第10話 来訪者


「……う、うーん…もう朝になったのか」


 昨夜はオレの歓迎会があって、かなり遅くまでジェイクやレイン先輩に付き合い酒を飲んでいた。


 時刻は午前七時。

 今日は朝から中央部に行って、正式なギルド加入申請をしなければならない。


「....あぁ、頭いてぇ」

 軽い頭痛の中、立ち上がろうと手をベッドにつこうとした瞬間「ふにゅ」という、やけに柔らかい感触が手の平を癒す。


「....ん? 今何か柔らかい物を触ったような……ッッッ!!!!!」

 オレの手が二つの丘の一つに、吸い付けられるかのように置かれているのが見えた。

 そして、美しい黒髪に、長いまつげの半裸の女性が白シーツ一枚でそこにいた。


―――『???』


 待て待て落ち着け童貞22歳保志間慶、結論を出すのはまだ早い。

 俺はちゃんと服を着ているし、なによりこんなオイシイ展開が現実であると思うか? 

 否、そんなものはフィクションの世界の話だ。考えられる可能性があるとすれば、部屋を間違って入ったとかその辺だろう。

 

 とりあえずは、『逃げる』か!!!


 光の速さで現状を理解し、同時に解決策を思いつく。そして、すぐにこの場からの離脱を図る。

 ベッドから出ようとした瞬間、何者かがオレの腕を掴む。

 頭で理解するより前に、振りほどこうと抵抗するがびくともしない。


 やめろ! 考えたくない! あああああ


「あだだだだだ!!! 痛い、痛いから放してくれ!!! 頼む!!! 逃げないから!!!」

 万力の如き握力で握られた。


「うふふふ。私の胸を揉んでおいて何故、何事もなかったかのように去ろうとしているのですか?」


 こ、こいつ図ったな!? 

 ……一旦、冷静になれ。ここで相手のペースに乗せられたらそれこそ、バッドエンドコース直行だ。

 オレは包丁でめった刺しエンドなんてごめんなんでな。


「勘違いだって! ほら? 夜桜さんの自尊心を守るには『何事』もなかった、とした方がいいかと思ったんだよ!」


「女にそういった類の嘘が通用するとでも? それに、大丈夫ですよ『まだ』何もしてませんから」


「待って! 今、『まだ』何もしてないって言った!? 怖いって! ってか、何でオレの部屋にいるんですか!? 」


「鍵が開いていたので」


 どうやら、夜桜さんは鍵がかかっていない部屋に入ってしまう趣味があるようだ。


 ……って、あるかそんなもん!!!


「なるほど、とりあえず服着てもらっていいですか? こんな状況を誰かにでも見られでもしたらオレの立場が危ういんで」


 色々とツッコミたい所ではあるが、まずは服を着てもらおう。

 このままじゃ、オレのをツッコミたくなっちまうからな。

 白い布一枚しか身に纏っていない姿はオレとしては何かとマズイ。

 「ナニ」がとは言わないけどな。


 すると、空気を呼んだかのようなタイミングで部屋のドアが開く。


「保志間さーん。もう朝ですよー! ジェイクさんがホールで朝食をとっているので、一緒に済ませちゃってくださ—――」


 エプロン姿のクレアさんと目が合った。

 どうやら起こしに来てくれたようだ。

 いや、そんなことを呑気に考えている場合じゃない。


「ちょ、違います!!! 誤解です!!! だからその目はやめて!!!」


 まるで豚を見るかの様な目をしていた。

 そして、夜桜さんは無言でオレの腕にしがみつく。

 柔らかいですね。はい。

 いや、そうじゃない! この人絶対、確信犯だよね!?


