第十一話

「解、どんな鍵が出てきた?」


 楓はワクワクしながら聞いてくる。


「それがなんかダンジョンっぽくないんだよな、小さな道具屋の鍵だってさ。しかも名前に無限? のマークもついてる。」


「え、道具屋がダンジョン…て事があるのかな? 無限のマークはずっと使えるって考えればいいのかなぁ……。早く使ってみたいね!」


「そうだな、試してみないことには分からないしな」


 おっと、さっき飲んだ福井限定の飲み物“ロー○ルさわやか”で尿意を催してしまったようだ。


「ちょっとトイレ行ってくるわ」


 そう言うと俺はリビングを出てトイレのドアに手をかける。

 すると……なんといきなり鍵が強く光りはじめたのだ。


「なんでここで鍵が光るんだ?」


 そう思いながら俺は尿意の限界が近い事を感じつつ、トイレのドアを開ける。


 しかし、トイレがあるはずだったそこには……所狭しと色々な商品が置かれている、こじんまりとした店になっていたのだ。


「あっ……すみません、間違えました」


 俺はその奥にいる体の大きなお店の人らしき人と目が合い、軽く会釈をしてドアを閉める。






「楓さあああああああああああん!!!!!!」







「ちょっとなになに、どうしたの!?」


 楓はびっくりした様子で急いでこちらにやってくる。


「トイレにお店が……トイレがお店に……鍵か? また鍵が悪さしてるんか……?」


 俺はうわ言のように呟く。


「トイレにお店? 何言ってんの? …………何もないじゃない」


 楓はドアを開けて確認するもそこにはいつもと同じトイレがあった。


「おかしい。絶対おかしい。」


「おかしいのは解でしょ、早くトイレしなよ」


 楓はそう言うと、リビングに戻っていく。

 俺はもう一度ドアに手をかけ、そっと開けてみる。


「おう、また来たのか。いらっしゃい」


「あ、何度もすみません。……楓さああああああああん!!!!」


「ちょっと、解! 何度も何度も同じボケが通用すると思ったら大間違いって、ええええええええ!!!」


 楓が俺と同じように驚いている。そしてお店の人と目が合い会釈してる。

 ほら、普通にびっくりするだろ!


「なんで!? 塔以外でも鍵って使えるの!?」


 楓が驚きながら聞いてくる。


「いや、前は鍵を持ちながらドアを触らなかったから試してなかった……。はは、塔じゃなくても使えるみたいだな……」


「おいおい、入り口で突っ立ってないでとりあえず入れよ」


 お店の人がそう俺達に話しかけてくる。


「あ、すみません……」


 俺達はビクビクしながら店に入る。

 店の作りは温かみのある木で作られており、小さいカウンターを挟んで奥にお店の人が座っていた。


「お前らはこの店初めてだよな? 珍しい格好をしているが遠くから来たのか?」


「福井……というか日本ってところからなんですけど……ここって何処なんですか?」


 俺は何となく感づいていたが、その気持ち押し殺して聞いてみた。


「ん、フクイ? ニホン? そんな国あったか? どうやらかなり遠くから来たんだな」


 やっぱりここは地球じゃないのか……?

 そう考えているとお店の人は話を続ける。


「ここはルリという国で、俺の名前はネェガ。この店は見ての通り道具屋だ。まだまだ小さい店だが俺は自分の店をこの国一のでっかい店にしたいんだ!」


 この国はルリというのか……んで、ここはネェガさんの道具屋。


「ねえ解、見た事ない商品がたくさんあるよ!」


 ネェガさんの話そっちのけで楓は商品を見ている。

 確かに見た事のない物ばかりだな。

 俺は瓶に入った液体を手に取る。


「何だお前、ポーションも知らないのか?」


 ネェガさんが目を丸くして聞いてくる。


「これがあのよくゲームで耳にするポーション!?」


 俺と楓は顔を見合わせる。

 すぐに鑑定を使い商品を見ると…


【ポーション(下級)】


 鑑定でそう告げられる。


「へぇ、これがポーションか……これってどれくらい効果があるんですか?」


 俺は気になってネェガさんに聞いてみた。


「そのポーションは下級だから、かすり傷や切り傷、軽い火傷に効果があるくらいだな。値段は100ディルだ、買ってくか?」


 100ディル?

 ディルと言うのがこの国のお金の単位なのか?

 

「えーっと……ちなみにこのパンはどのくらいするんですか?」


 俺は目に入った黒く硬そうなパンを指差す。


「ああ、これは10ディルだな。」


 なるほど、このパン1つ100円と考えて、大まかに1ディル=10円くらいって考えればいいのかな?

 と言う事はポーション(下級)1つで1000円?

 うーん、指標となるものがないからなんとも言えないな……。

 ただここに売っているものは是非ともダンジョンで使いたい。

 俺はどうにか手に入れられないか考える。


「あの……俺達ディルを持ってないんですが、円は使えないですか?」


 無理だと思うが一応聞いてみる。


「円……? お前らの国の金の単位か? すまんがこの国の金じゃねーと売れねぇな」


 やっぱりそうだよな。


「手っ取り早くお金を稼ぐ方法ってありますか?」


 横で商品を見ていた楓がネェガさんに尋ねる。


「そりゃ、モンスターを倒して出る魔石を売ればディルに交換してやれるけど……お前ら魔石持ってるか?」


「「え!? モンスターを倒すと魔石って落ちるんですか!?」」


 俺達は声を揃えて驚く。


「あ、ああ……と言うか常識だろ、今までどうやって生きてきたんだお前ら……」


 俺達のテンションに若干引きつつもネェガさんは答える。


「ねえ解、もしかして前に倒したスライムも魔石落としてたのかな?」


「分からん、全然意識してなかったからな……」


 くそぉ、ちゃんと見ておけばよかった……。

 そう悔しがってると、ふと壁にかかってる剣に目が行く。


「ネェガさん、この剣はどれくらいするんですか?」


「ああ、この剣は1000ディルだ。ただ筋力値が20無いと重くて扱えねぇぞ。」


 き、筋力値……?


「あの……筋力値って何ですか?」


「おいおい、ステータスを見ればそんな事すぐ分かるだろ……」


 ネェガさんは呆れたように話す。

 ちょっと待って、なんだステータスって?

 〈天啓紙〉の事か?


「えっと、これの事ですか?」


 俺は〈天啓紙〉を出してネェガさんに見せる。


「何だそれ、初めて見るな。それじゃなくて普通にステータスオープンて言や出てくるやつだよ。」


 初耳ですねぇ……。


「ステータスオープン! ……あっ、出た出た! ほら解、ステータス出たよー!」


 さっそく楓が試している。

 俺も楓に続きステータスオープンと言ってみる。


 普通に出たわ。

 俺は自分のステータスを確認する。



【名前】南條解

[レベル]4

[職業]なし

【天啓】キーメイカー☆0、鑑定(初級)☆2

【天啓力】245

[HP]34

[MP]8

[筋力]19

[敏捷]18

[魔力]8

[運]60


 まず1つ言いたい、情報過多だろこれ!

 てかなんか〈天啓紙〉の内容がステータスに混ざってる感じになってるし!

 和洋折衷かなぁ!?


 あかん、1回家に帰って作戦を練ろう……と楓の方を向くと楓もどうやら同じ気持ちだったようだ。

 俺達はネェガさんにまた来ます……。とだけ伝え道具屋を出て家に戻ってきた。

 

 なにがなんやら、といった感じで楓が俺を見てくる。


 俺は真剣な表情で楓にこう告げる。





「とりあえず、マジでおしっこ漏れそう。」

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