第15話 スライムがあらわれた!

「着いたよ。目を開けて」


「森の中?」


「うん。ここはオレが初めて転移した場所だ」


マナブは辺りを見渡しながら呟いた


「気味が悪いな…」


昼なのに薄暗く、どんよりとした空気が漂っている


「起きたらここにいた時は、マジで怖かったよ…」


「何も持たずにここに飛ばされたら確かに怖いな…」


ヒデがオレの方に振り向き聞いてきた


「魔物とはどうやって戦ったの?」


「はじめは…そこらへんに落ちてる木の棒でやっつけてたな…あとは遠くから石投げたり」


「そんなので倒せちゃうんだね。安心したよ…」


ヒデは短剣を見つめながらそう呟いた


「稀人じゃなかったら死んでたかもな。まぁその装備があれば問題ないよ」


そう言うとオレは歩き出した。


「この先にもっと開けた場所があるから、そこで魔物を倒そう」


「楽しみだ!」


マナブを先頭に真ん中にヒデ。1番後ろはオレと言う隊形で歩き出した。


心なしかマナブの足取りが早い。楽しみでしょうがないんだな…オレは微笑ましい表情で見つめていた


しばらく歩いていると…


「あちち!!痛っ!」


ヒデは腕を押させて突然悲鳴をあげた。


「どうした!?」


先に進んでいたマナブが心配して戻ってきた


「何かが飛んできて…痛!」


「うはは。早速おみまいされたな!ほら!あれ」


オレが脇道を指を指すと、そこには小さな子供位の大きさのアメーバ状の緑の物体がウネウネと動いていた!


『スライム!!!』


二人は声を揃え叫んだ。とても嬉しそうだ


「あんまり痛くなかっただろ?」


ヒデに聞くと、苦笑いをしながら


「ああ、びっくりしたけどね。熱いやかんを触って火傷した感覚だよ。それにモデルガンで撃たれたみたいな…」


オレは笑みを浮かべた


「あれはスライムが飛ばした酸だな。素晴らしいリアクション芸だったよw」


「芸じゃないから!想像よりデカイな…」


「おい!それよりもどうする!?殺るか?」


血気盛んなマナブは剣を構え今にも飛び出しそうだ。

少し意地悪したくなるな…


「ヒデにやらせてあげなよ。攻撃されたんだから仕返ししないと!」


「おう!マナブ俺にやらせて!これ位の痛さなら全く怖くないわ…奴は俺が絶つ!」


「ぐぬぬ…」


マナブは感情を抑えて一歩下がってオレの横に立ち並び、羨ましそうに見つめている。


「痛っ!また飛ばしてきた!シュウどうすればいい?」


ヒデについた酸はジュ!と言う音とともに煙を上げてすぐに蒸発していく。


ヒデは攻撃を受ける度に飛び上がり、奇妙なダンスをしているみたいだ。


「うはは!リアクションが面白いな…」


オレが笑うと、獲物を盗られたマナブが悪ノリに乗ってきた


「うむ…もう少し見ていよう…」


「おい!痛!二人ともやめろ!イタタ!早く教えて!」


もっと見ていたいのだが、流石に可愛そうなので


「スライムの胴体の真ん中に赤い塊があるだろ?そこが弱点だから切ったら倒せるよ!」


「あれだね?わかった!」


ヒデはスライムに向かって走り、胴体の赤い塊目掛けて短剣を振り下ろした


ザシュ!


スライムはブルブルと小刻みに震えだし、身体が縦に伸びていく。


「何か使ってくるのか!?」


ヒデが叫ぶと、スライムの身体の震えがピタっと止まり、粘度が無くなり水の様に流れて崩れた。


「やったのか!?」


マナブが叫ぶとオレは頷き、スライムに指を指す。


水たまりと化したスライムは光に包まれ、その光が天に昇り消えていった。


「やったぞ!倒した!」


マナブは自分の事の様に喜んでいる。だが…


「やった!しかもレベルも上がった!!!」


ヒデのこの一言でマナブの心に火を着けた


「何!?レベルが上がっただって!?おいシュウ!早く魔物がウヨウヨいる所へ行こう!ほら!」


そう言うとマナブは砂煙を立てて一目散に走り出していった。


「まったくあいつは…それにしても一匹でレベルアップは、やっぱり成長早いんだよなあ…」


「レベルアップしたら疲れが一気になくなったよ!」


「ああ。レベルアップでHPMP全回復するからな。二人のペースなら、全く休まずにレベリング出来るんじゃないかな」


「この世界の人はどれ位で上がるの?」


「人にもよるけど、10匹位じゃないかな…」


「…ステータスの事も考えたら、何でも10倍の速度で成長するって事なのかなぁ…」


「そうかもな…あ、でもレベルアップ時のステータスの上がり方は、そこまでは上がってないな…もちろん優遇はされてるけどね」


「そっか…じゃあ大体10倍強いって考えたらいいね」


「謎が多いからな。軽く考えとけばいいんじゃね?」


そんな話をして、歩いていると


「…ぃ!…ぉ…ぃ……おーい!二人ともー!」


マナブの叫ぶ声が聞こえた。


オレとヒデはマナブの下へ走り出した。

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