第15話 作りなおします
ケーキを食べて満足したみんくは、アノミーにある質問をした。
「ねぇ、アノミー。
どうしてこの世界を、わたしに作りなおしてほしいのかな?」
「それは……」
アノミーは少し口をつぐんだ。なにかを考えている様子だ。
数秒たって、ようやく答えを話しはじめる。
「それは……今すべてを話すことはできません。
でも、ひとつだけ言えることは、
この世界を作りなおせば、まどかさんにとって、いいことがあります」
いいことがある? どういうこと?
みんくには、いまいち、ピンとこなかった。
みんくは、納得ができず、アノミーにふたたび質問をぶつける。
「いいこと? よくわからないんだけど……?」
「……この世界にいるかぎり、まどかさんは、
プログラミングで、ケーキを作り放題・食べ放題です」
「あっ……いいことすぎる」
プログラミングで、ケーキを作り放題・食べ放題。
その言葉に、みんくは、思わずうれしくなった。
それでいいのか、みんく。
とツッコむ人は誰もいないのであった。
「ところで、アノミーちゃん。
わたしのこと『まどかさん』じゃなくて『みんくちゃん』でいいよ。
わたしの本当の名前、『まどか みんく』だし」
「あっ、そうなんですか……?
私に教えてくれた名前、『まどか』だったから、
ずっと、『まどか』さんだと思ってました」
「あれは、偽名じゃないけど、ただ苗字を教えただけだよ。
わたし、ネットで知らない人と話すときは、
『まどか』って名のってるから……。
知らない人に、あまり名前を教えちゃいけないんだよ」
「それはそうですね。
じゃあ、みんくさん」
「みんく”ちゃん”でいいってば」
「みんくちゃんさん」
みんくちゃんさん!?
かわった名前の呼び方に、みんくは、ずっこけてしまった。
どうやら、アノミーちゃんは、名前に「さん」をつけないと
気がすまないらしい。
「あーもう。じゃあ、みんく”さん”でいいよ」
「みんくさん……みんくさん」
まるで頭に記憶するかのように、アノミーは、みんくの名前を二回よむ。
「それでは、みんくさん。
私といっしょに、この世界を作りなおしていきましょう。
まずは……ご近所から」
「いっぱい食べたら、眠くなってきちゃった。
寝ていい? あ、そうだ。その前にお風呂に入らないと……」
マイペースなみんく。
まるでアノミーちゃんの話を聞いていない。
「食べてすぐ寝たら太りますよ。
みんくさんの体も、そのようにプログラミングされています。
いきなり寝たらダメです。少し体を動かしましょう」
「もう夕方だし、休もうよ。
それに、暗い夜道をあるくと危ないんだよ」
「えー……」
アノミーは不満そうな表情をするが、
みんくの言うことにしぶしぶ従うことにした。
逆に、みんくは、アノミーが世界の作りなおしを急いでいることに
不思議さを感じた。
なんでそんなに急ぐんだろう?
これから夜になるんだから、休んだほうがいいのに。
明日にすればいいじゃん。
「……わかりました。明日やりましょう。
でも、実はプログラミングで、夜という時間をなくすこともできますよ」
「プログラミングで、夜プログラムをいじれば、夜をなくせる」
と、アノミーは言いたいらしい。
みんくは、「夜がなくなること」について、少し怖さを感じたので、
その提案をこばんだ。
「夜がなくなると、それはそれで、なんか怖いし……。
やっぱ夜は休もうよ。
ところで、アノミーちゃん。お風呂には入れる? いっしょに入る?」
「え? そ、それは……」
お風呂の誘いに、アノミーはとまどう。
アノミーは人間ではないので、風呂に入るという気持ちがよくわからない。
あと、なんだか恥ずかしいという気持ちもあった。
でも、なんだか、みんくのきらきらした目を見てると、
ことわりづらい雰囲気になってしまう。
「お、おねがい……します」
アノミーは、しどろもどろな感じで答えるのだった。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます