第17話 となりの幼馴染さん

みんくは別世界に来て、はじめての朝をむかえた。


特にかわりない、いつもの朝。

お母さんが起こしに来てくれないこと以外は。

あと、はじめて会った少女(アノミー)が横で寝ていること以外は。


そういえば、この世界どうやらお母さんがいないっぽい。


みんくは、あらためて「やばいな、この世界」と思うようになった。

だんだん不安になってきた。元の世界にはもどれるのだろうか?


アノミーに聞いてしまおうか。「どうやったら元の世界にもどれるのか」と。

でも、もどったらもどったで、宿題とテストに追われると考えると、

少しためらってしまうのだった。


この世界もバグだらけでおそろしいことには、変わりないのだけど……。


とりあえず昨日いわれたことをやりにいこう。

みんくは頭の中で、昨日アノミーと話したことを思い出した。


「隣の家のバグを直しにいきましょう」


隣の家には、幼馴染おさななじみが住んでいる。

学校で毎日みかけてたけど、この世界に来てからは、まだ一度も会っていない。


この世界にはバグが多いらしいけど、幼馴染とその家は、

どんなかんじでバグっているのだろうか。


わたしのことを、忘れていたりしないだろうか。

それどころか、くるって、襲ってきたりして。

みんくは、今さらながら、不安を感じ始めていた。


「なんだかこわくなってきた……。アノミーたすけて」


不安になったみんくは、横で寝ている小さなアノミーちゃんを、

ぬいぐるみのように抱きしめる。

アノミーちゃんの体内に衝撃が走る。


「ぐえ」


みんくの抱きしめパワーがすごかったのか、

アノミーはヘビにしめつけられるかのような気分で朝をむかえるのだった。


「あ、ごめん。起こしちゃった?」


「いきなり強く抱きしめられたからですよ……」


「ごめんごめん。ちょっと変なことを考えちゃって」


「変なこと?」


「隣の家が、ひどいバグを起こしてたら、と思うと怖くなっちゃって」


「この家の近所のバグは、そこまでひどいものではないですよ。

 せいぜい、部屋のドアが無かったり、

 オムライスとサラダの味が逆になってたり、その程度のレベルです」


「それ、だいぶひどいバグだと思うんだけど……?」


「ところで、みんくさんの隣の幼馴染さんは、どんな人なのですか」


「ちょっと変わった子なの。

 いつも魔女みたいな恰好をしてて、お化けとか妖怪とかが見えるらしくて、

 毎日クスリ(※ラムネ菓子)を摂取してて……。

 自分のSNSアカウントに『幽霊を退治した』とか書いてあったりして。

 話してるとおもしろいんだけどね」


「……みんくさん。言いにくいのですが、

 通常の時点で、すでにバグを起こしている気がしますね。

 その幼馴染さん」


言われてみるとそうかも……。

みんくは、妙に納得するのだった。



つづく

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