第50話 幼馴染のMPが切れたようです

工場の出入口付近の事務室に、工場内の地図があるはずだ。

そう考え、みんくたちは、ふたたび出入口付近に戻った。


途中であったマネキンは、逃げるなり、強制転送魔法で飛ばすなり、

うまく回避していった。


そして、みんくたちのねらいどおり、事務室の中には、

来客用のスペースがあり、そこには「工場見学マップ」という

わかりやすい工場内地図が置いてあった。


おそらく工場見学者用の地図なのだろう。

色をふんだんに使ったイラスト地図で、とてもわかりやすい。


「この地図どおりに動けば、工場の中心部分にたどりつけるはず」


さくりは地図をもって、先頭に立って歩き始めた。


みんくたちは、少しずつ工場の中心部へと近づいていく。

それに比例して、マネキンの数も増えていく。

基本的にさくりの強制転送魔法でどんどん飛ばしていくが、

そのさいになんども囲まれそうになった。


「まずい。どんどん敵の数が増えてきている」


「やはり中心部に近づけば近づくほど、

 数が増えていってるみたいですね……」


「そろそろボクの体力ももたないな……。

 ボクの魔法も無限に使えるわけじゃない」


「MP切れ!?」


みんくがゲーマーらしい言葉を発する。

さくりもだいたいの意味を受け取り、みんくに返す。


「そうだよ。MP切れだよ」


「宿屋にいかないと……」


「宿屋じゃなくてもいいけど、どこかで休まないといけないね」


「休めるところ……あるのかなぁ」


「そろそろ工場の中心部だし、別にいいよ」


さっきからマネキンが出現しまくってて、とても落ち着けそうな場所はない。

さくりは回復する余裕もなく、そのまま突き進むしかなかった。


しかし最悪なことに、こんなときにかぎって、マネキン集団にぶつかってしまうのである。


うじゃうじゃ、うじゃうじゃ。

大量の虫のように、マネキンがうごめいている。


「うわぁ、こんなときに……!

 あんなにいっぱいマネキンがいる。どうしよう」


「あの数をさばくのは、ボクに厳しそうだな……。

 逃げるしかない」


「……」


突然、アノミーが前に出る。


「アノミー?」


みんくはアノミーの行動に首をかしげた。


「私がやります」


「アノミーが? だ、大丈夫なの?」


みんくはアノミーを心配する。


「みんくさんには隠していましたが……。

 私にはバグを作る能力があります」


「え? そうなの?」


「見ていてください。私の能力を」


それから先は、あっという間だった。

マネキン集団は次々とカビが生えて腐っていき、動かなくなっていった。

あっという間に死体の山……ならぬ、マネキンの山ができあがる。


「す、すごい。こんな一瞬で、マネキンが全滅……!」


「はぁ、はぁ……」


アノミーは全力を使い果たしたのか、苦しそうな息で、その場に座り込んでしまった。


「だいじょうぶ? アノミー」


「すこし力を使いすぎましたね……。

 や、休めば、大丈夫ですよ」


「ありがとう、アノミー。

 じゃあちょっと休もうか……。さくりも」


マネキンの脅威がなくなったので、みんくはその場で休むことを提案した。


「……」


さくりは、狼のような鋭い目でアノミーを見ていた。無言で。


「さくり? どうしたの、そんなに怖い目をして」


「あっ……い、いや。なんでもないんだ。

 ちょっと疲れてるかもね。休ませて」


「?」


アノミーに対するさくりの反応が、みんくは気になっていた。

ホテルのあたりから、何かアノミーを警戒しているように見えたからだ。

ただの思い過ごしだといいけど……。



つづく

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