第14話 稀人は異常
「見ていて全く飽きない景色だな…」
「本当だね。地球上どこ行ってもこんな景色見られないよ…」
マナブとヒデはフィリーミに転移してから、小一時間外の景色を楽しんでいた。
オレはと言うと、魔王討伐遠征の為に持ち込んでいた所持品の整理と保管をする為に、日本の自宅への転移を繰り返していた。
整理が一通り済んだオレは二人を呼んだ。
「よし…おーい!お待たせー!」
「整理終わったの?」
「おう、待たせちゃってすまんな。全部家に運び終わったよ」
「随分と早かったな」
「転移スキルのおかげで全く苦労しなかったよ」
「それで…この後はどうする?」
「そうだな…街の中を観光するか、それとも…」
オレはニヤリと笑った
「それとも?」
「早速狩って見る?…魔物」
『!!! ま、魔物!?』
二人は予想通りの反応をしてくれた。特にマナブは
「お、おい…この世界には魔物がいるのか?俺らが良く知ってるあの魔物?」
「おうよ。お馴染みスライムとかゴブリンとかはわんさか…ドラ●エみたいな可愛い形ではないけど」
マナブの顔がキラキラと輝き始めた…気がする。
「スライム!ゴブリン!行こう!今すぐに!早く!」
大興奮のマナブを隣にいるヒデはと言うと…
「えー!観光にしようよ!魔物なんて怖いよ!」
「何言ってんの勇者君!異世界に来て魔物がいるとなったらバトルだろ!それによく考えてみるんだ…
「確かに…でもここはゲームの世界じゃなくて現実なんだよ?下手したらすぐに殺されるかもしれない…
「あのってなんだよ!?あのって!…でもヒデの言ってる事は正しいよ。攻撃されたら痛みもある…調子乗って死ぬ可能性もあるな…」
「……」
マナブは冷静になり考え込んでしまう…
「ただし!それはオレがいない場合!冒険ギルドSランクのオレと一緒にいれば死ぬ確率は0%だな!」
「冒険ギルド…」
「Sランク?」
二人は目を細め、品定めする様にオレを見つめている。
絶対に信用していないなコレ…
「それに現実かって言うとそうとも言えない現象もあるんだよ…二人とも心の中で『メニュー』って念じてみてくれない?」
「メニュー?」
「そう。やってみて」
二人は口を閉じ、体の動きを止めて集中していた
「うお!!!」
「ナニコレ!?何か出てきた!」
「おお!やっぱり!二人にもメニュー機能が付与されたみたいだな。目の前に浮き出てるメニューをタッチすれば操作できるよ」
「これって…まんまゲームのメニューじゃん!」
「そうなんだよ。だから現実なんだけどゲームみたいな…ここは不思議な世界なんだよ。でもさ…ラノベみたいでいいだろ?」
「最高だよ!The異世界って感じだね!」
二人ともニヤつきながら何もない空間を何回も叩いている。メニューを色々と確認している様だ。
「さてと…では君達のステータスを見せてもらうよ」
「シュウには俺達のメニューが見えてるの?」
「いや、見えてないよ。自分のメニューから鑑定ってスキルを使って見させてもらう」
鑑定のスキルを使い、二人のステータスを確認した。
「やっぱり…すごいな…」
「俺達のステータスはどうなんだ?」
「異常だな…」
「…高いのか低いのか?」
「HPで言うとマナブは31だろ?んでヒデは35だよな?」
「うん。そう出てる。レベルは1だね」
「この世界のレベル1の平均HPは…3だ」
「10倍かよ…」
「うん。俺も転移した時から異常な数値だったらしい…おそらく稀人は総じてステータスが高いんだろうな」
「稀人?」
「ああ、この世界ではオレらみたいな別の世界から転移してきた人の事を稀人って呼んでいるんだ」
「俺達以外にも稀人はいるのか?」
「いや、今は俺達だけだ…と思う。大昔にはいたらしいけどね」
「なるほど…じゃあこの世界で俺達はチートキャラな訳だ…ところでシュウのステータスは…」
「オレは…レベル85。HPは507」
「85!?」
「そう!だからオレがいれば死ぬ確率は0%なの」
「たった3年でそこまで上がるものなのか?…すごいな」
「確かにレベルアップの速さも異常だったな…」
「じゃあ俺達もそうなのかもな…」
「おそらくはね!…さて少しは安心してくれたかい?ヒデ」
ヒデは少し安心したようで、先程までの心配した顔ではなくなっていた。
「まだ完全には信じられないけど、シュウの後ろにいれば安全かな…行くかい?」
マナブは満面の笑みを浮かべ頷いた。
「よし!じゃあ二人にはと…」
オレは部屋の隅に置いてある木箱から、短剣と盾を取り出した。
「ほれ!オレのお古で悪いけど…」
二人に渡すと、目をキラキラさせて喜んだ。
「すげえ!本物だ!」
「結構ずっしりくるね…」
「部屋の中では振り回すなよ?あと防具は今回は無くてもいいかな…サイズも合わないしな。」
「大丈夫なのか?」
「二人のステータスなら問題ないよ。じゃあテレポートするから…手を…」
「いやあ〜ドキドキするなぁ」
二人は先程とは違い、素直に手を差し出すのだった…
「やっぱりおっさん3人で手をつなぐのはキモいな…」
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