第21話 ヒデの決断
席に着き二人に雰囲気を味わってもらう為に、普段は頼まないエールを3人分頼んだ。
二人は酒場をきょろきょろ見回している。
「大盛況だな。いかにも冒険者ってのがいっぱいいるな」
「ここは冒険者の憩いの場だからな。ギルドから依頼を受けて、情報収集する奴や、依頼が終わって即飲みに来る奴もいるな。ここで野良パーティーを組んだりする事もある」
「シュウもよく来るの?」
「例にも漏れず…楽しみといったらこれくらいだったしな…お!来たぞ」
ウェイトレスの女性が木製のジョッキを3つ持ち、こちらに近づいてきた。
「お待ちどうさま!エール3つと、これは店長からサービス!」
エールと共に大皿に緑色の豆が山盛りの皿を置いた
「お!グリーンビーンか!ありがとう!」
「グリーンビーン?」
「ああ、枝豆だよ」
「この世界にも枝豆があるんだね…つまみにピッタリだ。ありがとうございます!」
「いえいえ!シュウさんにはお世話になってるからね!」
「ありがとう。店長によろしく伝えといてくれ」
「はいはい!何かあれば呼んでね!」
ウェイトレスは忙しそうに立ち去っていった。
ヒデはニコニコしながら木製のジョッキを見つめている
「いや〜!このジョッキ雰囲気最高だね!テンション上がるわ!シュウ!乾杯の挨拶を!」
「それじゃあ…今日はお疲れ様!乾杯〜!」
「異世界に!」
「「異世界に!」」
オレらはエールを一気に流し込んだ
「くぅ〜!…薄い!!!」
「本当だね…美味しいけど…日本のビールの方が美味いわ」
「まったくだ。だんだん慣れてくるけどさ…日本のビールの味を知ってるから、この3年間辛かったぜ…」
「他の酒はどうなんだ?」
「ワインはめちゃくちゃ美味い!オレはほとんどワインだったな。それと食べ物も美味いものはあるんだが…ほとんど塩味だな」
「異世界によくある甘味系が弱い感じか?」
「そう!砂糖は貴重品だからな」
「このグリーンビーンは美味いね!エールが薄いから塩味が効いてると何杯でもいけそう」
「手持ちもあるし、今日はいっぱい飲めるな!」
「二人は全部初体験の物ばかりだからな!何でも頼んで!」
その後はエールにワイン、食べ物をしこたま頼み、夜が深まっていった。
オレは超回復のスキルのおかげで、直ぐに酔いが覚めてしまうが、二人の楽しそうな笑顔を見ながら、心地良い時間が流れている
ヒデはと言うと、いい感じに酔っ払っていて、段々と声が大きくなっていった。
「シュウ!!!俺は決めたぞ!!!」
ヒデの大声で辺りが静まり返る
「な、なんだよ?」
「俺は決めた!俺は夢を叶える!!!」
「お、おう」
マナブが笑みを浮かべ話しかけてきた
「シュウ。懐かしいだろ?いつものあれだよ」
俺は頭を掻きながら答えた
「そう言えば日本で飲んだ時はいつもこうだったな…」
ヒデの声が更に大きくなる。周りの連中は大注目だ。
「俺はもっと強くなって…この世界で勇者になる!!!!」
「…」
「そして魔王を倒す!!!!」
あちゃ〜…俺はテーブルに身体を伏せた。
あいつの性格をよく知っているので、出来るだけ隠しておきたかったのだが…
ヒデに話をしようとしたその時、周囲の連中が皆大笑いを始めた
「わははははは!!!!」
マナブは何事かと周りを見回す。
ヒデはと言うと、少しムッとした表情で
「ん?何か問題でもある〜?」
「わははは!お前さん本気か?」
隣のテーブルのごつい兄ちゃんがヒデに話しかけた。
「もちろんだとも!勇者になってこの世界を救うんだ!」
ああ…頭が痛くなってきた…
「そうか!良い心意気だな!勇者の前で啖呵を切るなんて大したもんだ!」
「あはは!本当ね!お兄さん頑張って!」
ヒデは頭がハテナになっている…
「勇者の前!?勇者はもういるの?」
「ははは!本気か?さっきから目の前にいるじゃねえか!」
ヒデはゆっくりと辺りを見渡した。
目線が合うと、オレは引き攣った顔をしながら小さく手を振ったのだった…
「は、はろぉ〜」
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