第29話 ダンジョンと化した駅
改札へは、たどりつけそうにもない。
駅に入ってから何分も歩いているけど、改札が見えてこない。
通路を右へ曲がり、左へ曲がる。これを何度くりかえしただろうか。
もはやかぞえきれないほど、くりかえした。
それに、さっきから同じ風景ばかり続く。
無機質なブロック壁。無機質な硬い床。
黒々とした天井。人工的なライトの灯り。
風景がずっと同じだと、進んでいるのか戻っているのかもよくわからない。
本当に改札まで続いている道なのだろうか……。
改札やホームへ案内するための「矢印」も「目印」もない。
もしかして
みんくとアノミーはだんだん不安になってくる。
「ねぇ、アノミー。この駅どんなに歩いても改札が見えてこないよ……」
「そうですね……。あきらかにおかしいですね。
地方都市の駅にしては広すぎる気がします。
無意味に複雑で、あっちに行ったり、こっちに行ったり。
道が分かれている必要性もないですね」
「それって、迷路みたいになってるってこと?」
「おそらくはそうです」
「えぇー!? 困ったなぁ……これもバグなの?」
「バグだと思います」
駅が「迷路」となってしまうバグ。
こんなのどうやって修正すればいいのだろう。
みんくは、しばらく考える。
「まずドアを作ってみよう。その先に改札とか作ってみるよ」
みんくは、プログラミングをして、駅の壁にドアを作ってみる。
「ここをこうして……ごそごそ。
よし、ドア完成! 開けるよ」
ドアを開ける。が、そこに改札はない。
「あれぇ? 壁しかないよ」
ドアの中は、ただの壁があるだけだ。
みんくの希望はうちくだかれた。
「ドアを作る場合、その先に部屋とか通路とか、
なにかしらの空間がないとダメみたいですね」
「そんな……がっくり」
みんくはがっかりして肩をおとした。
「ドアではなくて、そのまま改札とかを作ったほうがいいかもしれませんね」
「そうなの?」
「はい」
「改札は、駅のホームに続いているので、改札を作れば、
電車に乗ることもできるでしょう。
あとついでに、自動券売機も作ったほうがいいですね。
切符かわないと通れないので」
「それはいいんだけど……」
「どうかしましたか?」
「わたし、あまり駅に来ないから、改札とか自動けんばいき?
とか、あんまりイメージしづらくて作れないかも」
「みんくさんは駅をあまり使わないんですね」
「アノミー。教えてよ。改札とか自動券売機とか……」
「そ、それは……うーん」
教えてと言われても、なかなか説明が難しい。
アノミーは返答にとまどった。
絵を描けるようなノートもなく、イメージを伝えづらい。
今ここに、改札とか自動券売機が存在していたら。
アノミーはそう願ったが、もしそれらがあれば今ごろ困っていない。
とはいえ、ここで止まっているわけにはいかない。
アノミーは目を閉じ、策をいろいろ考えようとした。
だが、アノミーの考える時間をさえぎるかのように、トラブルが発生するのだった。
つづく
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