第12話 拉致


 オレは仙炎鳥アルケディオスに銜えられてアリスモールの上空を浮遊していた。

 

「銀子さん! これヤバいっすよ! あと、腕大丈夫か?」


 腕をぷるぷるとさせながら、オレの首にぶら下がるようにつかまっていた銀子に問いかける。

 残念ながら柔らかくはない。

 

『……さ、さすがにしんどいなこれは。どうして僕はこんな事をしているんだろうか』


 え。実は僕っ子なのか!?

 ま、まぁ触れないで置こうか。


「アルケディオスがホバーしてる今のうちに鍵に戻る事ってできないのか!?」


 このままでは、限界が来て銀子が落ちるのは火を見るよりも明らかだ。

 オレの首に残ったままの首飾りの紐に、いい感じに戻ってくれればオレも助かるという物だ。

 つまりは、首に負担がかかってて滅茶苦茶しんどいという事だ。


『む、無理だ……君の魔力はもうほとんど残っていないだろう?』


 言われて気が付いたが、いつの間にかに普段通りの男の姿に戻っていた。

 とりあえずは、左手にずっと握っていた「白炎色の杖ツンデレロッドを腰につけている貪食袋グラトンバッグにしまった」


 銀子の発言から推測するに、どうやら魔導具に戻るのにも魔力を消費するようだ。


 すると、腕力が尽きたのか銀子がずるずると下に下がっていき、ついには手を放してしまった。

  

「ちょ、待っ!!!」


 銀子はオレのズボンのゴム部分に引っかかるように掴まる。


「おおおああああッッッ!!! 色々とポロっちゃうから離してくれ! 少女にモノを見せたとなるとオレが殺される!」


『君は私に落ちろと言うのかね? なんと薄情な奴なんだ。ポロリの一つや二ついいではないか』


「なにが『いいではないか』だよ! オレの首が代わりに落ちる羽目になるんだよ! 下にジェイクがいるから安心して落ちていいぞ!」


『……では、君もろとも私も一緒に落ちるとしようか。君は醜態をさらし、私は怖い思いをする。winwinではないか』


「どこがwinwinなんだよ! ただの道ずれじゃねーか! わかったよ! ちゃんと助けるから! とりあえずタイミングに合わせて手を放してもらっていいか?」


『……わかった君を信じよう』


 オレは体を上下に揺らし遠心力を使って銀子を上に投げキャッチしようとした。

 要はブランコみたいなやつだ。


「1、2の…3! 今だ手を放せ!」


 オレの合図とともに銀子は手を放し、オレは宙に浮いた銀子に手を伸ばす。


 ギリギリの所で銀子の体を抱き寄せる。

 とても華奢な体格をしていて恐ろしく軽かった。

 そして、なんかすごい良い匂いがした。

 言っておくがオレはロリコンじゃない。


『………………………………』


 どうやらまんざらでもなさそうだった。

 特に抗議をしてくる様子もなく無言でオレの首に抱き着いていた。

 今回はオレがキッチリ太ももしたを抑えているから大丈夫だ。


 ……ってか、黙っていれば年頃の子供の様で可愛いのにな。

 ちなみにオレはロリコンではない。


 こちらの準備ができるのを待っていたかのように、アルケディオスはゆっくりと動き出した。

 どれくらいの高さまで来ているのか確認するべく下方を眺めてみる。


 最期にもう一度言っておくがオレはロリコ―――

 

「おおお! ジェイクたちがゴミのようだ!!!」


 結構高い場所だったせいなのか、ジェイクが何やら叫んでいたが全く聞こえなかった。

 おそらくオレの事を心配してくれてるのだろう。


 アルケディオスは段々と速度を上げ前に進み始めた。

 よくゲーセンにある乗り物系のゲームを連想させる。


 空中に浮いている建物を左右上下と旋回しながら躱していき、結構楽しい。

 

