第40話 GAME OVER
不思議なことに、雨は翌日も、そのまた翌日もふりつづけた。
まるで洪水のようにふりつづける。
その間、ホテルの中から出ることができない。
出ようと思えば出られるだろうが、ホテルの中のほうが
はるかに環境がいいので、みんくたちはホテルに泊まり続けた。
豪華でおいしい食事。遊びほうだいのゲーム。
ふかふかのベッド。気持ちよくなるお風呂。
宿泊代はずっと無料。
こんなすばらしい楽園から、誰も出ようとは思わなかった。
もう、みんくたちは、現世に戻ることはできないだろう……。
―――――――――
GAME OVER
―――――――――
という文字が、画面に表示されていた。
みんくはゲームで負けたせいで「GAME OVER」という屈辱を味わっていた。
「あーもう。またゲームオーバーだよ」
ベッドに寝転がりながら、みんくは、ゲームの結果を見て、不満げな顔になった。
ゲームの難易度が上がったのか、なかなかゲームクリアができない。
ゲームをやめて、ふてくされる。
みんくは、ベッドからはみ出た、細くて小さな脚をばたばたと動かす。
「なんか食べようっと」
みんくはホテルの部屋から出て、食事をしに向かう。
もう昼食時間はとっくにすぎている。
部屋の心地がよすぎて、ここ最近は、
食事をしに外に出ることすらめんどくさくなってきた。
そのため、朝食や昼食をとらなかったり、遅くとったりすることもしょっちゅう。
ゲームしながら夜食することも増えてきた。
ジュースもケーキも飲み食い放題だ。あまーい生活。
しかし、さいきん体の調子が悪い気がする。
みんくは毎日だるくてだるくて仕方ない。
こんな生活を送っていたら当然かもしれない。
だがホテルの外の雨がずっと止まないのだから仕方がない。
そう言い訳して、みんくは楽園生活を送っていた。
そんなとき、アノミーが、みんくに注意をしてくる。
「みんくさん! 傘をつかってでも、このホテルから出ましょう。
おかしいですよ。こんなに毎日毎日、雨がふるなんて」
「えー。でもー。雨がふってるしぃ、うさぎ支配人さんもぉ、
ずっと泊まっていっていいって言ってるしぃ、
楽しいしぃ、えへへ、うへへ」
みんくは、ぐるぐるした狂気の目で、こたえる。
まるで酔っぱらいだ。
みんくのあまりのでたらめな受け答えに、
「これはもうだめかもしれない」とアノミーは直感した。
「このままではみんくさんも、
私たちもだめになります。
『奥の手』を使うしか、ないですね……」
アノミーはひとりごとのようにつぶやくと、
ある「奥の手」を使うことを決意した。
つづく
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