第十八話
「……ねえ解、ダンジョンって洞窟がデフォなのかな?」
「うーん、どうなんだろうな。もしかしたら〈天啓力〉の消費を多くした鍵だったら場所も変わるかもしれないな」
俺達はついさっき“囁く小鬼の鍵”を使ってダンジョンに入った。
やっぱり今回もこれまで通り洞窟のダンジョンだった。
おそらくこのダンジョンも一本道の奥にボス部屋があるタイプなのではないかと思う。
俺達は周囲に気を配りながら進む。
「グゲッ……」
!?
「解……」
俺は楓の言葉に頷く。
薄暗い洞窟で視界が悪いが、遠目に何かいる気配がする。
俺はすぐに鑑定を使う。
【ゴブリン】
「ゴブリンがいる……。俺が奇襲をかけるから何かあったらフォローしてくれ」
(うわぁ、戦うの結構抵抗あるなこれ……)
「分かったよ、気をつけてね」
俺は右手に特殊警棒を持ち、左手に地面の砂を掴んだ。
気持ちを落ち着かせた後、勢い良く駆け出す。
走り出した瞬間、向こうもこっちに気づき身構える。
俺は走りながら相手を観察する。
ゴブリンは身長60cmほどで、全身の色が緑っぽい茶色。
右手に棍棒のような物を持っていた。
棍棒に注意しつつ、左手に握っていた砂をゴブリンの顔に投げつける。
「ギャ!」とゴブリンが怯んだ隙に俺は素早く胴体に警棒を叩きつけた。
思い切りヒットして地面に倒れるが、まだ起き上がって来るようだ。
俺は一撃で倒せない事に少しだけびっくりしたが、すぐ頭にもう一撃を加える、するとゴブリンは動かなくなりそのまま洞窟に溶けて消えた。
「一撃で倒す事は出来ないか……」
今までのモンスターとは違ってゴブリンは多少タフな様だった。
あとなんかめちゃくちゃ気持ち的に戦いにくい……。
ただ、洞窟に溶けて消えることによって多少の余裕は持てるけども。
「あれ、ゴブリンて極小の魔石2個落とすのか? モンスター1体に1個って訳じゃないみたいだな。」
俺はゴブリンが極小の魔石を2個落とす事を確認する。
「ほんとだね、てか間近で見るとコブリンってめちゃくちゃ気持ち悪いね……あんまり戦いたくないなぁ。」
「と言っても楓は戦うんだろ?」
楓はもちろん! と頷く。
その後、楓もゴブリンと戦うがゴブリンのお粗末な棍棒の攻撃をヒョイヒョイ避けてヒット&アウェーで余裕で倒す。
「最初はちゃんと戦えるかなって思ったけど、なんか倒したあと溶けるように消えるから思ったより抵抗感ないかも……」
「そうなんだよな、ゲームみたいな感じだからかな? それともこのダンジョンがそうさせてるのか…?」
レベルが上がってるのか〈天啓力〉のおかげなのか、俺達は危なげなく倒せている。
これが初めてのダンジョンだったらまた違っていたのだろうと思うけど、現状は怖いくらい上手く行っている。
別段、焦る必要もないしこれからもこのペースでじっくり行けば良さそうだ。
その後もゴブリンが何体か出てきたが、どんどんゴブリンとの戦闘に慣れていくのが分かる。
楓もそう感じているらしく何だか不思議な気分だ。
そうして俺達はダンジョンの最奥、ボス部屋の扉の前まで辿り着く。
「解、今回は私に任せてもらってもいいかな?…でももし危なくなったら手助けしてくれる?」
楓が真剣な顔をする。
何故か俺は反対出来なかった、それくらい楓の顔から何かしらの決意を感じた。
「分かった、けど無理だけはするなよ。」
楓は「ありがと!」と言って扉に手をかける。
ゴゴゴッ……と扉が空き、中にはゴブリンが3体こちらを見ていた。
「3体……、大丈夫か?」
「やってみる……」
そう言って楓は俺が最初戦ったゴブリンの時と同じく砂を掴んで走り出した。
楓はまず3体並んだゴブリンの左1体に砂を投げつけ目潰しした後、他の2体のゴブリンを警棒で横薙ぎにふっ飛ばす。
そしてすぐ左を向き直し、砂が目に入って騒いでるゴブリンの脳天に思い切り警棒を叩き込み、1体目のゴブリンはそのまま動かなくなる。
目の前に迫る残り2体の攻撃を躱しつつ、1体を仕留めようとした時、捌き切れなくなったもう1体のゴブリンの棍棒の攻撃を脹脛に受けてしまう。
「楓!」
俺は思わず叫び、加勢に入ろうとする。
「大丈…夫!」
楓はすぐ返答し、攻撃をしてきたゴブリンを痛む方の足で無理やり蹴り飛ばし、目の前のゴブリンの顔面に警棒をぶち込み倒す。
そして最後、吹っ飛んだゴブリンの元に駆けていき脳天へ強力な一撃。
終わってみれば、楓は1人でゴブリン3体を相手にし倒してしまったのだ。
「楓っ、足は大丈夫か!?」
俺はすぐ楓に駆け寄りマジックバッグからポーション(下級)を取り出す。
「いてて……流石に無傷じゃ無理だったね。」
そう言って楓は悔しそうな笑顔を見せる。
「今ポーションを使うからな。……てか十分凄かったぞ、びっくりした」
俺は楓のスキニーを脹脛が見える所まで捲りあげ足にポーションを掛けながら、さっきの戦いを思い出す。
本当に凄かった。
ゴブリンにやられた傷は打ち身になりそうな感じで赤く腫れていたが、ポーションを掛け続けているとその赤みはジワジワ無くなっていき、最後にはきれいサッパリ無くなった。
(こんなに綺麗に治るもんなんだな。)
俺はじっと楓の脹脛を観察する。
「ちょ、ちょっと解……ジロジロ見ないでよ……」
楓は赤くなりながらしながら捲っていたスキニーを元に戻す。
「ああ、ごめん。綺麗に治るもんなんだなと思って。」
「ほ、ほら。宝箱! 宝箱の中身確かめよ!」
そう言って楓は宝箱の前まで行く。
勢い良く宝箱を開けるとそこにはオーブ……ではなく、なんと鍵があった。
「あれ、解。今回は鍵だったよ?」
「宝箱からも鍵が出るのか……、どれどれ。」
俺は鑑定を使う。
【始まりの神殿の鍵】
「“始まりの神殿の鍵”って書いてあるな、何だろこれ。」
「始まり……神殿?今度は何があるのかな?」
俺達は【始まりの神殿の鍵】を手に入れた。
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