「ははは! これスゲーな! ってか、中央都市セブンスセントラルってかなりデカいなおい」


 上空からみると全体的に円形状で、それでいて縦に長い印象を受けた。

 空中に建物が多いからそう見えるのだろう。

 自身が最初にいた森は見えるかな、と思い周りを見渡してみるが、中央都市が思った以上に広いせいか端はまだ見えなかった。


 地上を注視してみると、何者かが物凄い速度で追いかけているのが見えた。


「待って、今時速60キロくらいで飛んでると思うんだけど!? なんであの人達ついて来れてるんだ!?」


 一人は先ほど見た色黒の神父さんで

 二人目は体の周りに雷の様なものを纏っているジェイクだった。



~~一方地上では~~


「ああああああああなんでこうなるんだよぉぉおぉぉ!!!!」


 ケイは叫び声を上げながらアルケディオスに連れていかれた。


「おい! 何でお前らちゃんと見てなかったんだよ!」

 

 アルケディオスの様子を見るために近づいていた、黒十字教会の面々に対して文句をぶつける。

 

「も、申し訳ない。開始する前に、一度皆で拘束魔法の手順を確認していました…間違えて傷をつけると大変な事になるので……」


 申し訳なさそうに20代前半の男は頭を下げ謝罪をする。


 本来であれば黒十字教会のミスで、一般人が被害を受けるというのは絶対にあってはならない事だ。

 当然の事ではあるが、ある程度の武力保持には、その都市に住む者たちの信頼が必要になってくる。

 その武力を自分たちに向けられる様な事があったら大変だからだ。


 ただ、この場合の黒十字教会のミスは良い誤算だったのかもしれないな。

 これでもしかしたら、ケイの過失が免除される可能性が出てきた。


「いや、俺も冷静さを欠いていたすまん。……ってかなんか上でケイ達止まってるな。今のうちにワンチャン回収できたりするか!?」


「そのようですね。私も同行しましょう。中央都市から出られると、我々は手を出せなくなってしまいます。中央都市内で何とか決着はつけたいところですね」


 どうやら黒十字教会統括エイデン=ウルファスが手を貸してくれるようだ。

 

「オッケー! 助かるぜ! じゃ、ちょっくら気合入れますか! ―――雷装 《雷纏龍ライテンリン》―――」

 

 体内の雷の魔力を活性化させ筋肉を刺激し、運動能力を飛躍的に上昇させる魔法だ。

 そのまま、先程アルケディオスが開けた横穴から外に出て、ガラスの壁をに駆け上る。


「エイデンさんよぉ! ちゃんと付いて着て来れてるか!」


 ちらっと、後方を確認すると同じように壁を垂直に駆け上がるエイデンが見えた。

 しかし、一切の魔法を使っている様子がない。


 待て待て待て、本当にこいつ人間か!? 


「えぇ、大丈夫です。お気遣い痛み入ります。ところで、その歳で《雷纏龍ライテンリン》を会得しているとは驚きました。雷の魔力は最もコントロールが難しいと言われる属性です。それをその精度で扱えるとは末恐ろしいです」


 何が恐ろしいだ。どう考えてもお前の方が恐ろしいんだよなぁ。


 本来、魔法というのは自身の魔力を使用し、外界に対して何かしらの影響を与えるというのが基本である。

 それを自分自身に範囲を限定して使用するというのは、相当なセンスと修練がないとできない芸当だ。

 スクワットする際に、途中で同じ体制をキープするとすごいキツイと思うがまさにあれである。


「まぁな。優秀な弟を持つと兄は大変なんだよ。っと、やっと屋上か。……って待て! 何で着いた瞬間に動き出すんだよ!」


 せっかく近づけたってにも関わらず、アルケディオスは移動を始めてしまった。

 そして、何故かケイのズボンが少し下がっていた。


「鬼龍族の方、今回に限り建物への無断侵入を許可します。建物を渡りながら追いかけましょう」

 

「おいおい、そんな事して大丈夫なのかよ!? あと、俺の名前はジェイク=リードだ。ジェイクでいい」


「これは失礼しました。ではジェイクさん、七魔聖帝には有事の際、独自の判断である程度特例法を使って法律の縛りを回避する事ができます。つまりは…急ぎますよ!」


 エイデンは言い終わるや否や隣の建物に跳び移った。

 軽く50メートルは跳んでいた。 


 やっぱりあのおっさん人間辞めてるじゃねーか!


