第18話 地獄の番犬
隣の家の門まできた。
さて、隣の家には、どのようなバグがひそんでいるのか。
無事に、幼馴染には会えるのか。
みんくは、心に不安をいだきながらも、足を進める。
「ここが、みんくさんの幼馴染さんの住む家ですか」
横に立っているアノミーがそう話しかけてくる。
「うん。見た目は、元の世界とあまり変わってないように見えるけど……」
「警戒しながらいきましょう」
みんくとアノミーは、一歩を踏みだす。
「!?」
さっそく立ち止まる。やばいものを見つけてしまった。
これは、これはいったい……。
みんくとアノミーは、もうこれ以上進むことはできなかった。
「ガルル……」
犬!?
わりと大きめの犬だ。なんかこっちを警戒している。
犬のするどい牙から、ヨダレがつたって落ちる。
「なんですか、あの犬さんは!?」
「し、知らないよ。元の世界では、あんな犬は飼ってなかった」
幼馴染は、あんな大きな犬は飼っていなかった。
みんくは、予想外の展開にとまどう。
「みんくさんも見おぼえのない犬……ですか。
この世界のバグなのかもしれませんね。
修正しましょう」
「修正って……どう修正するの」
「消すんです」
怖いことを言い出してきた。
「かわいそうだから、消すのはやめようよ……。
おとなしくしてもらうとか」
そうは言っても、どのようにおとなしくしてもらうのか、
みんくには見当もつかなかった。
どうしよう?
しかも、よく考えたら、プログラムを修正するには、
相手をタッチする必要がある。
つまり、犬にタッチする必要があるのだけど……。
あんな興奮してる犬に近づくのは、どう見ても危険だ。
おそらく、犬に近づかずに、別の方法をとるしかないのだろう。
みんくはそう考えた。そして、ある方法をひらめいた。
「アノミーちゃん。わたし、いい方法を思いついた」
「いい方法?」
「まず、この家の裏に回るの」
「はい」
みんくとアノミーは、幼馴染家の裏手のほうに回った。
そこには、ただ、ながーいブロック塀があるだけだ。
出入口なんてない。どこからも入れない。犬のいる正門を除いては。
「ブロック塀しかないようですが」
「ふふふ」
「あっ。まさか……」
「まずブロック塀をタッチします」
ブロック塀をタッチすると、画面が空中に表示された。
ねらいどおりだ。
みんくは、笑みを浮かべ、プログラミングを始める。
-------------------------------
■ドア プログラム
ドアとは
→開けた場合、出入りができる。
→閉めた場合、出入りができなくなる。
「ドア プログラム」を、「隣の幼馴染の家のブロック塀になぜか設置されたドア」に適用する。
■隣の幼馴染の家のブロック塀になぜか設置されたドア
色:茶色
大きさ:たて200cm、よこ75cm
位置:隣の幼馴染の家の裏手のブロック塀の真ん中あたり
-------------------------------
こんな感じでプログラミングした結果、ブロック塀にドアが設置された。
「正門には犬がいるから、裏のほうにドアを作っちゃった」
「さすがですね」
「えへへ」
「じゃあ、ドアあけるよ」
ブロック塀のなかに不自然に設置されたドアを、ぎいぃと開く。
そこには、勝手口の扉があり、そこから入れそうな雰囲気がしていた。
「ほら、ここから入れそうだよ」
「そうですね、入りましょう」
「あの……いまさら言うのもなんだけど、
これ、不法侵入のような気がする……」
みんくは、今から勝手に、なんの連絡もなく
幼馴染の家に入ることに、いまさら罪悪感をおぼえた。
そういえば、事前に電話連絡でもすればよかった。
と後悔するのだった。
「電話してみますか?」
「いいよ、このさい、もう入ってしまおう」
みんくが勝手口の扉を開けようとしたそのとき、
二階のほうから声がした。
「あの地獄の番犬ケルベロスを突破するとは……。
さすが、ボクの幼馴染だね」
その声は……!
みんくは、二階のほうを見上げた。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます