第4話
俺は周りをよく見渡してみる。
洞窟は縦横3m程で薄暗く、ジメジメしていた。
「俺達塔の中に入った筈なのになんで洞窟みたいな所にいるんだ? おかしくないか?」
「それを私に聞かれてましても……〈天啓〉っていう想像もつかない様なもの貰った時点で大概おかしいから、こういうものって思うしかないんじゃないかな?」
楓は洞窟の壁を触りながら答える。
確かに〈天啓〉を貰った時点で世の中の常識がひっくり返る程の出来事だし今更ではあるか……
「そうだな、とりあえず状況を整理しよう……俺が塔に触ったら頭の中であの声が聞こえて目の前が真っ白になり一瞬でこの洞窟に移動させられた。楓も同じか?」
「うん、おんなじだよ。なんとかのスライムの鍵とか言ってたけど、あれどういう意味なの?」
「ああ、儚きスライムの鍵。多分鍵の名前だ。鍵が作られた時アナウンスされたんだ」
「ふーん、儚いなんてなんか弱っちそうな鍵だね」
楓は笑いながら先へ進もうとする。
「ちょ楓、どこ行くんだ!?」
「どこって……ここにいても外に出られないじゃん。ほら行くよ解〜。」
すげぇ、行動力の化身かこの人は……俺も見習いたいぜ……。
「待て楓、とりあえずライトを出すから」
そう言って俺は担いでいたバックパックから二本のライトを取り出す。
準備しといて良かったあああ!
「まさかほんとに役に立つなんて思わなかったよ、流石だね!」
「ああ、使う場面なんてない方がよかったけど……よし、先へ進もうか」
俺達は出口を探して洞窟を進む。
5分ほど歩いた頃だろうか、目の前に何かを見つける。
「解、あそこに
「ああ、それでいて
多分スライムだ。
3m程まで近づいて良く見てみるとほんのり青色が入っていた。
ほんとにスライムが出てくるんだな……。
「ねえ解……、ちょっとあのスライムみたいなもの蹴っ飛ばしてみてよ……」
「!? いきなり物騒ですね楓さん!?」
「だって〜、攻撃してくるかもしれないし怖いし」
楓の過激な発言にびっくりする。
けど、確かに攻撃されると怖いし先手をかけて倒しておいたほうが良いかもな……。
俺はスライムっぽいものを思いっきり蹴っ飛ばしてみた。
スライムは「ピキュ!」と鳴き声らしきものを出して壁にぶつかった。
「ちょっと可哀想だな……」
「私もちょっと思った……だけどモンスターだったら危ないし……」
そう話していると、なんとスライムは溶け出し消えてしまった。
「!」
「スライム溶けちゃったね……」
罪悪感を感じながら手を合わせていると、楓がびっくりしたように俺に伝えてきた。
「ちょっと! なんか解の体光ってるよ!」
「え!? なにそれこわい! てかおい、楓も光ってるぞ!」
「ええー!」
二人はあたふたしながら自分の体を見る。
某Y○uTuberの様に俺達にも光り輝く能力が備わってしまったのか!? なんか複雑だな!
そう考えを巡らせていると次第に体を包む光は消え何事も無かったかのように元に戻る。
「いったい何だったんだ…………あっ」
俺はもしかして……と思い〈天啓紙〉を出し自分の能力を確認する。
すると……。
【名前】南條解
【天啓】キーメイカー☆0
【天啓力】11
「あーー! やっぱり〈天啓力〉が上がってる!」
「え、うそ! 私も見てみる!」
楓も〈天啓紙〉を出して確認する。
「私も上がってる! 〈天啓力〉が2増えてる! ほら!」
楓は自分の〈天啓紙〉をこちらに見せてくる。
【名前】佐藤楓
【天啓】治癒師☆4
【天啓力】862
(えっ……☆4? てか天啓力たかっ! なんだこの格差は!?)
「か、楓もか……やっぱりスライムを倒せば少しづつだけど〈天啓力〉は上がってくのかもしれないな!」
複雑な気持ちを抑えつつ俺は自分の考えを伝える。
「凄いね! 本当ゲームみたいでなんだかワクワクしてきた!」
「ああ、そうだな!」
俺もここで頑張れば〈天啓力〉を増やして、もう小バカにされる事もなくなるかもしれない、よぉし!
「弱かった昨日のアタシにさよなら! こんにちは新しい強いアタシっ……!」
自己啓発本に感化されたOLかと楓にツッコミを貰いつつ、俺達はさらに洞窟の奥へと進んだ。
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