「ッしゃ! 負けてらんねーな! ―――雷装 《雷脚迅らいきょくじん》―――」


 足に雷の魔力が集中する。

 稲妻が走るかの如く疾走し、すぐにエイデンに追いつき並走する。

 

 高い建物は避け、背の低い建物の屋上を経由してアルケディオスを追いかける。



~~空中では~~



 ジェイクとエイデン神父が、建物の屋上を飛び移りながら追いかけて来るのが見える。


「……銀子よ。この世界ではあれが一般的なのか?」


 魔法を使っているんだろうとは思うけど、やはり客観的な視点で見ると、完全にファンタジーの世界やんけ! と実感させられる。

 まぁ、魔法少女になれてる時点で相当おかしいんだけどな。


 ところで……

 

 ……何かオレの【アルカナ】と雰囲気違くね?

 現状、能力を把握しているのは二つ。

 《貪食袋グラトンバッグ》……なんでも際限なく収納できる袋

 《白炎色の杖ツンデレロッド》……火属性魔法を扱える魔法少女変身キット


……何と言うか、統一感がないよな。

 ジェイクは「雷属性」をベースとしてるけど、オレの場合は属性の偏りがない。

 しかも、【アルカナ】は魔力以外の何かを使用する、なんて聞いてたけどバリバリに魔力使ってるよな?


 わっかんねーなこれ


『ほとんど記憶のない私に一般常識を聞かないでくれたまえ。……ただ、神父服を着ている彼には若干の違和感を感じるかな。まぁ、あえて頭で考えてまで表現する必要性はないがね』


「ほーん。じゃぁ、何で《白炎色の杖ツンデレロッド》の使い方を知ってたんだ? どうせ、目的地に着くまで暇なんだし色々教えてくれよ」


中央都市セブンスセントラルの上空を移動している。

 旋回するとこっちの負担になることを理解したのか、アルケディオはさっきよりも快適な飛び方をしてくれている。


『……彼らが必死に追いかけてくれているのに、君は少々楽観視しすぎているのではないか? それと、私が《白炎色の杖ツンデレロッド》の使い方を知っていたのは、がそう言ってたからだな。この姿になってから聞いた中で一番自己主張が強かった』


 ……彼女?


「今のオレに何かできるとは思えないし、余計な事をして事態を悪化させるリスクを負うくらいなら方がましだよって判断しただけな。ってかその口ぶりだと、まだまだ子供が増える可能性があるやつか?」


 可能性としては十分あり得る話だ。

 銀子という例が実際にあるのだから、ほかの魔導具も擬人化してもおかしくはない。

 ……いや、そもそも擬人化する必要性なんてあるのか?

 まぁ、可愛いから細かいことは気にしなくていいか。

 ってかバランスをとるために次は可愛い系のショタにしてくれよ。


 ちなみにオレはショタコンではない。


『聞き捨てならないな、少なくとも私は《白炎色の杖ツンデレロッド》と《破滅の王冠デースルイン》よりは大人だぞ?』


 でーするいん? なんだそれ、全く能力のイメージがわかなかったんだが。

 ただ、一つだけ言える事がある。

 

 ヘルパーさんを雇うか、保育所の方を探しておいた方がいいて事はわかった。


「……うん。まぁ、……この後の苦労が簡単に予想出来て胃が痛いよ。そういや、銀子はどんなことが出来るんだ? 擬人化してるとはいえ、一応は魔導具なわけだし、何かしら能力はあるんだろ?」


 鍵というからには「封印解除」や「拘束系」の魔法だろうか。

 

