第37話 作戦会議

一日のつかれをいやすため、みんくたちはお風呂にはいった。


このホテルの最上階には大浴場があり、部屋では楽しめない、

とっても大きなお風呂につかることができる。


しかも、みんくたち3人以外には誰もいないので、広くて広くてしかたない。

まるで体育館に3人しかいないかのようだ。


「うわーひろいねー」

「ゆっくりできそうだ」


ひととおり洗って、大きな浴槽につかると、3人は一か所に集まり、

会話がはじまった。


「このホテル、あやしいわりには、あんまりトラブルも起きないですね」


「あやしい?」


「うさぎ支配人が見るからにあやしいですし、

 1円で泊まれるのもありえません。あきらかに何かがおかしいです」


「そうだね……。でも何もおきてないし、思い過ごしかも?」


「それはそうかもしれませんが……納得しかねるところですね」


「そんなことより、明日どうするか考えてみようよ。

 ほら、工場に乗りこむんでしょ」


「ああ、そうでしたね……ここから工場はけっこう遠いんです」


「また歩くの!?」


「バスを使えば早めにたどりつけるのですが、

 この世界のことですから、バスの中がバグだらけで

 あぶないかもしれません」


「ふえぇ、もう歩きたくないよ。でもバスもやばそう。

 さくり、なんとかして!」


みんくは、隣にいるさくりに無茶ぶりした。


「みんく。ボクの頭をもってしてもバグにはかなわないよ」


「あっさり折れた!?」


「まあ、リスク承知でバスに乗っていくしかないですね」


「がーん!」


楽な方法はなさそうだ。

みんくは絶望して思わず、お風呂の中に頭からもぐってしまう。

まるで潜水艦のように。

ぶくぶくぶくぶく……。みんくの出した泡がはじけていく。


「みんく。 そんなに気を落とすな。

 バスが混雑してきたら乗客を強制転送魔法でとばすから!

 運転手もふくめて」


「運転手とばしちゃまずいですよ!?」


アノミーがツッコミをいれる。


そのまえに、乗客を魔法で飛ばすのもまずい気がする。

みんくはお風呂の中でそう突っ込んだ。


「それにしても、ここの風呂は落ち着く。

 家の風呂よりいいかもしれない。

 香りもいいしなんだか気持ちいい」


さくりは風呂のことをほめだした。


風呂に入る前は、うさぎ支配人が妙なしかけをしてないか疑っていたが、

あやしいものもなく安心しきっていた。


「罠があると思ってましたが……どうやらそうでもないみたいですね」


アノミーも警戒心を解いたようだ。


「風呂はいったあとは……そろそろお腹が空いてきた。

 食事にしようかなぁ。このホテル、どこで夕食をとるんだろう」


「あとで、あのうさぎ支配人にきいてみましょう」


「そうしようか。

 あと、みんく。そろそろ出てきたらどう?」


みんくは、あいかわらず、お風呂で潜水艦ごっこをしている。

ぶくぶくぶくぶく。


「みんく、いきてるか?」


風呂の水面から、いいね!マークみたいな手がでてくる。

いちおう生きているようだ。

そして巣のなかの雛鳥のように、ひょっこり頭を出す。


「わたしもお腹すいたかも。風呂おわり」


「……食い気のつよい子だ」


さくりは、みんくの顔を見て、あきれるのだった。

さて、このホテルでは、どんな夕食が出るんだろう。

少女たちは心をはずませた。



つづく

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