第十四話

「楓……。ほんとにいいんだな?」


 俺は真剣な顔で楓を見る。


「ちょっと、焦らさないでよ……解。」


 楓はそわそわした様子で答える。

 俺は綺麗なに触れると……。


「どりゃああああああああああああ!!!!」



 勢い良く宝箱を開けた。


……


…………


………………………




 時間は俺達がシエさんの宿屋から帰ってきた頃に戻る。


 次に使う鍵は“静かな宝の鍵“に決定し、二人ともAmaz○nで買った装備を付け、その上からパーカーを着込んでトイレのドアの前にいた。

 俺達は“宝の場所にはそれを守護するモンスターがいると相場が決まってる”と結論付け、しっかり準備したのだ。

 もちろんバックパックも担いで水や食料、ライトなども入れた。


「楓……。もし万が一、宝を守護するモンスターがいて敵わないと思ったらすぐに戻るぞ?」


「解…。もし万が一、スライムのダンジョンの時の様にボスを倒さないと帰れない場所だったらどうする……?」


「………」


「ちょ…ちょっと、解!?」


「それ考えない様にしてたのに……なんで言うのかな楓さん!? フラグになっちゃうじゃん!」


「いやだって、普通に考えるでしょそれ!」


「そうならない事を願うしかないな。多分だけど〈天啓力〉3を消費した鍵では、そこまで太刀打ち出来ない敵は出てこないと考えてる。多分……」


「その説明はかえって不安を煽るだけだと思うよ解……」


 楓はジト目でこちらを見る。


「何があるかわからない以上、確かな事は言えない。危険かもしれないし楓はここに残ってても大丈夫なんだぞ?」


「何でそんな事いうの!? 私も勿論行くよ!」


 珍しく楓が怒る。


「ご、ごめん。じゃあ一緒に行こう。」


「分かればいいのよ、分かれば。」


 フン!と鼻を鳴らして楓が答える。

 そうして“静かな宝の鍵”を持ちドアを開ける。

 

「「失礼しまーす……」」


 俺達は学校で職員室に入る時の様に、ドアの向こう側に入る。


「あれ、前みたいに洞窟じゃないんだね?」


 楓のキョトンとした声が聞こえる。

 俺はフロア全体を見渡してみるも、広さは10㎡程で天井もさほど広くない。

 作りは石を削って作られたような造り。ちょうどピラミッドの石室の様だった。

 そして部屋の真ん中にポツンと宝箱が置かれてる、そんな状態。

 光源も無いのに部屋全体が明るい、一体どういう仕掛けなんだ?


 その次に、俺はハッと退路の事を思い出し、入って来たドアを確認するもドアは消えておらず、そのまま帰ることも出来そうだと分かった。


「もしかして、めちゃくちゃ当たりの鍵だったのか?」


「んー、なんか安全そうだよね?」


 楓がそう答える。


「けど、まだ気を抜いちゃだめだ。俺が宝箱を開けるから楓は何かあった時の為に、ドアを開けて逃げる準備をしといてくれ。」


「分かった……」




 そうして冒頭に戻る。




「どりぁあああああああ!!!!」


 俺は宝箱を開けた瞬間、中身を確認せず思い切り出口へ走る!

 それにびっくりしたのか、楓がアワアワしながらドアを開ける。

 家まで戻り、半分空いているドアから俺達はひょこっと顔を出し、宝箱を確認するもどうやらミミックやいきなり現れる敵の心配は無かった様だ。


「ちょっと解! いきなりこっちに走ってこないでよ! びっくりするじゃない!」


「俺だって怖かったんだよ!」


 予想以上に楓は俺の行動にびっくりしたようだった。

 いやまあ……確かに肝試しの時に他の奴がいきなり走り出したら何があったのか分からない不安でめちゃくちゃビビるあれと同じ原理か…。


「もう……さっさと宝箱の中身確認しようよ……」 


 そう言って楓は宝箱の前に行き、中身を確認する。


「ん……?何この巾着袋……?」


「どれどれ……?」


 俺も楓の所に行き、手に持った巾着袋を鑑定する。



【マジックバッグ(小)】



!?



「え!? これマジックバッグだ!」


 俺は驚愕する。

 よくファンタジー物の小説に出てくる、たくさん収納できて、且つ重くない魔法のバッグ。ドラ○もんの四次元ポケットみたいな夢のようなアイテム。

 それを手に入れられたのだ。


「ええええ! 四次元ポケットみたいなもんでしょそれ!? チートアイテムじゃん!」


 楓も同じ様に驚いている。


「ありがとうございます……。ワダすみたいな者に……こんなに素敵な事がいくつも起きて……いいんでしょうか……」


 俺は感極まって感謝の言葉を口にする。

 

「何言ってるかわかんないけど早く家に戻るよ。」


「あ、はい」



……


…………


………………………



 そうして家に戻り、トイレのドアを閉めると同時に“静かな宝の鍵”がパンッと光の粒になり消えてしまった。

(なるほど、戻ってドアを閉めたら鍵を消費したことになるのか)


 それにしても……。


「いやぁ、マジックバッグが手に入るとは思わなかった! 早速試してみようぜ!」


「ほんとだね! どれだけ入るのかな?」


 その後、マジックバッグの口に物を当てるとシュンッ! と消えていく光景にテンションが上がりながら俺達は色々と試していく。

 そうして……。


・生き物は入らない。

・バッグの中では時間が進まない。(時計を入れて試してみた)

・入る量は大体合計100kgまで。(それ以上は入らなくなる)

・マジックバッグに触ると、その中に入っているアイテムが頭の中に直接浮かぶ。

・頭に浮かんだアイテムを出したいと思えば袋から出てくる。


 大体こんな感じで検証できた。

 まだまだ隠された機能があるのかも知れないが、これ以上は現状分からなかった。


「うーーん、知れば知るほどチートアイテム……幸せ。」


 俺は思わぬ収穫に胸いっぱいだった。


 時刻はもうそろそろ昼の12時。

 朝に装備が届き楓が家に来て、楓と装備を付けたり、鍵を作って宿屋や宝の部屋を探検とこんなに目まぐるしく状況が動いたにも関わらず、まだ三時間程だ。

 楓がご飯を作ってくれると言ったので、お言葉に甘えミートスパを作ってもらう。

 美味しいミートスパを一緒に食べ、俺達は少し休んだ後、残りの鍵を使ってダンジョン探索をすると決めた。



 ちなみに残ったミートスパはお皿にラップをしてそのまま、マジックバッグに入れた。

 いつでも楓の出来たて料理が食べれる事が、何気にこの世界になって一番の嬉しい出来事だった。

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