! 何だこの人!?

 なんで鎖で縛られているんだ……?

 てか角!? 頭から2本角生えてますけど!

 しかもなんで服がボロボロなのに大事なところはしっかり隠れてるんだ!? なんでぇ!? それが1番納得いかないんだけど!


《どれだけ待ったと思うとるんじゃ……はようこの鎖を解け》


 どういうことだ?

 てか体の自由が効かないし……口が動かないから喋れないんだけど……。


《ああ……そうじゃな、影で縛ってたら話せもせんか。ほれ……》


 そう言うと俺達の体は地面へと降り自由になる。


「あ、貴女は一体何者なんですか……?」


 俺はエッチなお姉さんに聞く。


《儂か? 儂は……王じゃ、本来こんな所に縛られていて良い訳が無い。はようこの鎖を解け》


 よく彼女の顔を見てみると口を動かしてない、おそらく念話的な何かで話してるのか?


「いや、鎖を解けと言っても……どう解けば良いんです?」


《お前は鎖使いのはずじゃろ? 力を使えばこの鎖は解けるはずじゃ。》


 俺と楓は顔を見合わせる。


「ちょ、ちょっと待ってください!」


 俺はエッチなお姉さんに少し待ってもらう。


「いや、絶対に怪しいでしょ? 解、早くここから出ようよ……」


「そうだよな、どう考えても怪しいよな。……分かった」


 俺はエッチなお姉さんの方に振り返り。


「すみません、俺達ちょっと急用を思い出したんで一旦帰ります。また来ますのでその時にでも……」


《鎖を解いてくれたら、何でも1つ言う事を聞くぞ?》


 えっ!?今なんでもって…。

 俺はエッチなお姉さんのワガママボディをみる。


 ……ごくり。



「ちょ、ちょっと解! あんたその顔、イヤらしい事考えてるんじゃないよね!?」


(なんで分かったんだ!?)


「そそそ、そんなわけ無いだろ! 流石に失礼だぞ楓さん!」


「……」


 楓がジト目でこっちを見てくる。


「ご、ごほん。まあ、そのなんだ? このお姉さんも悪い人じゃなさそうだし…? 俺が助けれるなら助けてあげても良いんじゃないのかなぁ? て思ったり?」


 断じてエッチな目的ではない、断じてだ!


「いや私達、初手から影みたいなものでいきなり縛られたんだけど……、まあ解がそう言うなら良いよ……けど、どうなっても知らないからね!」


 楓はプイッとそっぽを向く。

 俺は冗談ぽくは言ったが、何かこの人は助けておかなくちゃならない様な気もしたんだ……いやほんと。

 でもまあ、鍵作る時もその勘でやらかしたし? 俺の勘の株価は大暴落中ですけどね。ちなみに楓の俺に対する評価もね。


「じゃあ、お姉さん。俺は何をすれば良いんですか?」


《簡単な事じゃ、この鎖に触れながらお前の持っている[スキル]のチェインを使う。それだけじゃ。》


 え?そんだけ?


「分かりました、やってみます。」


 俺はHお姉さんの左足に巻き付いている鎖に触り、チェインを使ってみる。

 何気にスキル初めて使うな……。


 チェインを使うと一瞬手のひらから光が溢れ出し、鎖はパンッと弾ける。


《フフ……いいぞ……。その調子じゃ……!》


 ステータスを確認するとMPが3消費されていた。

 どうやら1回の発動で3消費するらしい、Hお姉さんの両手両足4回分使うだけのMPがあったのは幸いだな。

 そう考えながら残りの3本を取り除いていく。

 そうして最後の1本を外し、俺はHお姉さんの全ての鎖を解いた。


《フフ……フフフフ……よくぞ、よくぞこの鎖を解いてくれたの……。これでやっとあやつに復讐が出来……!? なんだ、チカラが……》


 あれ?どしたのHさん?はよ、約束はよ!


《なんだ? チカラが抜け出す!? 儂の力が……!》


 そう言うと、なんとHさんの体が光り輝き、次第にその光は小さくなっていく……。

 そして。


「え、嘘!? なんで儂の体が小さくなってしまったんじゃ!?」


 エッチなお姉さんはいなくなり、代わりに目の前に可愛らしいロリっ子が残った。

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