第4話 フィリーミ王
ラインバール到着の翌朝
街は勇者シュウによる魔王討伐のニュースが駆け巡り、お祭り騒ぎとなっていた。
路上には屋台が並び、朝から飲めや歌えやの大騒ぎとなっているらしい。
あとから女将さんに聞いたのだが、前日マイルスのバカが騒いだ直後から噂が広がり、夜通しこの様な状況だそうだ。
オレはと言うと、街の喧騒など全く聞こえない部屋で半年ぶりのベッドでぐっすり休み、目が覚めた所だ。
これも女将さんに用意してもらった特等室のおかげだ。
ステータスを開き時間を確認すると、午後14時だった。
「やばい!王様を待たせてしまった!」
そう思ったオレは急いで着替えをし、宿屋のロビーへと向かった。
急いで階段を降りていると、ロビーにはオレを待っているであろう兵士が見えた。
「シュウ様!おはようございます。」
「すいません!遅くなりました!王様を待たせてしまい申し訳ありません!」
オレは頭を下げて平謝りだ。
「いえいえ。よくお休みになられたようで良かったです」
「すいません」
「謝る必要はございません。半年の旅路の後の休息ですから。国王からも好きなだけ寝させるように、お申し付けされております。」
「しかし…」
「それに王の本日の御公務はシュウ様のみですのでご心配なさらず。」
「ありがとうございます。でもこれ以上待たせるわけにはいかないので、早く行きましょう」
そう言うとオレは兵士と馬車に乗り、城の大広間へと案内された。
応接間には王様をはじめ、側近や兵士など数百名が待ち構えていた。
「おお!シュウ!旅の疲れは取れたか?」
優しい口調で王様はオレに話しかけてきた。
フィリーミ王。この世界唯一の王様はまだ20代前半のとても若い王様だ。
先代はオレがやってくる数年前に病で亡くなったらしい。
「国王。お手間をおかけして大変申し訳ありませんでした。おかげさまで旅の疲れが癒えました。ご列席の皆様にもお詫びいたします」
側近や兵士は怒っている様子はなく、皆々笑みを浮かべ、オレを歓迎してくれている。
「皆への心遣い感謝する。話はマイルスから聞いているがシュウからも詳しく聞かせてくれないか?」
俺は道中の話や魔王を討伐した事を細かく説明した。
さすがに異世界転移スキルの事は伏せておいたが。
「礼を言う。ありがとう。シュウのおかげでこの国の危機は去った。大峡谷の兵からも、この数日で魔国の兵が西へ退いた旨報告があった。これで戦前の状態へ戻ったわけだ」
この世界はとても狭く、フィリーミ王国と魔王が率いる魔国の二国家のみが存在している。
アメリカ合衆国位の大きさの大陸1つのみしか存在せず、残りは全て海なのだ。
大陸の中心には大峡谷があり、その大峡谷を挟み、フィリーミが東、魔国が西と均等に領土が分かれている。
「魔王亡き今、魔国は混乱しているでしょう。当面はこちら側に攻め込む様な事はないかと思われます。しかしいずれは、新たな魔王が選任され、力をつけた時、またこちら側に攻めてくる事でしょう」
「そうだね。今は大峡谷の守備を強化して守りを盤石にするべきだね。」
王様はうつ向き、何かを考えている。
「我々に力があれば……」
魔族は種族の多さから、強大な力を持つ。
一方人族は種族が少なく、力が弱い。
その代わりに防衛能力がずば抜けて高く、知能も高い。魔族と人族は矛と盾の関係なのだ。
かつては力と守が相殺し均衡を保っていたわけだが、長い戦いが続いた事で、種族の多い魔族の出生が増え、バランスが崩れてしまったのだ。
先代の王様が亡くなった事がきっかけで、
兵の絶対数を増やし、着々と準備をしていた魔王軍は、満を持して大峡谷を超え進軍。
魔王自らが前線を率いて、ラインバールへと足を進めていたのだ。
それが仇となってオレにやられてしまったわけ。
魔王が死んでも完全な平和が訪れる訳ではないのだ。
王様はそれを思って、色々考えているのだろう。
マイルスが王様に進言する
「国王お気持ちはわかりますが、今日は魔王を倒した事を喜びましょう」
「そうだったね。ありがとうマイルス。シュウも申し訳なかった。今日の主役は君だ」
王様は一呼吸置き、威厳ある口調でオレに話しかけた。
「勇者シュウよ!そなたのおかげでこの国は救われた!改めて感謝する!」
「身に余るお言葉です」
「して、そなたに褒美を授けたいのだが、そなたは何を望むか?」
こう来る事は予想出来ていたので、オレは考えていた事を伝えた。
「国王。出来るならば…」
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