第48話 鉄塊と化したバス

みんくたちの乗るバスは、工場前のバス停に迫る。

もう、バス停がはっきり見える場所まで迫っている。


バス停にたどりついた瞬間、爆発だ!

もう一刻の猶予ゆうよも許されない!


みんくはひらめき、決断した。


「これで……どうだっ!」


みんくは、バスのプログラムを神のような速さでいじった。

そして、そのプログラムを実行する。


パーン! パーン! ドドドド!


破裂するような、引きずるような強烈な爆音が鳴りひびく。

大地震のような揺れがみんくたちを襲う。


遅かったか! 爆発してしまう!

誰もがそう思ったときだった。


「俺のバスが……と、止まっただと!?」


偽運転手は、あわてふためく。

バス停は目の前だ。

なのに、もうバスが動くことはない。

追突したトラックに押されても、びくともしない。


「どうやってバスを止めた。

 何をした。お前、いったい……何を!」


偽運転手は何が起きたのかわからず、あわてて運転席から立ちあがる。


「その答えを聞く権利は、お前には無い!

 きえなさい! 強制転送魔法!」


さくりが間髪をいれず、偽運転手に強制転送魔法をお見舞いする。


「あーー れーー !!!!」


偽運転手は、バスの窓を勢いよくぶちやぶり、空のかなたへと飛んでいった。

これで敵(VIRUS)はいなくなった。


「ふぅ……間一髪かんいっぱつだったね」


「みんくさん。いったいどうやってバスを止めたのですか」


「そうだね、それは……重くしたんだよ、バスを」


「重く!? なるほど……。

 たしかにそれならバスは一切動かなくなりますね。

 どれくらい重くしたんですか」


「100トンくらいかな」


「お、重すぎますね……」


バスの重量はだいたい数トン~10トン程度と言われる。その10倍だ。


さっきの「パーン」という破裂音は、おそらくタイヤがつぶれた音なのだろう。

バスの重さに耐えかねて。

アノミーはそう思った。


「みんくはさすがだな……。

 あんなにひどい状況だったのに、すごいよ。

 ちゃんとバスを止めることができて」


さくりがみんくをほめる。

みんくは照れくさくて、頬を赤らめた。


「えへへ」


「さすがはみんくさんです。

 やはり私の目に狂いはなかったですね」


アノミーは嬉しがって、みんくにベタベタとさわる。


「もう、アノミー。くすぐったいよ」

「ふふふ」


「こら、イチャイチャするな」


接近した二人の間に、さくりが割って入る。

さくりは一瞬怒ったような顔をしていたが、すぐに元のクールな顔に戻る。


「とにかく、工場は目の前だ。

 早く行って、さっさと終わらせよう」


みんくたちは、工場内部に向かって歩き出した。


つづく

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