第36話 私の部屋に盗聴器なんてあるわけない

みんくたちはホテルに宿泊することになった。


「わぁ~! ふかふかベッドだ!」


みんくは、部屋に入るやいなや、すぐに真っ白なベッドに飛びこんだ。

移動ばかりで疲れていたみんくにとって、ふかふかベッドは、楽園のような心地だった。


そんなみんくをよそに、さくりとアノミーは、部屋に「変なもの」が仕掛けられていないか、あらゆる場所をさがしまくった。


ベッドの下。

テレビの裏。

エアコンの口。

ポットの中身。

引き出しの中。


ありとあらゆる裏面や隙間すきまを捜索した。


が、とくに不審なものは見つからない。

いたってふつうのホテルの部屋だった。


「とくに変なものは……置いてないね」


「私のほうも、何も見つかりませんでした」


部屋には何も変なものはない。

ということは、あと怪しそうな部分は、

通路やエレベータ、風呂場あたりになるだろうか。


だけども、そこまでする体力は、残っていなかった。

きょうはいろいろありすぎた。


犬ににらまれ、マネキンにおそわれ、

コイに飲みこまれ、駅ダンジョンで迷い、

改札機と券売機におそわれ、満員電車につぶされかけて。

最後に、長時間の電車旅。


これだけのことが起きて疲れないのなら、それは超人だろう。

みんな、つかれてぐったり。目が重い。眠い。


「罠があると知っていても休むしかない。

 こんなにつらいことはない。

 ボクは悔しい。このボクが敵の罠をあばけないなんて……」


さくりはがっくりとうなだれる。


「私もです。あのうさぎ支配人、目が笑ってなかったです。

 ぜったい、あやしい。でも疲れてしまいました……。

 今は休むことしかできません」


アノミーも、目のハイライトが消えて、なんだか元気なさそうだ。


そんなふたりの様子を見て、みんくはある提案をする。


「とりあえずお風呂にしよっか」


みんくの言葉に、さくりとアノミーは耳をうたがう。

たしかにもう風呂の時間だけど、いきなりその言葉が出るとは思わなかった。


「まさか3人で一緒に入るとか言わないよね」


さくりがつっこんでくる。


「一緒に入るよ」


「あのさぁ……恥ずかしくないの。

 というか、ここの風呂場じゃ絶対せまいし」


「最上階に大浴場があるらしいよ」


「そんな都合のよい施設があるの?」


「あるんだって。そこで作戦会議しようよ。

 明日、敵の本拠地に乗り込むんでしょ」


「それはそうだけど」


さくりとアノミーは、別にお風呂を一緒にするつもりはなかったが、

なんとなく、みんくに押し切られてしまい、一緒に入ることになった……。



つづく

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