第16話 明日どうする?会議

「お風呂は普通だねー。どこもバグなんか出てない」


ちゃぷちゃぷと湯船につかりながら、みんくは言った。


実際、お風呂に入ったところで、特に変な出来事が起こるわけでもなく、

いままでどおりの、普通のお風呂だった


「お風呂のプログラムは正常のようですね。

 冷たい水しか出てこないバグとかあったら、みんくさんは

 とっても困っていたと思います」


アノミーは、みんくに向かいあう形で、湯船につかっていた。

そんなに大きくはない湯船ではあるが、ふたりとも、体は小さいので

不自由ない広さだった。おたがい足を伸ばせるほどに。


「あはは、そりゃそうだよ……。

 冷たい水しか出てこないお風呂だったら、きゃあ!と叫んでたかも。

 寒くて、プログラムを直すどころではなかったと思うよ?」


「逆に、熱湯でも困ってたと思います」


「熱湯はいやだなぁ……。ヤケドするし」


「あの……お風呂には何分いるのですか?

 こうやってずっと座ってると、ヒマです」


「さあ……時間かぞえたことないなぁ。

 たぶん30分くらいじゃないかな?」


「さ、30分……。

 じゃあここでお話しましょう。明日のことについて」


「明日のこと?」


「この世界を作りなおすためには、バグを修正しないといけません。

 まずはご近所から直していくことになります」


「近所……お隣の家とか?」


「そうです。

 あとは、学校とか、公園とか、スーパーとか。

 まずは、身近なところから、バグを直していき、

 そこから、じょじょに広げていくのです」


「ふーん……わたしにできるかな?

 お隣の家のバグを修正するならともかく、

 遠い場所までとなると……不安だな」


「私がサポートしますよ」


「え? アノミーちゃんが? 助かるよ」


「はい。

 今はいえませんが……秘策があります。

 みんくさんのプログラミングの腕が上がれば、

 その秘策は、もっとやりやすくなります」


「そうなんだ」


「みんくさんは、まだまだレベルアップが必要です。

 私の情報によると、近所のバグは、それほど大したものではなさそうです。

 まずはそれらのバグを直して、少しずつ経験をつんでいきましょう」


みんくは「まるでゲームのスタート地点の弱い敵を倒すみたいな話だなぁ」

と思い、心の中で小さな笑みをうかべた。



つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る