第51話 くるくる文ふたたび
小休止後、みんくたちは、ふたたび工場の中心部をめざす。
そして、不審なマネキン製造の機械が姿を現してくる。
大きな機械だ。
マネキンの腕やら頭部がベルトコンベアで流れ、
形を整えるためのプレス機のようなものまである。
そしてかなりの熱気。
「うわー、暑いね……」
「こんなところには長くいられないな。
早く終わらせてしまおう。
みんく、プログラミングをするんだ」
「うん」
みんくは、機械の一部をタッチした。
瞬時にプログラミング画面があらわれる。
機械についての長々としたプログラムが表示されているので、
検索機能をつかって、マネキンを製造する部分だけを探すことにした。
下記のようなプログラムが出現した。
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■マネキン製造プログラム
↓くるくる開始(製造番号が1から開始)↓
「現在の製造番号」のマネキンを機械から出力する。
製造番号を1増やす。
1時間待つ。
↑くるくる終了(製造番号が65535で終了)↑
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「これかぁ……。
製造番号いくつまで作られているんだろう?
まあいいや。
これを直してしまえば、変なマネキンは作られなくなるもんね」
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■マネキン製造プログラム(修正後)
↓くるくる開始(製造番号が1から開始)↓
「現在の製造番号」のマネキンを機械から出力する。
製造番号を1増やす。
100年間待つ。
↑くるくる終了(製造番号が65535で終了)↑
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「100年待たないと、次のマネキンは作られないように変えました!」
みんくはテストで100点をとったような顔で、誇らしげに言う。
「このプログラムごと消せばいいのに……」
さくりはあきれた様子で、みんくを見る。
「さんざん嫌な目にあわされたから、ただ削除するだけじゃつまらないでしょ」
「意味不明な理由だね。
まあいっか。100年に1回しか作られないのなら、
それはそれでいいのかも。あはは、みんくらしいや」
「そうだね、うふふ」
みんくとさくりは、向かい合い、お互いに微笑みをうかべた。
100年に1回しか作られないのなら、事実上、製造を止めたのと同じだ。
「みんくさん。さくりさん。
これで、この仮想世界はいくらか平和を取り戻しました。
VIRUS《ヴァイラス》の脅威はまだ残っていますが、
妙なマネキンの工場を停止させるだけでもかなりの効果です」
アノミーは、喜びの表情を浮かべながらも、いたって冷静な口調だ。
「そうだね。でも、脅威はもうひとつあるよ」
さくりは、アノミーにゆっくりと近づく。
「もうひとつ? さくりさん、それは何ですか」
「……」
さくりは、曇りのような目つきでアノミーを見た。
そして、一呼吸おくと、信じられない言葉を発した。
「アノミー。君こそが最大の脅威だ」
つづく
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