第十三話

「フフ……フフフッ……あっはっはっはっは!」


 俺の家に楓の豪快な笑い声が響く。

 そう、俺のトイレがネェガさんの道具屋に繋がった日から2日後、Amaz○nで注文した装備が俺の家に届いた。

 早速付けてみたのだが、これがまた俺に似合わないのなんので楓が大笑いしてるのだ。


「ふざけやがってぇ……地球の女ぁ……!」


 俺は2日間で煮詰めたベジ○タのモノマネをここぞとばかりに使った。


「……? 何それ? 何かのネタ?」


 楓は感情を失ったように真顔で答える。

 おいやめてくれ、その返しは俺に効く。


「でも楓、これをお前も着るんだぞ?」


 俺はここが好機とばかりに反撃する。

 しかし……


「そうなる事を見越して……じゃーーーん!」


 楓は大きめのパーカーを荷物から出した。

 よく見ると、世界がこんなになる前に楓と買ったユニク○のポケ○ンパーカーだった。


「これを着れば防刃ベスト目立たないし良いかなって思って持ってきた!」


(おお、なるほどその手があったか!)

 俺も2階の部屋へ駆け出し、ポケ○ンパーカーを取ってきた。


「はっはっは!そのアイデア頂くぞ楓!」


「くっ…そんな人の真似ばかりしてるといつまでたっても私を超えられないよ、



 !?



(こ、こいつ分かってて俺渾身のモノマネをスルーしやがったのか……?もうだめだぁ……おしまいだぁ……)


 俺はシュン……となり自分のポケ○ンパーカーを撫でる。

 お前は俺の味方だよな……?

 すると楓が俺のパーカーを確認するや、びっくりした顔になり、


「え? ちょっと、解もポケ○ンパーカー着てくの!?」


「ん、だめか? 着る機会無かったし、楓もそれ着るみたいだしな!」


「ま、まあ……別に良いけど……」


 楓が何故か少し狼狽えている。


「おいおいおい楓さん、町中で同じデザインの服を来てる赤の他人を見つけたら気まずくなるタイプか? 気にすんな気にすんな!」


「いや、そういう訳じゃ……てか町中で赤の他人と服かぶったらめちゃくちゃ気まずいでしょ!」


 そんなやり取りをしつつ、装備を外し一休みする。


……


……………


………………………



「さて、そろそろ鍵を作りますか!」


「よっ! 待ってました!」


 楓がやけにおっさん臭く盛り上げる。

 

「とりあえず〈天啓力〉を3消費して5個くらい作ろうと思うけど、楓はどう思う?」


「うーん、〈天啓力〉15くらいならモンスター倒して増やせばいいと思うし……それでいいと思う!」


「分かった、ではでは作ります!」


 俺はキーメイカーを起動し〈天啓力〉を3消費して5個鍵を作製するように伝える。


 すると……



『〈天啓力〉を3消費し、鍵を5個作製。…………か弱いウサギの鍵、静かな宝の鍵、密かな森の鍵、小さな宿屋の鍵(∞)、囁く小鬼の鍵を作製しました』


「おお、たくさん出てきたぞ!」


 鍵が手のひらからポロポロ出てくる。

 何が何の鍵か分からなくなったので鑑定を使いながら分ける。

 やっぱ名前を知れるだけでも便利だな。


・か弱いウサギの鍵

・囁く小鬼の鍵

・密かな森の鍵

・小さな宿屋の鍵(∞)

・静かな宝の鍵


 こうして並べてみて分かったけど、鍵によって違う色の光を発している事が分かった。


 上3つは赤みがかった光、小さな宿屋の鍵は緑に近い光、静かな宝の鍵は薄い金色? みたいな色だった。


「色々出たねー! てか静かな宝の鍵がめちゃくちゃ気になる!」


 楓は目をキラキラさせながら言う。


「そうだな、でも小さな宿屋の鍵も何か気になるぞ。」


「これって小さな道具屋の鍵と同じシリーズなのかな?」


「多分そうなんだとは思うけど……」


 俺は小さな道具屋の鍵を出す。

 比べてみたらやっぱり2つの鍵は緑色に近い光を発している。


「けど、私達宿屋なんて使うかな? 自分の家で寝れば良くない?」


「そうなんだよな、いまいち必要性を感じないな。ただまあ安全だとは思うから、この鍵から試してみないか?」


 俺は楓に提案する。

 楓は「そうだね!」と言い賛成してくれたので小さな宿屋の鍵から使う事にした。


 そうと決まれば話が早い、俺達はすぐ様トイレの前に行き鍵を持ちドアに手をかける。

 すると鍵が一段強く光る。


 ドアを開けると、そこにはネェガさんの道具屋の様な小さくて豪華ではないけど、木で作られた温かみのある作りのロビーがあった。


「こんにちは、いらっしゃいませ。」


 カウンターの向こう側にいた身長180cmほどあるひょろっとした青年がこちらに挨拶をしてくる。


「こんにちは、ここは宿屋で合ってますか?」


 俺はお店の人に尋ねる。


「ええ、そうです。ここは私“シエ”が経営する宿屋でございます。一晩200ディルですが、どうなさいますか?」


 200ディル……日本円で2000円くらいか。

 普通に安いとは思うけど泊まる必要がないし、何より俺達はまだディルを持ってないから完全に冷やかしになっている。


「分かりました、とりあえず仲間と相談して決めます。」


「そうですか、お休みの際は是非、当宿屋で……」


 そう言い、宿の主人のシエさんは丁寧に一礼する。


 俺達は宿屋の扉を開け、家に戻る。

 

「ファンタジー映画に出てきそうな、めちゃくちゃいい感じの宿屋だったね。宿の主人も丁寧だったし!」


 楓はとても満足そうに言う。


「そうだな、ディルに余裕が出来たら行ってみようか。」


 楓が嬉しそうに頷く。

 そして次の瞬間、楓がとても重要な発言をする。


「てか、宿屋にいる時に思ったんだけど……私達がスライムのダンジョンから帰ってきた時、塔の1時間は外の世界の10分くらいって言ってたよね? と言う事はあの宿屋で12時間滞在してもこっちじゃ2時間程しか経ってないことになるんじゃ……」




!?



「おいおい! それめちゃくちゃ凄くないか!? そうだよ、あの宿屋を利用すれば2時間でしっかり休息が取れる様になる!」


 なんだそれ、チートすぎるだろ……。

 時間の進みが緩やかな精神と○の部屋じゃん……。

 絶対にあの宿屋は利用するべきだ。





俺達は顔を見合わせて自然とハイタッチをした。

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