「―――まぁ、何となく状況はわかりますよ。おそらく、夜桜さんが夜な夜な侵入したんでしょうね」


 クレアさんが聡明な人でよかった。

 もし、これがジェイク辺りだったらかなり危なかった。


「ですが、どうして『そんな』事になっているんですか?」


 ん? 何を言っているのかわからずクレアさんの視線の先を見る。

 そこには白い布に不自然に"盛り"上がった『山』が出来ていた。


「……生理現象です」


 弁明することは諦めた。

 如何に理由を説明しようとも、おっ立ててしまった時点でアウトである。


「変態!!!」


 そう言い残しクレアさんはどこかへ行ってしまった。

 沈黙が部屋を包む。


「は、ははは……じゃ、朝食に行きましょうか」


「いえ、私はもう少し寝ます」


「おい!!!」


 こうしてオレの災難から始まる二日目は始まった。




 夜桜さんを部屋に置いてきたオレはとりあえず中央ホールに向かう。

 まだ寝足りないらしい。

 何故、寝不足なのかは考えないでおこう。


「よう、おはようさん。聞いたぜ? 結構大変だったみたいだな!」

 肉を頬張りながら赤髪、赤目の男ジェイク=リードが茶化すかのように挨拶をしてきた。

 どうやらホールにいるのは一人だけのようだった。おそらく皆まだ寝ているんだろう。


 テーブルに置かれていた水を飲みながら返答する。

 

「全くだよ。次からはちゃんと鍵をして寝ることにするよ。そういえば、昨日部屋まで運んでくれたのはジェイクなんか?」


 昨晩、誰かに部屋まで運んでもらった記憶があるが、誰かまではわからなかった。

 身長170cmのオレを運べるのはおそらくジェイクくらいだろう。


「ん?いや、俺じゃないぞ。途中トイレに行ったんだけどよ、帰って来た時にはもう皆はいなかったぞ」


 と、なるとオリビア姉さんか、ルークさんあたりだろうか。

 レイン先輩は潰れていたし、女性陣は難しいだろうしな。


「なるほどね、おっけー。そういえば、今日はこれから中央に行くんだよね? 出来ればでいいんだけど、ちょっと町を見て回りたいなぁーって」


 昨日は、空港みたいな受付から直で来たって影響と、疲労感で正直であまり周りを見る余裕はなかった。

 この世界の世界地図や情報を検索できるモバイル端末辺りは確保したいところだ。

 金はまぁ、誰かに借りるか(思考停止)


「ところで、この世界って現金とかってあるのか? オレのいた時代だと、ほとんど電子マネー化してたんだけどさ」


「この世界<セブンレイス>での通貨は全部統一されてて、大きい順に大金貨、金貨、大銀貨、銀貨、銅貨の計五枚が適応されているな。ただ、中央都市セブンスセントラル地下都市ハーデンガルドみたいにかなり近代化されたところだと、電子マネーが基本だったりするな」


「田舎とかだとカードが使えないのは今も昔も変わらないんだな」


「まぁ、種族によっては一切通貨が必要ないやつらもいるしな」


 確かに、『竜人種』や『海洋種』とかは自給自足できそうだもんな。


「ちなみに、価値とかってどんな感じなんだ? 例えば、パン一個は銅貨一枚です。みたいな」


 貨幣価値がわからないとぼったくりの被害にあうかもしれない。


「そうだな、銅貨一枚じゃ何も買えないけど、大銀貨は五枚あればお菓子くらいは買えるだろうな」


 

