第25話 飲み込まれる少女
さくりが橋の中央までさしかかったとき、
突然、川から大きな水音が聞こえ、噴水のように水しぶきがあがった。
水しぶきと同時に、川の中から、大きなコイが飛び出してきた。
焼き魚にすると50人分のお腹を満たすくらいはありそうな巨大さだった。
大きなコイは、大きな口をあけて、そして――
橋の上の、さくりを、飲み込んだ。
どばーん!
大きな水音をたて、そのままコイは水の中に消えていった。
さっきまで、橋の上に立っていたさくりの姿は、かけらもない。
完全に、大きなコイの腹の中に入ってしまった。
「へ? え? は……?」
みんくも、アノミーも、しばらく声が出なかった。
「ど、ど、どうしよう、さささくりがの飲み込まれちゃった。
け、警察に……電話、電話をっ」
「みんくさん、携帯電話、持ってましたっけ?」
「もってない……よ」
携帯電話は、親の方針で中学生になるまでは持たせてもらえない。
「それに、大きなコイに飲み込まれたなんて、警察は信じてくれないですよ」
「言われてみれば……そうかも」
「それはともかく、あんな大きなコイが泳いでるなんて思いませんでした。
だから『この橋わたるべからず』だったんですね。
さくりさんは、このことを身をもって教えてくれました」
「冷静に分析してる場合じゃないでしょ。
ああ、なんとか、さくりを救い出さないと」
みんくは頭をかかえた。
このままでは川も渡れないし、さくりも救えない。
どうすれば、どうすれば……と。
一分弱なやんだあと、みんくは、ある方法を思いつく。
みんくは川をじっと見る。
川には、みんくの真剣な表情がうつっていた。
「よし。プログラミングで……なんとかしてみせる」
みんくは、その方法を実践することにした。
「橋のプログラムをいじるのですか?」
「ちがうよ。橋のプログラムじゃなくて……」
みんくは、橋から少しずれて、川のほうに手をかざした。
「
できたてのすまし汁のような、透明な水の中に、ちいさな指をすっと入れる。
指先に、ひんやりとした水の感触がつたわってきた。
空中に画面が現れる。
川のプログラムだ。
「川のプログラムを……どうするのですか」
「見ればわかるよ。見てて」
みんくの頭の中では、川のプログラムをどう修正するかについて、
その結果がすでに出来上がっていた。
つづく
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