第2話 第一章
私には姉がいた。
名前は一ノ瀬奈留。
今頃なら大学4年だろうか。
だけど4年前に姉さんと二人で巻き込まれた、あの事故で姉の存在だけが無くなった。
誰もその時の記憶を持っていなかった。
むしろ、その事故すら起こった形跡もなく誰も事故の事を知らない。
私以外誰も。
両親にさえ苦笑いされながら、私は元々一人っ子だったと言われた。
確かに美少女ゲームが大好きで可愛いと綺麗をこよなく愛していた、ちょっと変態なオタク姉さんだったけど……
仕事で何時も忙しい両親の代わりに、私の事を何時も可愛いがり構ってくれた、唯一の私の大好きな姉さんだった。
でも家族写真にも、住民票にも保険証にも姉さんの存在は欠片も無くて、姉さんが通っていた大学にも在籍記録が、みじんも無くて、まるで世界に姉さんが消されたみたいだ。
私はあの事故の日から感情が上手く出せなくなった。
そして、大事な人を作るのも怖くなった。
いつかまた私の手からすり抜けるように消え去るのではないかという不安が何時も胸を締め付けた。
それでも、どんなに不安になっても生活は続いていく。
だから私は最大限の努力をした。
姉さんを見つける為に必要な資金と情報を得るための時間を手に入れる為に、親と学校側への隠れ蓑の為の信用と実績を積み重ねた。
多めの給金と対人対話の演技向上を学ぶ事の出来る一石二鳥のアルバイトも見つけ、もう3年半程続けている。
幸いといって良いのか、あの事故以来、私には変な能力が備わっていた。
なんと説明したら良いのか。
そう、姉さんが高校の時に良く遊んでいたゲームにあったアイテムボックス?というのが、見える様になり、そのアイテムを使えるようになったのだ。
中には制限?みたいなのが、かかっていて取り出せない物もあるけれど、飲むと空を飛べるエナジードリンクとか自分と自分の触れているもの以外の時間を弄れる腕時計とか色々ある。
まあ、お蔭で今のアルバイトも色々と対人トラブルとかあるけど、なんとか凌げているし、学校にも親にも今だにバレずにいる。
只、弊害もやはりある。
時間を停めたり、巻き戻したりすることで、私の身体だけ周りの人より成長が早い。
当然だ。
何せ、正確な時間は分からないけれど、大体3年以上、皆より多く時間を過ごしている事になる。
なので、成長と共に制服の胸やらお尻やらが若干キツい。
これは正確には成長だけの理由ではないのだけれど。
制服ブレザーだから何とか凌いでいるけどそろそろ限界が怪しい。
因みに、一番助かったアイテムは女性用のナプキンだったりする。
これ本当に優れもので、多い日でも重い日でも来てないじゃないかと若干焦るほど辛くない。
既成品と何度か使い分けてみたけど着けるだけで如実に効果が現れるので、もう手放せない一品である。
下着に関しても、例のアイテムボックスに数枚あったので使っているが、この下着、サイズ自動調整が付いていてフィット感が最高な上に肌触りも最高。
更に汗の吸収性も抜群で蒸れないし、匂わない。
私がこの下着の虜になるのに差程時間は掛からなかった。
しかも、下着を脱ぐとアイテムボックスに自動収納され、一度戻ると次に取り出す時、新品の様に清潔で綺麗、しかも良い香りがするというお得使用。
だけど、初めて使用した時、トイレで下ろした瞬間に下着の感触が一瞬で消えた時はノーパンでどうしようかと本気で考えたものだ。
そのあと慌ててアイテムボックスを確認したのはいい思い出だ。
それでも下着って高いからお財布にも優しいし、いまだに使い続けている。
スキンケアもエリクシール肌水?とかいうのを使っていたら赤ちゃん肌のようにモチモチお肌をゲットしてしまったし、化粧品も一通り揃っていて、アルバイトの時に役立っている。
一度ムダ毛処理の後にエリクシール肌水をつけたら何故かムダ毛が生えなくなった上に、ふくらはぎに脇や二の腕も引き締まったので、思わずお風呂に肌水を入れて潜ってしまった。
潜った後、髪の毛とか無くなるかと焦ったが、逆に艶サラになっていた。
だけど、アソコが白牌になってたのだけは解せない。
アソコは無駄毛じゃないよ!
でも、お蔭で身体全体が引き締まり、かといって胸は2サイズもupしたし、肌も柔らかくモチモチ艶々の透き通るような美肌で最高のプロポーションを手に入れてしまった。
後、演技の養成所にも通った。
フェイスコントロールの訓練や声の表現も猛勉強した。
アルバイトで実践訓練もした。
対人対話スキルも磨き上げ、高校の勉強も死ぬ気で頑張った。
対人対話のスキルは評価upの為に何時も使っているけど、演技の方は結構疲れるから普段は能面で過ごしている。
その方がアルバイトを誰か知り合いに見られても私だと気付かれない確立が上がる。
まあ、化粧もしてるし、髪型も変えてるし、そうそう、バレる事はないとは思うのだけれど。
ただ最近、姉さんの情報があまりにも無さすぎて目的と手段が逆に成りつつあるのが困りものだったりします。
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