『……おそらく空間移動だな』


「へ? もしかして自身の能力は忘れてるやつ!?」


 能力名を聞いた感じ、どんなものなのかの具体的な内容は予想が出来ないけど、「空間」と付いている能力は基本ぶっ壊れだ。


『いや、単純に言葉に直すのが難しかっただけだな。「場所」と「場所」を繫げる能力と言えば君にもわかりやすいだろうか』


「それめっちゃ便利じゃね!? ってかそれで降りれるくね!? いや、ごめん今魔力なかったんだった! てへぺろ♡」


 普通に考えてかなり凶悪な能力だ。

 爆弾を相手の体内に移動させたり出来るならそれでジエンドだ。

 ヌルゲーやんけ。勝ったな、風呂入ってくる。

 

『気持ち悪いからそれやめたまえ。それと、先に言っておくが、今の君に短縮できる距離は万全の状態で精々二メートルといったところだぞ。先ほど落下している時に試してみたのだが、一メートル空間を短縮しただけで、君の無属性の魔力が半分減っってしまってね。容易に鍵に戻ることもできなくなったよ』


 あーアルケディオスと一緒に落下してる時か、道理で変な挙動しながら落ちてきたわけだ。


「二メートルでも十分有用だと思うけどな。ただ、無属性の魔力を使ったって言ったか? もしかして、に魔力の残量が違うって事なのか?」


 つまりは、


魔力最大値100


無属性40 他6属性 それぞれ10ずつ


 みたいな。


『その理解で問題ないだろう。私がこの姿になれたのも、君の無属性の魔力量が適当だったからだな。魔力量は魔導具を使って鍛えれば増えていくから、頑張りたまえ』


「なるほどな。オレは人類種だから元々の無属性の魔力が多かったって感じか」


 すると、緑色の景色が前方に見えてきた。


「もう中央都市セブンスセントラルを出るな……まさかとは思うが、このまま空中で餓死なんて事にはならないよな……ワンチャンありそうで怖いな」


 途端に先の見えない恐怖が押し寄せてくる。


「ケイィィィィィィィィィ!!! 手を伸ばせぇぇぇえ!!!」


 やや後方からジェイクが名前を呼んでいる事に気が付いた。



~~追跡中の二人~~


「クッソ、やっぱ速いな!」


 かなりの速度でアルケディオを追っているが中々距離が縮まらない。

 むしろ、少しづつ放されているようにも見える。


「我々は建物を選びながら飛んでいる都合上、速度に遅れが出るのは仕方のないことです」


「まぁ、そうだけどよ。でもこのままじゃ、中央都市セブンスセントラルを抜けられちまうぜ?」


 現実問題、中央都市を抜けられると追うのは難しい。

 人道上からルートが外れた場合、追うのは実質不可能に近いだろう。

 それに加え、魔力が途中で切れてしまって、中途半端に森でサバイバルって状況に陥るのも大変危険な事だ。


「ふむ。一つ私に案があります。私は円卓会議の許可がなければこの都市から出ることが出来ません。ですので、城壁に到達したと同時に私がジェイクさんを投げ飛ばしますので、何とか掴まることはできますかね?」


 少し考える。

 確かに、この人に投げてもらえば届くかもしてないが……


「躱される可能性が高いな。仮に掴めたとしても、炎が邪魔でケイを安全に保護できない可能性が高い」


「回避と炎に関しては私がカバーしましょう」


 そう言い、背中から一冊の本を取り出した。

 黒い皮の表紙をした聖書の様な物だった。


「もしかして魔導書の類か?」


 【魔導書】

 本の形態をした魔導具を一般的にさす言葉で、基本的に魔術などのを書き収めている事が多い。

 具体的には『呪い』や『祝福』、『拷問』などの種類がある。


 基本的に魔導書の強さはそれを書いた本人の力の強さ比例する。

 時に、『憎悪』『願い』『誓い』こういったものは大きな力になるという事だ。

 

「えぇ、そうです。これは、『マナ・クラレントの鎮魂歌』の原本です」


「原本!? 確か、ラグナロクの際に、悪魔族の連中が聖書関係は全部燃やして焚書にしたって聞いてたけどな」


 ラグナロクの際、悪魔族の過激派の手によって、世界中の宗教的遺物が破壊されるという事件があった。

 『原書』と呼ばれる類のものは特に力が強く、悪魔族からしたらかなり危険な物だったため、排除するべき対象になったと言いわれている。

 しかし、異変に気が付いた保守派の悪魔族によって捕らえられ、今なお『地獄監獄』の下層部に幽閉されているらしい。


「そうですね、大多数の宗教的遺物は破壊されてしまいました。ただ、黒十字教会に戦後残されたとされるこの『マナ・クラレントの鎮魂歌』は、当時の保守派の悪魔族によって死守されたと伝えられていますね」


