第30話 改札に襲われる
突然、通路の奥からガタンガタンと物音がした。
鉄と鉄がぶつかりあうような音。
びくっとして、みんくとアノミーは物音の方向に振り向く。
ガタン! ゴトゴト! ガタン!
音はだんだんと激しくなり、こちらへ近づいてくる。
なにかくる!
みんくとアノミーは身がまえる。
おだやかな状況でないことはたしかだ。
やがて通路の奥から、何者かがあらわれる。
「え!? なにあれ!」
みんくは思わず声をあげてしまった。
大きなロボットのような何者かが、2台。
音をあげながら、少しずつこちらに近づいてくる。
「友好的とはいいがたい雰囲気ですね。逃げましょう!」
アノミーは、みんくの手をひっぱり、逃げだす。
みんくも、アノミーに連れられて逃げていく。
めちゃくちゃ逃げまくる。走る。走る。走る。
曲がりかどを何度か曲がったあと、ようやく物音は聞こえなくなった。
もう追いかけてこないだろう。
みんくとアノミーはへろへろと座りこむ。走って逃げ、とても疲れていた。
「なにあれ? 機械みたいなのが足はえて動いてた……」
「あれは、ぱっと見、改札機と自動券売機ですね」
「ええっ!? どういうことなの」
「バグだと思います。ふつう、改札機と券売機は動きません。
駅の迷路化バグの影響で、改札機も券売機もまきこまれたのでしょう」
「うそでしょ。バグりすぎでしょ」
「こういう世界ですから、仕方ないですね」
「あんなのに追われながら、改札機を探し出すなんて無理だよ……」
みんくは弱気になり始めていた。
迷路と化した駅を長時間あるき、改札機や券売機に襲われ、走って逃げ回ったのだ。帰れるかどうかもわからない。
こんなアクション映画ばりに激しい生活になるなんて、みんくも思わなかっただろう。
「こうなったら逆転の発想を行うのです」
「逆転?」
「あの動く改札機と券売機のバグを修正することによって、
本物の改札機と券売機を手に入れるのです」
「あんな動いてるし怖いのに、タッチなんて難しいよ」
タッチしないとプログラミング用の画面があらわれないのである。
この世界はそういう仕様のため、動くものをタッチするのが難しい。
「必ずスキができるはずです。まずは相手の弱みを分析するのです」
「ぶんせき?」
「みんくさんは、理科の授業で『観察』って聞いたことあります?」
「うん」
「観察の対象をしっかり見ることで、対象がどういう動きをして、
それをつかんで、どう対処するかわかります。
まずは気づかれないようにしっかり観察しましょう」
「うん……」
自信なさそうに返事するみんく。
アノミーはあくまで冷静だ。
さて、アノミーの考えた「観察」はどこまで通用するのだろうか。
つづく
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