第33話 幼馴染の合流
みんくは、満員電車に押しつぶされそうになっていた。
みんくは小学生であり体格も小さいので、簡単に
両手でつよくしぼられる
ぎゅうぎゅう詰めになり、空気を吸う
助けての声をだすこともできない。
死ぬかも。
みんくは死を覚悟した。
そのとき、かすかに、とおくで、ききおぼえのある声がしたような気がした。
「きえなさい」
その声と同時に、目の前にいた大勢の人間が、一瞬でどこかに消えていった。
まるで煙のように。
そして、それを皮切りに、突然、乗客が次々と消えていく。
やがて乗客たちは完全にいなくなっていた。
みんくとアノミーと、もうひとり以外は。
その「もうひとり」は、みんくのよく知ってる子だった。
みんくは思わず「あっ!」と声をあげる。
「さくり!? いつのまに!」
「待たせたね、みんく。それとアノミー」
そこにいたのは、茜さくり。
みんくの
いつも魔女みたいな恰好をしていて、
この世界では強制転送魔法が使えるようだった。
(元の現実の世界ではそんな魔法は使えない)
「ありがとう、さくり!」
みんくは、さくりにギュッと抱きついた。
うれしくなって感謝の気持ちから抱きついたのだが、
恥ずかしかったのか、さくりは頬を赤らめた。
「こら。だきつかないで、はなれなさい……」
さくりは恥ずかしそうに、みんくを引きはなす。
「さくりさん。私からも感謝します」
アノミーはかしこまった様子だ。
アノミーはアノミーで、満員電車でつぶれかかっていたので、
さくりには心の底から感謝していた。
みんくみたいに抱きつくことはしないけど。
「ふふふ。ボクが来てなかったら、ふたりともつぶれてたね」
さくりは誇らしげに言う。
つぶれなくてよかった。みんくはそう思った。
「ところで、これから……遠久野駅にいくんだろう?」
そうだった。みんくは思い出した。
これから、遠久野駅にいって、そこでおりて、工場に潜入する予定だった。
そこの工場では、不審に動くマネキンを作って、
この世界をあぶないものにしている。
「そうだったね。遠久野駅でおりるよ。
そこに、目的の工場があるからね」
「遠久野駅は、ほんとうに遠いから……。
到着するころには夕方になってるかも」
「ええー!? そんなに遠いの!?」
「うん。みんく。まさか知らなかったの?」
「がーん!」
みんくはショックを受けて、これから何時間も電車に揺られるのだった。
つづく
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