被写体


 投げかけられた粘液の臭い

 化学室に造られたホルマリンの脳髄が

 硬く、力を込めて、

 遺される視神経へ向かって粘液を飛ばす


 優しい匂いに包まれて

 誰もが魅了される黄昏の化学室

 頑丈な棚の端には

 小さな頃の思い出が

 ホルマリンに漬け込まれた確かな形で

 遺される

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