第49話 ご侵入は計画的に

みんくたちはバスを降りて、工場の敷地内へと入った。

この工場では、この世界をおびやかす不審な動くマネキンが製造されている。


「工場の機械を止めてしまえ!」と、みんくたちは勢いよく敷地内に入った。


そこまではよかった。


「いきなり囲まれてるんだけど……どうする?」


あっというまに動くマネキンたちに囲まれ、みんくたちはピンチに陥った。


動くマネキンの工場なのだから、

その工場に多数の敵がひそんでいるのも当然だった。


「無計画に飛び込むから……」


さくりはクールに批判する。まあそのとおりである。


「『早く飛び込もう』と言ったのは、さくりなのに」


「『無計画に』とは言っていないよ」


「そんなぁ。

 ううー。どうしよ。まずいよ、これ」


みんくは周囲を見回しておびえる。


どこを見ても顔の無いマネキンばかり。

力なく両腕はたれさがり、ゾンビのようにうろつきながら、近寄ってくる。


「奴らの動きは遅い。ボクに任せろ」


さくりはクールに言うと「ボクについてこい」と指示し走り出す。

みんくとアノミーは指示どおり、さくりについていく。


さくりは、マネキンの壁が薄い一角を見つけ出すと、

「きえなさい!」と目の前の2体のマネキンに強制転送魔法をかける。


あっというまに2体のマネキンは煙のように消え去った。

強制転送魔法で、どこかへ吹き飛ばしたのだ。


マネキンの壁が空いた。

さくりを先頭に、みんくたちは足早に脱出する。


そして、工場の部屋の中へ避難する。中には誰もいない。

マネキンの気配もない。

小休止するにはもってこいの場所だ。


「なんとか突破できたね」


「さくり、ありがとう。

 ちゃんと考えて攻め込まないとダメだね」


「反省したならそれでよし」


さくりは、みんくの頭をさっと撫でた。

その行為が上から目線のように感じて、みんくはぷぅと頬をふくらませた。


「子ども扱いしないでー!」


「子どもじゃないか」


さくりも私と同じ年齢なんだけど……。

みんくはそう思った。

なんでこんなに雰囲気が違うのだろう。

さくりのほうがだいぶ大人っぽい……。


「計画的に侵入すべきだが、

 工場の内部なんて正直よくわからないな」


「そうですね。地図も屋内マップも持ってませんし」


「工場の事務室の出入口とか……ああいう場所に

 工場の全体図とかないですかね」


「そうだな。闇雲に歩くより、そういう場所を目指したほうがいいかもね。

 じゃあ、出入口あたりに戻ってみて、そこでマップとか探してみようか」


「えー、また戻るの」


みんくは疲れた様子で返す。

さっき走ったせいで少しだけ息があがっていた。

毎日ゲームばかりしてるからか、あまり体力がなく運動も苦手だった。


「みんく。あちこち探して何もない状況は、とても疲れるだけだ。

 まずは地図とかマップが必要なんだ」


さくりの説得に、みんくも「うん」とうなずいた。しぶしぶではあるが。



つづく

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