第39話 雨の壁

朝がきた。


ホテルのベッドから目ざめたみんくたちは。

窓をあけて朝日を浴び――れなかった。


「うわぁ、すごい雨……」


みんくは嫌そうな顔をした。

外は、槍のような雨がふりそそいでいる。

窓の外が見えないレベルで、ふりそそいでいる。


太陽はおろか、建物も山も空も見えない。


「こんな雨じゃ、しばらく外には出られませんね。

 ふああっ……」


眠い目をこすりながら、アノミーが言う。

昨日夜おそくまでゲームしていたせいで、少し寝不足だ。

ちなみに、さくりはまだぐっすり寝ている。

さくりもゲームで完全に寝不足になっていた。


「二度寝します。すーすー」


アノミーはそう言うとベッドに倒れこみ、寝息をかきはじめた。


「えー。ふたりとも! 起きてよ」


みんくは二人を起こそうとするが、なかなか起きない。

起きる気配もない。

ああ……もう。

みんくはあきれて、ホテルの部屋から出た。


この雨はいつ止むのだろう。

長くなりそうだ。

もし雨がふりつづければ、工場に行くこともできないだろう。


そういえばプログラミングで雨をとめることとか、できるのだろうか。


みんくはいろいろ考えたが、

雨がやむことを期待して、待ち続けた。


しかしいっこうに止む気配はない。


すると、うしろから何者かが話しかけてきた。


「おやおや、お客様。雨で出られないのですかな」


ぴょこぴょことした白くて長い耳が、みんくの視界にはいる。


うさぎ支配人だ。

この「うさぎホテル」の支配人で、

自称無人ホテルの支配人兼ロボットらしい。

とてもロボットには思えないほど自然なしゃべり方と動きをする。


「ど、どうも……」


うさぎ支配人、見た目はかわいいけれども、なんだか不気味だ。

ましてや、外は雨。余計に不気味な印象が増した。

みんくは少し距離をとる。


「ここでゆっくりしていきなされ。

 もう1日泊まってもよいのですぞい」


「え? いいんですか?」


「いいぞい。この大雨は簡単には止みませんぞ。

 ああ、お金のことはご心配なく。

 宿泊料はタダですじゃ」


「ただ!?」


「あなたがたは特別なお客様……。

 お金は1円だけしかいりませんぞい」


「あ、ありがとう」


みんくはとまどう。

こんなによくしてくれて、いいのだろうか。


「食べ物もゲームもここにはいっぱいあります。

 ぜひ休んでいってくだされ。心ゆくまで……」


うさぎ支配人は優しい声で、みんくに言った。

じっさい、そのとおりだった。


朝も昼もおいしい食事が出て、お腹いっぱいになるまで食べて、

そして新作ゲームもやり放題だった。


しだいに、みんくは、うさぎ支配人があやしいことも忘れ、

この「楽園」に取り込まれていった。



つづく

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