 銅貨十枚で銀貨一枚

 銀貨十枚で大銀貨一枚

 大銀貨十枚で金貨一枚

 金貨十枚で大金貨一枚

 銅貨一万枚で大金貨一枚


「基本的にはこういう感じだな。俺はめんどくせーから全部カードにしてるけどな」


 なるほど。銅貨が一番価値が低くて、大金貨は一番高いと。

 とりあえずは、仮置きで銅貨は一円で、大金貨は一万円って事にしておくか。

 物価がどれくらいなのかはわからないけど、一応は五十円でお菓子一個買は買えるらしいな。


「とりあえずは把握した。ジェイクの方で出発できるタイミングになったら早速行こうか」


「飯は食わなくていいのか?」


「酒飲み過ぎた影響で食欲ないんだよ……ってかジェイクは大丈夫そうだな。確か一番飲んでた気がするけど」


 少なくともジェイクだけで、ビール瓶サイズの物を20は開けていた気がする。

 冷静に考えてみると数字がおかしい。


「そうだっけか? まぁ、俺的にはまだまだ飲めたんだがな。とりあえず、俺の方も準備はできたから行くか」


 気が付くと皿の上の食事がなくなっていた。

 オレが瞬きする間にでも食べていたんだろうか……




 その後、門を通りオリビア姉さんの店を経由し、外に出た。

 表に出ると昨日見た通り、ケモ耳が生えた人や、髪と目が赤い人、エルフ耳をした人など様々な存在が行きかっていた。


「こう、色んな人たちがいると異世界に来たって再確認させられるな。ってかやっぱり中と外とでは文明レベルが違って見える」


 改めてみると本当にすごい光景だった。

 今度、ケモミミの風俗店にでも行こうかな。

 ……てっか、空中に浮いている建物なんかは特に壮大に感じるな。

 日照権とかは大丈夫なんだろうか? 


「中央部までの足はどうするん?」


「そうだな、今日はオフだからゆっくりと歩いて行こうぜ」


「今日休みだったのか、なんか悪いな、初給料が出たらなんか奢るよ」


 元居た世界では基本的にフリーター生活だったため、誰かに「初給料で奢ってやるよ」みたいなことは言えなかった。

 ルークさん曰く、給料はクエスト報酬を人数で割って、自身の分け前分から九割が手元に来るらしい。

 どう考えても破格の割合だ。特にオレみたいにろくに魔法が使えない奴でも、割合固定で給料がもらえてしまうという事だ。

 

 まぁ、端的に言えば『寄生プレイ』だな。

 

「別に気にしなくてもいいけどなそんなこと、それに一応ギルマスから今回の必要経費分の金は受け取ってるから安心してくれ。とりあえずは、行きで簡易用のアリスキューブと簡単に装備辺りを買って、帰りに適当にぶらつくってプランで行こうか。ずっとその恰好でいるわけにもいかないしな」


 ジェイクに指摘されて初めて自分の格好に違和感を覚えた。

 ……確かに、黒のパーカーにスウェットはアウトだよな……いつもこの格好でいるとわからないもんだな。

 無地のパーカーに、灰色のスウェットの「the部屋着です」コーデだ。

 個人的には異世界転移するんだったら、やはりジャージがよかったなとは思う。

 ってかなんでオレはんだろうか?

 まぁ、いいや

 

「おっけ、それでいこうか。因みにそのアリスキューブには地図や検索機能ってついてたりする?」

 アリスキューブは昨日ジェイクが使っていたやつだ。

 もし、スマホ的な機能があればかなり助かる。

 

「付いてるぞ。まぁ、ほとんどは連絡手段としてしか使わないけどな。検索機能は回線が存在する都市でしか使えないし、地図なんかは全く更新されてなくて、使う方がむしろ危険まであるからな」


 成程、地図では道になってるけど実際は崖でしたってやつか。


「へー結構化学が発展してるように見えるのに郊外では使えないんだね」

 

「非干渉地帯は電波でさえも許容されないって事だな」


 

 ジェイクの後を付いていきながら歩いていると、なにやら巨大な壁の様な見えてきた。

 全体的にガラスで覆われ、どことなく丸みを帯びた形状をしていた。

 そして頭頂部には何やら二本の縦長状の物が付いていた。

 なんあれ?

 

「前方に見える超デカい建物があるだろ? あれがアリスカンパニーが誇る超巨大モールの一つ『うさちゃんモール』だ」


「いや、ネーミングセンスどした!? ってか、あの二本ある何かはうさ耳か!」


 どうやら、オレ達が今いるところから見えているものは後ろ姿だったようだ。

 それにしてもデカすぎんだろ……

 

「ウサギってぴょんぴょん跳ねるだろ? それにあやかって、業務成績がぴょんぴょん伸びますように、って願い込められてるって噂で聞いたことがあるな。実際のところは知らんけどな」


 いや、それ上がった後に落ちてますやん…… 

 

