第24話 この橋わたるべからず

公園を歩き続けて10分以上たつ。

みんくの予想に反して、公園内でおかしな現象にあうことはなく、

無事に公園の奥のほうへと進むことができた。


「ほら、なんにもなかっただろう。無事に公園の奥のほうまでたどりつけた」


さくりは誇らしげに話す。


「そうだね……」


みんくは心配が外れてほっとしたが、

せっかく心配したのに、なにも起きないなんて……と思う気持ちもあり、

すこし複雑だった。


「あ、みなさん。あれを見てください。案内板です。

 あそこに、駅までの道のりが書いてあるにちがいありません」


アノミーは案内板を発見した。


「たしかに。あそこに案内板が……でも」


みんくは、突然、表情をくもらせた。

いやなものを見てしまったかのように、青ざめた。


「でも? どうしたんですか」


「あの橋を渡らないと、案内板の前にたどりつけないんだよね」


「ああ、たしかに、橋がありますね」


公園の奥には、川が流れていて、橋を渡ると、小さな島がある。

川自体は、昔から流れている自然の川を、公園用に整備したものらしい。

小島だけは人工的に作ったのだそうだ。


その小島のうえに、案内板らしきものが見える。


さて、小島にたどりつくには、橋を渡らねばならないのだが……。


「ほら、アノミー。この看板見てくれる?

 『この橋わたるべからず』って書いてあるんだけど」


「たしかに書いてありますね」


「わたるべからずって、『わたっちゃダメ』ってことでしょ」


「そうです」


「でも渡らないと、案内板よめないよ」


「橋が渡れないなら、泳ぎましょう」


「えっ……やだ」


「冗談ですよ」


アノミーは真顔だ。アノミーの顔の表情がとぼしいせいか、

たまに冗談なのか本気なのかよくわからないことを言う。


川は冷たくて深さもよくわからない。水着もない。

どのみち泳ぐことはできないなと、みんくは思った。


「困ったなぁ……」


みんくが途方に暮れていると、さくりが横やりを入れてくる。


「『はしを渡ってはいけない』つまり『真ん中を渡るのはいい』ということだよ。

 むかしの童話にそういう話があったよね」


「うん、たしかにそれはそうだけど、

 今回の場合は『この橋わたるべからず』って『はし』が『橋』になってるよ。

 真ん中を渡っても、まずいんじゃないかな」


「誤変換だろう。パソコンで字を書いていると、そういうこともある。

 ボクが渡ってみるよ。みんくはうしろで見てて」


「あ、ちょっと! さくり……! 待って。

 この橋のプログラムをまずは確認してみようよ。

 すぐ壊れる橋かもしれないし」


みんくは、橋の手すりをタッチした。

橋のプログラムが画面上に表示される。


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■橋 プログラム


橋とは

 →水上や道路上や谷間に設置される。

 →橋の上は歩くことができる。

 →木や鉄や石で作られる。

 →頑丈で、何年たっても壊れない。


「橋 プログラム」を、「みんくの近所の公園内の橋」に適用する。

「みんくの近所の公園内の橋」を以降「小川公園の橋A」と呼称する。


■小川公園の橋A

色:茶色

長さ:3m

幅:1.5m

位置:公園の最奥に位置する。小川の上。

強度:あと10年は壊れない

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「強度:あと10年は壊れない」という文字を見て、

みんくは、「あれ?」を首をかしげた。

壊れかかっているようには見えない。

じゃあ、なんで「この橋わたるべからず」なのだろう。


「橋の強度だいじょうぶそうだね。

 じゃあ、ボクが先に渡ってみるよ」


さくりは、怖がる様子もなく、橋をスタスタと渡りだす。

みんくとアノミーは、どきどきした気持ちで、さくりの様子をうかがう。

そして、さくりが、橋の中央までさしかかったとき、

たいへんなことが起きるのだった。



つづく

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