第3話

「あ……ありのまま今起こった事を話すぜ! 俺はキーメイカーを使い〈天啓力〉を消費したら、いつの間にか鍵が現れていた。な……何を言っているかわからねーと思うが俺も何が起こったのか分からなかった……」


 兎にも角にも俺の〈天啓〉も一応は使用できる、という事か。

 あ、そういえば。〈天啓力〉を消費したって言ってたな……。

 俺は〈天啓紙〉を確認してみる。


【名前】南條解

【天啓】キーメイカー☆0

【天啓力】9


 ああ……元々少ない〈天啓力〉がさらに少なく……



(それにしても、この鍵どうしよう……)



 鍵の作り的にはよく王道RPGに出てくる様なあの形状の鍵だけど、肝心の差し込む所が分からない。もしかしたら塔に入る為に使うのかも……という憶測はできたが、一人で考えても埒が明かないので楓にラ○ンで『キーメイカーを使ったら鍵が出てきた』と送ると、すぐ様ラ○ン通話が掛かってくる。


『ちょっと、鍵が出てきたってどういう事よ!』


 俺は起こった事を説明する。

 楓は興奮した様に相槌をうつ。


『やっぱりその鍵、塔と関係があるんじゃない!?』


「やっぱりそう思う? 俺もそう思ったんだけど…………今って塔どうなってる?」


『周りにキープアウトのテープがされてて警察の人が常にいるって友達言ってたよ』


(うーん、やっぱり一般人には触れられないようになってるよね。けどこの鍵めちゃくちゃ気になるんだよなぁ……)


『……ねえ、今夜バレないようにこっそり塔に近づいて鍵を使えるか試してみない?』


 俺が鍵の事を考えていると、楓から攻めた提案が出される。


「色々と危なくないか? 警察の厄介になったら面倒くさいぞ……」


『大丈夫大丈夫バレなきゃいいって! 今日夜ご飯作りに行ってあげるしご飯食べたらこっそり塔に行ってみよ!』


「うっ………うーん……わかったよ、無理だと思ったらすぐ引き返すからな?」


 断じて楓の手料理が食べたかったわけじゃないんだからねっ!

 この鍵を使ってみたかっただけなんだからねっ!


『おっけー! そしたら夕方頃そっちに食材持ってお邪魔するし、解の食べたいものラインで書いといてねー』


「ありがとう、食べたいもの考えとくよ。んじゃね。」


 そう言って通話を終了する。

 もしかしたらまだ誰も足を踏み入れた事のない塔に入れるかもしれない、というワクワク感を覚えながら俺は夜ご飯に食べたいものを考える。『ソースカツ丼が食べたい! 我はソースカツ丼を所望する!』そうラ○ンを送るとしばらくしたら『仰せのままに』と返ってきた。


(うーーーーん、夜ご飯が楽しみだ!)


……


……………


…………………………


 楓が、家に来るまで俺は地震で散らかった所を片付けたり、物置にしまってあった古いテレビを思い出し引っ張り出して繋げたりと結構頑張った。

 そして夕方になり楓が家にやってきた。

 入ってくるなり「鍵を見せて!」と言ってきたので渡すと興味津々といった感じで鍵を見ている。

 確かにこの鍵、仄かに光ってて綺麗なんだよな。


 その後ソースカツ丼を作ってもらい二人で食べる。

 ちなみに味はめちゃくちゃ美味かった。

 薄いカツに甘辛いソースを浸して丼にして食べる! これがうめぇーんだ!

 てか毎回思うけどなんで楓ってこんな料理うまいんだ?


「じゃあ片付けも終わったし、そろそろ塔に行こっか?」


 二人で片付けを終えると、楓がそう切り出してきた。

 いよいよか…なんか緊張してきた。

 何かあったとき用にバックパック(45L)の中に水やらカロリーメ○トやらライトやら用意し担いだ。

 楓からは用意良すぎと笑われたが何かあった後じゃどうしようもない、備えあれば憂いなしである。

 俺の家から塔のある東尋坊の雄島までは自転車で15分程の距離だ。

 俺達はワクワクしながら塔に向かう。


……


……………


………………………


 雄島の近くに自転車を停め、徒歩で赤い橋を渡り島に入る。


 スマホを確認すると時刻は20時を超えたところだった。


「やっぱり夜は雰囲気でるね……」


 楓が少し怯えたように話す。


「確かに一人で夜の雄島行けって言われたら無理って思うな……」


「ほんとだよね……あ、解。警察の人がいるよ」


 小声で楓は指を差す、その方向に目を向けるとキープアウトテープ前で会話をしている二人の警察官がいた。


「よし……テープから塔の間は結構間隔があるな。バレないように裏から回り込もう」


「おっけー」


 そう言うと俺達はバレないようにゆっくりと塔の裏手にまわる。

 ここまで来るのに自転車置き場から15分程で、スマホの時刻は20時15分を示していた。


「そういえばテレビでも言ったけど、このいきなり現れた塔ってどこにも入り口がないらしいんだよね」


「そうだな、俺も調べて分かったがどうやら扉がないらしい。ただどこかに鍵穴さえあれば、この鍵が使えるか試せるし鍵穴を探そう」


 俺はそう言って軽く塔に触れると、


『パーティー2名が儚きスライムの鍵を使用し、ダンジョンに入ります』



!?



「解? この声って……」

「え、楓にも聞こえたn」


 次の瞬間、目の前が真っ白になる。

 何秒か経ち、眩しさが収まり目を開けるとそこは洞窟の様な場所だった。


「…ハッ、楓!?」

 

 俺は楓が無事か確認する。


「びっくりしたねー」


 楓があっけらかんとした感じで答える。

 良かった……怪我とかは無いようだ。

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