第38話 ホテルの夜
夕食の時間になった。
うさぎ支配人がやってきて、
「夕食がたべたい? ふっふっふ……。
何を言っているんだい?
きみたちが夕食だよ! この私のね!」
みたいに襲われるとおもったが、そんなことはなかった。
普通においしそうな食事がでてきて、じっさい、とてもおいしかった。
みんくたちは、料理の豪華さ、おいしさにとても満足した。
食べ物に毒や睡眠薬が入っている様子もなく、
みんくたちは、ふつうに完食するのだった。
「おかわり!」
「みんく。たべすぎ」
「おいしいんだもの」
「まったく……太るよ」
「ふ、太るのは嫌!」
「体重をプログラミングで減らせばいいんじゃない?
自分の体をタッチして、体重の数字を減らせばOKさ」
「一時的でも太るのは嫌!
あ、でもおいしそうな食べ物がまだこんなにいっぱい……」
なお、みんくとさくりのこのやりとりは、食事中に何度もくりかえされた。
結局、かなり満腹になったみんくは、部屋にもどるなり、そのままベッドで寝てしまった。
さくりとアノミーは腹八分でおさめているため、
とくに眠くもなんともなかったが、他にやることもなく暇を持て余していた。
「ひまですね」
「そうだね……。
あっ、あれは……」
さくりは何かに気づいた様子だ。
部屋の片隅に置いてあったものそれは……。
「ゲーム機だ。手に入りにくくて価格が高騰してるあのゲーム機……。
すごい。こんなところにあるなんて」
「ゲームがお好きなのですか?」
「それなりにね。みんくほどじゃないけど」
「みんくさんはゲームが大好きみたいですね」
「さいきんそのせいで成績が落ちたみたいで
母親に禁止されたってきいた」
「まあ、そうなるでしょうね」
アノミーは、ぐーすかと寝ているみんくの顔を、ちらりと見た。
「特にやることもないし、一緒にやる?」
さくりは、ゲーム機を起動させた。
アノミーはあまりゲームをしたことはない。
どうしようかと戸惑った。
「……やらない?」
しばらくアノミーが無言でいると、さくりはそう問いかけてくる。
なんだかさみしそうな表情だった。
「アノミーちゃんのことあまり知らないから
仲良くしたいと思ってね」
「私、あまりゲームはしたことはありません」
「たのしいよ」
「本当ですか?」
「やってみればわかるよ、ほら」
ゲームのコントローラを手渡される。おずおずと受け取る。
「どうやるんですか?」
「ここをこうして、あれを動かせばいいんだよ」
「こう……ですか?」
「そうそう上手だね」
「なんだか楽しくなってきたかもしれません」
さくりにほめられ、みんくはうれしそうな顔になった。
このあと、ふたりは深夜までゲームをプレイし続けた。
(※よいこのみんなはゲームを夜おそくまでやってはいけません)
こうして、うさぎホテルの夜はふけていった。
明日、たいへんなことが起きることも知らず、みんくたちはゆっくり休んでいるのだった……。
つづく
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