「な、なるほどね。見た目がなんであれ、一番重要なのは必要な物が揃うのか?って所だからさ」


 途端に、女児向けの施設に入るかのようで気が引けるが、背に腹は代えられない。 

 オレも「うさちゃんモール」を楽しもうとしようか。

 

「よし、いざ行かん!!!」


 近くに行くと大きすぎて最早兎の面影すらなく、ただのガラスの壁だった。


 店内に入ると、前方に巨大なガラス状の十代前半に見える女性の像があった。

 おそらく、このモールのオーナーの娘さんあたりだろう。もしくは、ただのロリコン野郎のどちらかだな。

 後はよくある両側に店が並んでいるという感じだった。ただ、通路の先が見えないくらい距離があって、客がごった返している。


「これ迷子になったら終わりだな」


「その時は迷子センターを頼るから大丈夫だ」


「いや、それ大丈夫じゃないよね!? 22歳にもなって迷子センターは一種の拷問だよ!」


 軽く文句を言いつつ、モール三階にあるらしいアリス専門店に向かう。


 ―――三分間ほど歩き目的地に到着した。



「着いたな。ここがこの区画で一番大きいアリス専門店だ。ある程度の品は揃ってるんじゃねぇかな」


 内装はかなりメカニックな見た目をしており、もはや何が何なのかわからなった。

 ただ、『これが一つあればもはや何もいらない! 新型超万能アリスキューブ絶賛販売中!』という広告が目に入った。


「大金貨二千五百枚って……2千500万って事か……こんなん買う奴とかいるのかよ」

 2千500万あればなにができるよ?

 う〇い棒が249万本近く買えるんだからそっちの方がお得でしょ

 一日三本食べる計算で行くと二千三百年は過ごせる計算になるな。

 やっぱり、う〇い棒は最強なんだよなぁ。

 まぁ、十五年くらい食べてないんですけどね。

 

 店内に入りてきとうにぶらつく。

 「メカニックな後付けうさ耳」や「パワースーツ型バニースーツ」……最早、誰特なのかわからない商品が多くて困惑する。

 そして、白いうさ耳の店員さんが最高にいい匂いでつい笑みがこぼれてしまう。

 ここに住もうかな。


「んーあった、あった! これを買おうぜ」


 それは昨日、ジェイクが展開させていたやつと同タイプの物だった。

 値段はどうやら大金貨三枚、つまりは三万円といったところか。

 結構お買い得価格だ。

 ……じゃあ、さっきの2千500万は何だったんだよ……家にでも変形するんか!? 

 

「おっけー ちゃんとルークさんには後で金返さないとな。ってか、初期魔法くらいは使えるようにならないとなぁ。現状【愚者】のアルカナで使い方が分かったのが、貪食袋グラトンバッグだけだから最低限の自衛くらいはできるようにならんとな」


「基本的に、最初の試験を兼ねたクエスト以外は、チームで動くからそんなに心配しなくてもいいと思うがな。俺はこう見えてかなり戦える方だから、いざとなったら俺を頼れ」


「ジェイクが強い事くらい素人でもわかるよ。でも、もしジェイクに助けが必要な時が来たらどうするよ? いつまでもおんぶにだっこされんのは好きじゃないんだよ。まぁ、実家に寄生してたオレが言えた立場じゃないけどな」




「……そうだな! もし、俺に助けが必要になったら頼むわ」


「当然だろ、なんたってオレはハッピーエンド厨だからな」


 どう考えても力のない現時点ではただの蛮勇でしかないが、こちとら元フリーター。図太さだけは一丁前よ!


