第43話 VIRUS(ヴァイラス)
うさぎホテルをチェックアウトしたみんくたちは、
工場へ向かうべく、バスを探し始めた。
「バスってどこで乗るんだろう?」
「みんく。バス停があそこにあるよ。
ほら、あっちの駅前に」
「あ、本当だ……」
駅前には複数のバス停があった。
その中から、行き先が工場となっているバス停を探す。
あった。
みんくたちは、そのバス停を見つけた。
時刻表をぞろぞろとのぞきこむ。
「は!? なんか……本数すくないんだけど」
「次のバスは1時間後ですね」
「なんなのこのバス停……1時間に1本しかこない。
これ、バグでしょ」
「バグじゃなくて
「しよう?」
「
「えっ……どういうこと?」
「工場はかなり町はずれにあって、遠くて、バスも1時間に1本の運行で
OKだということですよ」
「そんなー! あと1時間も待つの!?」
「はい」
「そんなに待てないよ。
よーし、こうなったら、バス停の時刻表をいじっちゃおうかな。
プログラミングで。バスが1分に1本くるようにしちゃおう」
「時刻表を直しても、意味はないです。
肝心のバスのほうをプログラミングしないと
1分に1本にはなりませんよ」
「そんなー!?」
みんくは、肩をがっくりと落とした。
まぶしい太陽がさんさんと輝くなかで、
みんくたちは1時間待たされることになったのだった。
みんくの背中にじんわりと汗がにじみはじめる。
暑さとヒマを感じたみんくは、暑さをまぎらわせるため、ある会話を始めた。
それは、うさぎホテルの支配人の話題だった。
「ねぇ……あのホテルのうさぎ支配人さん、
いったい何者だったのかな?
わたしたちを必死に外に出さないように、がんばってたみたいだけど……」
みんくは素朴な疑問を口にした。
うさぎホテルのうさぎ支配人は、みんくたちがホテルから出ないように
かなり豪華なもてなしをしたり、良いホテル暮らしを提供していた。
チェックアウトするときも恐ろしい勢いで止められた。
あれに何か意味があるのだろうか。
「すべて推測になりますが……」
アノミーはそう切り出したうえで、話し始めた。
「あれは、おそらくこの世界にバグを生み出している集団である
『VIRUS』(ヴァイラス)の一員でしょう」
「ばいらす?」
聞きなれない言葉に、みんくは思わず首をかしげてしまった。
「VIRUSはバグを積極的に生み出して、この世界をおかしくさせます。
この世界をバグまみれにして混沌とした状態にすることで、
エネルギーを得て、彼らは生きながらえることができるのです」
「ということは、あのうさぎ支配人さんは……」
「みんくさんを足止めしたかったのでしょう。
バグを直させないために。
VIRUSは、みんくさんのプログラミングによってバグを修正されることを
恐れているのです」
「VIRUSかぁ。ふーん。知らなかったよ。
気をつけないとね。
それにしても、アノミーは物知りだね。
わたし、VIRUSなんて、初めて知ったよ」
「そ、それは……。ごにょごにょ。
私は、この世界のことをいろいろ見てきたからですよ」
アノミーはいきなり慌てだした。どうしたのだろう。
まずいことを聞いてしまったのだろうか。
みんくは不思議がった。
一方、みんくの横で黙っているさくりは、
アノミーを「あやしいものを見るような視線」で見続けていた。
まるで何かを探っているかのような、刑事みたいな視線。
アノミーは、みんくより、横にいるさくりを怖がるのだった。
つづく
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