第5話 さよなら勇者シュウ
「褒美を授けたいのだが、何を望むか?」
「国王。出来るならば…」
「なんだね?」
「この王冠は私にお譲りいただけないでしょうか?」
「そなたが持ち帰った魔王の王冠か…」
「はい。この王冠は魔素が強すぎる上に、今後の火種となるでしょう」
「ふむ。私も気にしていた事だが……」
王様の察した顔を見て頷く
「これは魔王の象徴。魔国が新たな魔王を選出する時に、是が非でも取り戻したい物でしょう。此処に保管しているとわかれば危険です」
嘘はついていないのだが、本心は別にある。
ラインバールへの帰り道に気がついたんだけど、王冠の魔素が強すぎて、モンスターが近づいて来ない。
魔除けとしての効果が絶大なので今後の生活で役に立つと見込んでいる。家の玄関に置いておきたい!
「しかしそれを持ち出すとなると、シュウが狙われてしまうのだぞ?」
「それを承知の上です。国王はお解りかと思いますが、勇者の私が所持するのが一番安全なのです。そしてこの後すぐに全国に流布して頂きたい……勇者シュウは魔王の王冠と共に流浪の旅に出たと言う事を」
「!!……魔王を討伐したばかりで、もう旅立つというのか…ここに留まるつもりはないのだな?」
「数日はお世話になりますが……私はこの世界の隅々を周ってみたいのです。東も西もすべて…」
王様は再び長考に入る、口を開いた王様は優しい口調に戻り
「ふふ!相わかった!直ぐに手配しよう!さあ堅苦しい話は終わりだ!はぁ…そう言うと思っていたよ。全くシュウらしいや…私も稀人を縛って置く事は出来ないからね。」
稀人とは別の世界から転移した人の事を言うらしい。
ちなみに遥か昔にもオレみたいな稀人がいたらしい。
伝説ではその稀人が大戦で大峡谷を作って、魔族と人族わ分断したらしい。
形式上の態度をやめ、オレと王様の本来の関係に戻った
「わかってくれてありがとう。国王……いやフィリーミ」
「ただし!条件がある。たまには俺と
「わかってるよ!何かあれば必ず助けに戻る!」
フィリーミは年相応の笑みを浮かべ頷く
オレは力強く頷き、大広間の出口に歩き始めた
「待て!」
フィリーミの声に振り向くと、マイルスや側近や兵士など数百名が、片膝をつき腰を曲げ、礼をしていた。
「勇者シュウ!そなたへの恩は此処にいる全ての者が生涯忘れる事はない!その勇姿はこの国が続く限り永遠に語り継がれるだろう!改めて感謝する!」
そう言うと、フィリーミも皆と同じ様に礼をした。
オレは震える体に耐え、全力で日本式の礼をした。
フィリーミが立ち上がり、満面の笑みで
「またな!行ってこい!」
-ウオオオオオオオオ!
大広間にいる全ての人が、叫び飛び、オレに声をかけてくれた。
「勇者シュウありがとう!」
「ありがとう!勇者様!」
城を出ても、聞きつけた何万もの住民から同じ様な感謝の言葉を贈られた。
これで勇者としての役割も一段落だ。
次の計画が一段落するまで、勇者稼業はお休みだ。
この世界に来て3年。色々な事があったけど、この世界に来て本当によかった。心の底からそう思える瞬間だった。
オレは出来る限りの人に手を振り、お辞儀をし、この国の次の転換点には、必ず戻る事を心に誓い宿屋へと戻るのであった…
さよなら勇者シュウ。またいつか……
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