 とりあえずの必需品であるアリスキューブを入手した二人は店を後にしようとした。


 ―――その時だった。


 耳を劈くつんざくような爆発音が、先程までいた幼女像の辺りから爆風と共にやってきた。


 やや遅れて、客の悲鳴と何かから逃げるような騒音も聞こえてきた。


「おいおいおい。マジかよ、ジェイク今日ってここでお祭りの予定とかあった感じか?」


  嫌な予感が、嫌な予測が出来てしまったが信じたくはない。


「聞いてねーな。それに、かなり焦げ臭い。俺の予想が正しいならこれは火さ―――」


 ジェイクの返答を聞くよりも早く「答え」が先にやってきた。

 

 『キュウイィィィィィィィィィッッッ!!!!!!』


 それは、炎々と燃え盛る炎を身に纏い、けたたましい咆哮をさせながら翼を大きく広げた。


「まじかよ! 仙炎鳥せんえんちょうアルケディオスじゃねーか!」


「あああああ! なんでこんなところに、こんなバカでかい鳥が出るんだよ! ふざけんな!」

 

 体長は羽を広げて横は40m、高さは50mといったところだろうか。

 炎を美しく身に纏う姿に、どこか着物を着ているかのような印象を受けた。

 ってか、

 

 デカすぎんだろ。


 直ぐに走ってアルケディオスが飛んでいる場所に向かった

 正直なところ行きたくはなかったが、今やオレも<アレス>の一員、見過ごすわけのは行かなかった。


「本来なら、ずっと東に行った所にある仙道山にいるはずだ。それに、アルケディオスは魔獣じゃなくて聖獣の部類で、普通はこんなに怒ったりはしないはず。ここに来たのにも何か理由があるはずだ」


「七魔聖帝はどれくらいで来るんだ!?」


「早くて十分といった所だろうな。今回は討伐じゃなくて、鎮圧と確保をしなきゃならない分、準備に時間がかかるはずだ。アルケディオスを含めた聖獣は討伐禁止にされてて、破った場合は基本極刑だ」


「極刑!? 都市に近づく前に察知しろよマジで! ってか、救急車でも八分で来てくれるぞ」


 日本の救急車は確か八分~十分くらいで来る、というのを聞いたことがある。


 近づくにつれ、熱風が顔に当たって目が痛くなってきた。

 

「非干渉地帯から都市上空に入った時点で気が付いてはいるだろうな。それだけアルケディオスの鎮圧には準備が必要ってこった」


 貪食袋に手を突っ込み数秒思考する。


「オレにいい考えがある」


「なに!? 相手は聖獣だぞ? 『倒す』ことはできても『捕獲』するのは二人じゃ無理だぞ!? アルケディオスの炎で燃えたものは、最上位蘇生魔法ですら復元できないって言われてるが……それでもいけそうか?」


 自信があるわけではないけど、やらないよりはいい。

 もし、やってしまったら責任は取ろう。ジェイクが。


「……昨日、最後酔いつぶれる前に、貪食袋内の時間経過を調べようと思って、食べ物をいくつか入れてたんだよね。今確認してみたけど、肉類は傷んでるけど、皮の付いた果物類は大丈夫そう。」


「なるほどな! それをアルケディオスにぶん投げて時間稼ぎをしようって事か!」


「そゆこと! じゃ、ジェイク後は任せたぞ 」


 貪食袋から食べ物を取り出し、ジェイクに手渡す。


「おうよ! せえの、オラッ!」


 とてつもない速さでアルケディオスの頭上に向けて果物が投擲された。


 しかし、投擲された果物はアルケディオスが身に纏う炎で一瞬にして灰と化した。

 ……「燃えている」という過程をどこかに置いてきてしまったのかな?


「待って! あいつ普段どうやって食事してるんだよ! これじゃ、届く前に燃え尽きちゃうじゃん!」


「チッ、アルケディオスの炎は本来は熱くなくて、敵対者にのみ、その効力を発揮するとは言われてるな。ワンチャンいけるか! って思ったけど、この調子じゃ食べ物も敵認定されてるみたいだぜ」


 すると、アルケディオスがゆっくりとこちらを見た。


「……な、なぁ、これヤバくないか?」


「……あぁ、ヤバいな。俺のスピードなら逃げられるけど、ケイはまず間違いなく灰になるだろうよ」


「……ジェイク…今までありがとう」


「ケイィィィィィィィィィ!!!!!」


 

 『キュウイィィィィィィィィィッッッ!!!!!!』


 若干のハモリを入れながら、燃えるような咆哮を飛ばし、こちらに向かって飛翔をしてきた。

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