第27話 人おおすぎ
みんくたちは、危険なマネキンを製造している工場を止めるため、
まず電車で移動する必要があった。
そのため、公園から駅に移動しなければならない。
そんなとき、さくりから「待った」がかかった。
「ねぇ、みんく。ボク、一度、家に帰りたいんだけど。
さっき大きなコイに飲まれたせいで、
唾液だか胃液だかで、ベトベトしてて気持ち悪いから。
着替えないと……」
さくりの服装は、液体のようなものでベトベトしていた。
たしかにこのままでは気持ち悪いだろうと、みんくは思った。
「そうだね……。一度おうちに戻ったほうがいいね」
「あとで追いつくからさ、先に行っててよ」
「わかった」
公園前で、さくりと別れ、ふたたび、みんくとアノミーの二人だけになる。
「駅の方向は……あっちだね」
みんくは、駅の方向へ歩き出す。アノミーもうしろからついてくる。
道中、特に不審物に会うこともなく、安全に駅にたどりついた。
あとは、駅から電車に乗るだけ、だったのだが……。
「人おおすぎ!?」
みんくは、駅の出入口を見て、口をあんぐりと開けたまま、黙ってしまった。
ざわざわ、ざわざわ。
駅の出入口はおろか、その周辺にまで、多くの人が駅を目指して歩き、
出入口は、詰まった水道口のように、人が動かない状態になっていた。
つまり……みんくたちは、駅の中に入れそうにもない。
「うげー。駅の出入口、あんなに人が詰まってる。
この混雑が、すぐに解消されそうにもない。
これじゃ、駅の中に入れないよ……」
みんくは、げんなりとした目で、駅の出入口を見続ける。
「これは、この世界のバグかもしれませんね」
「そうなの? わたし、駅にあまり行かないから、
いつもこんなに人が多いのかなって思ったよ」
「朝の通勤時間帯はとっくに過ぎてるのに、
こんなに乗客が多いのはおかしいですね。
それに、乗客の服装をみるかぎり、仕事に出かけるような感じの人は
多くはありません」
「言われてみれば……。みんな、服装も年齢もバラバラに見えるね」
なんかみんな服装はバラバラだ。年齢もバラバラ。
こんなにバラバラな人たちが一斉にどこに向かうというのだろう。
たしかに「おかしい」とみんくは思い始めた。
「アノミーちゃんの言うとおり、バグかもしれない。
わたし、このバグを解消したい……。
でもどうやるんだろう? あんな大勢の人間を動かせるの?」
「動かせると思いますよ」
「うーん……」
とは言っても、どうやって動かすのか?
という方針が見えてこなかった。
とりあえず、そこらへんにいる乗客を捕まえて、動かせるのか、
試してみよう。
みんくは、目の前で駅に入ろうとしてウロウロしてる、ひとりの乗客の背中をタッチした。気づかれないように、そっと。
つづく
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