「保守派とは言え、悪魔族がカバーに入ってくるのは意外だな」


「まぁ、彼らからしたら我々『人類種』は商売相手ですからね。戦後の禍根をなるべく残したくはなったというのが実情でしょうね。さて、ジェイクさん。そろそろ見えてきましたよ」


 中央都市を囲むように設置されている外壁が見えてきた。


「よっしゃ! 《雷纏龍ライテンリン》! こっちは、準備オーケイだ! 思いっきり頼む」


 城壁に若干早くエイデン神父が着地し、ジェイクは「ふわっ」と慣性をできるだけ殺しながらエイデン神父めがけて足を延ばす。


「ではいきますよ! バラバラにならない様に気張ってくださいね!」


 エイデン神父は少しだけ跳び、空中でガッチりとジェイクの足首を右手で掴み、反時計回りで一周勢いをつけてそのまま「ブン投げた」。


 物凄い勢いでアルケディオスにジェイクが投げつけられる。

 

 が、案の定アルケディオスはこれを察知し、右に旋回して回避行動をとる。


「エイデンのおっさん!」

 

「わかってます! あと、私はまだ27歳のお兄さんです! 《聖なる十字架ホーリークロス》!《慈悲なる天使の息吹マーシフルソング》!」

 

 胸ポケットから小さい十字架を一本取り出し、投げ飛ばされている俺の到達点に向けて投げる。


 すぐ隣を勢いよく通りすぎていき、目の前で止まったかと思うとその刹那、約5メートルほどの大きさへと姿を変えた。


 さらによく見ると、体を黄色いオーラの様なものが包み込んでいるのが解かる。


「その十字架を足場に使ってください! あと、《慈悲なる天使の息吹マーシフルソング》で仙炎鳥の炎に対しての耐性を付けたのでそのまま触れますよ!」


『よっしゃ! 助かるぜ!』


 巨大な十字架を足場に再度跳躍し、アルケディオスの足首をガッチリと掴む。


 それに気が付いたアルケディオスが必死の抵抗を始めようとする。



~~空中組~~



 ジェイクが何やら巨大な十字架を足場に使い、アルケディオスの足にしがみついたのが見えた。


「な、なんだあれ! いきなりデカい十字架が出てきたんだが!?」 


 巨大な十字架はゆっくりと地面に落ちていく。


『ふむ。光属性の魔力を使用して、大きさを自在に変えられるタイプの魔導具か。中々興味深いね。あとジェイク君に懸けられているバフもかなりの性能をしているね』


 すると、アルケディオスはジェイクを振り落とそうと暴れ始める。


「お、おっと! アルケディオス落ち着け! ジェイクは悪いやつじゃない! オレを拉致したのは何かを伝えたかったからじゃないのか? ちゃんと目的地に着くまで大人しくしてるから、ジェイクを一緒に連れていてくれないか?」


 アルケディオスは少しだけ考える仕草を見せ、言葉を理解してくれたのか、オレと銀子を自身の背中に「ひょいっ」と乗っけてくれた。

 その目はまるで「そういう事ならよかろう」と言っているように見えた。


 そして、ジェイクは足にしがみついたまま上を見上げる。


「なぁ、俺は背中に乗っけてくれないのか!?」


『…………』


 アルケディオスには聞こえていないようだった。

 ドンマイ。


「まて、なんか俺の扱いだけ雑じゃない? 結構、頑張ったんだけど!」


「まぁ、そんな日もあるよ」


 一行はなんだかんだ合流し、仙霊山へと向かうのであった。


 





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PARALLEL-GEAR-≪パラレルギア≫ ~85.714285714異世界生活~ 猫田猫宗 @nekotanekomune

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