第十七話
ピピピピッ、ピピピピッ!
「眠い……」
俺はスマホから鳴るアラームを止めると、スマホを確認する。
時刻は朝の7時を回っていた。
今日からまた学校が始まる。
全人類に〈天啓〉が降りてから色々な事が起こり過ぎて、この1週間あっという間だった。
昨日ネェガさんの道具屋から帰ってきた後、結局俺達はダンジョン攻略をせずに、スーパーまで“ロー○ルさわやか”を箱買いしに行った。
田舎なのもあり、自転車で行くには距離もあって中々に疲れた。
家に帰ってきた頃にはもう夕方だったから、楓とはそこで別れて、しっかり体を休めることにした。
「さあて、学校に行く準備をしますか。」
俺はササッと準備を終わらせ、学校へ向かう。
学校に着き、教室に入った頃にはもうクラスの皆は登校していた。
あの地震が起こった翌日、クラスの半分が休みだったのだが、幸いにも怪我人はなく皆元気そうだ。
「おはよー!」
楓が挨拶をしてくる。
俺も楓に軽く挨拶をして自分の席につく。
俺は“ロー○ルさわやか”を箱買いした夜、今の世界の情勢を調べていたのだが、やっぱり世界各地で〈天啓〉を使った犯罪や、治安の悪いところでは人々が暴徒化し暴力、暴行、殺人が横行していた。
日本ではまだ人々が暴徒化したというニュースはないが心配だ。
国は自衛隊と警察で連携し〈天啓〉による犯罪の防止と、塔への規制を始めたらしい。
なんでも強力な〈天啓〉を持つ人を集めて特殊部隊を作るという噂もある。
(何だか物騒な話になってきたよなぁ……)
ただ、まだ塔の中へ入ったと言う話は全世界でも例はないらしく、国のお偉いさん達は対策に頭を抱えている感じらしい。
俺自身はキーメイカーや塔での事を楓以外の人に話すつもりは無いし、面倒事もゴメンだ。
他の誰かが何かしらの〈天啓〉を使って塔に入ったという話が出るまで待とうと思ってる。
そう考えてると、担任の先生が教室に入ってきて朝のホームルームが始まった。
学校では別段、特別な事はなく〈天啓〉の話がもちきりだった以外はいつもと変わらない日常だった。
……いや、体育の授業でバレーをした際に軽くジャンプしただけで体半分がネットを優に超えた。という事件があった事を忘れてた。
この時、ダンジョンでステータスと〈天啓力〉が上がった恩恵はこれ程までに凄いもの何だと痛感した。
ちなみにその光景を見て固まっていたクラスメイト達には「たまたま調子が良かった」という苦しい言い訳をしておいた。
そして放課後、楓と自転車を押しながら家への帰路につく。
「ねえ解、今日の体育の時のジャンプ見てたよ。それ見て私も隠れてジャンプしてみたけどびっくりするくらい飛べたんだよね……」
「ああ、めちゃくちゃびっくりしたよ……軽く飛んだだけであれだもんな。楓は俺より敏捷のステータスがあるからもっと高く飛べるかもしれないな。」
「あれ以上飛べたら人間の領域超えちゃうよ……。あ、そう言えば友達にステータスオープンが使えるかどうか試してもらったけど、なんにも反応しなかったよ。やっぱりあの世界に行かないと開放されないみたいだね。」
「まじか? 本当に俺達はめちゃくちゃアドバンテージのある状態なんだな……。けど強くなって損する事は無いし、これからの世の中は危険な事も増えると思うからしっかり強くなっておこう」
「うん、自分の身を守れる手段は必要だね。解、今日もダンジョン潜る?」
「もちろんそのつもりだよ、楓は大丈夫か?」
「絶対行く! あんなワクワクする事をやらないなんて選択肢は私にないよっ!」
楓はこの秘密の冒険にとても積極的だ、俺としては嬉しいのだが、いつ怪我してもおかしくない事を俺達がやっているのは確かだ。
俺はしっかり楓をフォローしてあげないと……と常日頃思っている。
冒険はするけど冒険はしない、何を言ってるか分からないが俺はそう考えている。
……
…………
……………………
「じゃあ次は“囁く小鬼の鍵”だね?」
「だな。楓、準備はいいか?」
「バッチシだよ!」
楓が自分の家に帰って用意をしてすぐ俺の家に来ると、次に使う鍵を決めた。
今回は“囁く小鬼の鍵”のダンジョンだ。
「多分今回もスライム、ウサギと同じ流れだとは思うけど油断せずにいこう」
俺は楓に注意喚起を行う。
「分かってるよ、油断はしない。解も気を抜いちゃだめだよ。」
「ああ、じゃあ行こうか!」
そう言って俺達はトイレのドアを開ける。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます