第20話 色、色々



 3日が経った。

 ディズとヴェルフリーディ。この3日間、基本一緒にいる。



「寒い」

「我慢しな坊主」



 最近凄く冷える。季節的にはまだまだ過ごしやすいはずのなのに、季節外れの冷風のおかげで夜は布団にくるまって寝ているくらい寒い。


 空き家だと、そんな寒さもより厳しくなる。

 いつも通りというには短い期間だが、凍える寒さの中で2人は召喚を行使した1番大きな広間にいた。


 ディズは空き家へ通ってマナのコントロールの訓練を繰り返し、ヴェルフリーディはその指導を行う。

 最初こそ助言が多かったが、3日も経つとはほぼ静観している。


 ただ、それだけ鍛錬してもマナを理解するのは難しい。


 ひたすら手探りと試行錯誤は変わらず、地道に特訓する以外に道はない。

 それでもアドバイザーがいるだけで、その地道さも実を結ぶのは早かった。


 マナの最大の特徴。

 それは『環境や天候によって常に変化し続ける』というものだ。


 まず、空気中のマナが濃いところもあれば、薄いところもある。

 この理由は様々。とにかくマナが溜まりやすい場所もあったり、溜まりにくい場所もあったりする。


 ちなみにマナが濃い場合でも薄い場合でも「何かある」と警戒するのが妖霊。だが、マナの感覚を覚えたてのディズは極端な濃度でもないと分からないので、あんまり意味はないのが現状だ。


 そして、マナの比率は常に目まぐるしく変化する。


 家の中に居ても雨が降れば『水のマナ』が増え、暖炉を使えば『火のマナ』が増える。自然環境によっても同様で、川の近くでは『水のマナ』が多く、畑のところには『地のマナ』が多い。


 これは火が水に変わっているのでない。単純に増えたり減ったりしているだけだ。

 このようにマナには性質があり、その性質と環境は大きく連動する。


 ディズがマナの性質について理解しようとするとヴェルフリーディは首を横に振った。

 ヴェルフリーディは真剣な表情で語る。



「マナには性質があるようでない。その意味は感覚で理解するのが1番近道だ」



 マナの性質で『火のマナ』や『水のマナ』というのは正しくない。

 あくまで言い換えているだけだ。



「実際には『赤いマナ』と『青いマナ』と言った方が正しいんだよ」

「……色?」

「そうだ。色だ」



 この『赤いマナ』には火、熱など、『燃える』に関連する性質がある。さらに『苦』や『陽』のような『感情』に関連する性質まである。


 このように、火ではなく、様々な性質を内包しているのがマナなのだ。

 一つの色に様々な性質を含んでいるからこそ、感覚で理解するべきということだ。


 これがレッドブルーグリーンイエローオレンジパープルインディゴ

 全部で七色あるのだ。奇しくも虹の色である。


 ヴェルフリーディは自らを「炎の妖霊」と言った。

 これは『赤いマナ』のという事なのだ。



「なるほどなぁ~。理解度だよなぁ。妖霊が人間以上に魔法が上手いのはこういうことか」

「だな。これを理解しているだけでも、魔法の練度は上がる」

「頭で理解するだけじゃダメなの?」

「ダメだな。いや、知識として理解したところで意味がねェ。使えるかどうかだ。感じ取れるかどうかだ。そうなると感覚で理解していく方が絶対に良い。知識だけだと偏る。感覚でやって理屈を覚えるのが1番だ」

「………………………………………………………………ムズくね?」

「知らね」



 真顔で返された。

 それもそのはず、妖霊であるヴェルフリーディには当たり前に行っている感覚だ。

 こう言っては何だが、感覚を明確に言語化している彼を大いに評価するべきで、それ以上を求めるのは流石に面の皮が厚すぎる。

 ただ、それだけ妖霊は高いレベルでマナを理解している。本能的な理解と言っていい。


 その中で自分が持つ性質と合致するなら尚の事、理解度は深い。


 そういう意味では、妖霊はマナの影響を強く受ける代わりに一点特化型となっている。

 ヴェルフリーディは『赤いマナ』に対する適正が高いから「炎の妖霊」。だからこそ、クロークのような「熱で光の屈折を操作する魔法」を使える。


 ディズは、妖霊こそ魔法使いの目指すべき姿のように思えてならなかった。


 重要なのは、その適正が魔法の巧さへ直結するという事だ。

 魔法の理解度も重要だが、魔力の理解度も重要だ。



「理解度を深めれば魔法の威力。魔法でできる範囲も広がるか」

「少なくともやりやすさとパワーは上がるだろうな」

「そうね。パワーね」



 マナの驚くべきはそのパワーだ。

 例えば、雨の日には水の性質を持ったマナの比率が高い。

 こういう時、水の魔法の強力さは半端じゃない。

 本来の10の威力の魔法が100になると言ってもオーバーではない。


 実際、水の魔術は2通りのやり方がある。

 1つ目は何もないところから水を出す。

 2つ目は近場の水を利用する。『魔術で水を操って行使する』のだ。


 後者の方が威力が高くなる。

 それは大方の予想通りだとは思う。だが、これは極端を言えば、【浮遊の魔術】で水を浮かせれば代用可能でもある。


 ここでよくよく考えてほしい。

 どうやって何もない場所から水を集めているのか?

 どうしてという事が、水の魔術と言えるのだろうか?


 この仕組みに、マナが大きく関わっているのだ。


 前者について……どうやって何もない場所から水を集めているのか?

 当初、ディズは空気中の水分を集めていると考えていた。しかし、実際は『青のマナ』が水に変化しているという方が正しい。


 万物に宿るマナの中で、『青のマナ』は水に強い関連性を持っている。

 結果、『青のマナ』を『水のオド』、『水分』に変容させることができるのだ。


 後者について……水を操っている事が、なぜ水の魔術となるのか?

 水を操るには『青のマナ』が必要――――というか適材だからだ。

 水を『青のマナ』以外で扱う事はとてつもなく難しい。なので、水辺に豊富にある『青のマナ』の力によって、そこにある水を簡単に操ることができる。

 水辺があっても、そこに『青のマナ』が無ければ水を操る事は難しくなる。


 そう、水が重要なのではない。

 水と整合性や適合力、変異性のある『青のマナ』が重要なのだ。


 そして、魔術に得意な属性が存在しているというのは、各種色とりどりのマナに対して適性があるということだ。



「俺のマナの適性分かる?」

「分かるぞ」

「赤? 青? 緑?」

「藍色だ」

「…………藍色?」

「マイナーだな。人間は三原色の事が多いんだけどなァ」

「まさかのマイナー。それ、なに? インディゴ? どんな適正?」

「珍しいのは間違いねェな。お前、【現象の魔術】が得意だろ?」

「分かるのか?」

「俺らの目なら、テメェらの見えない物も見えるんでな」

「それって情報量多くない?」

「人間基準で考えればな。でだ、【現象】を起こす事が得意だってことは既存の概念への侵入が得意なんだよ」

「…………既存? 概念?」



 よく分からない単語に、ディズはナチュラルに首をかしげる。

 前世ですら聞きなれていない上に、好きだったアニメや漫画でもフワッと捉えていた単語が当たり前に出てくる。

 思考を停止させるには十分な要素だった。



「今、この場にある当たり前への介入。それが【現象】の根幹だ。例えば、触れていない物を持ち上げる【浮遊の魔術】。これも『物は浮かねェ』っていう概念へ介入。ある意味で侵入をして、ねじ曲げる事を意味してんだ」

「……………………ごめん。バカにも分かるように説明してくれ」

「まずバカ治せッ」

「時間かかるだろ!」

「ま、【現象】ってのは、ある意味で万能なんだよ。何でもできるからな。だが、何でも出来るから、なんにでも適応できる訳じャない。結局、【現象】をいかにして活用するかを考えるっきャねェんだよ」

「つまり、バカには厳しいってことか」

「分かってんじャねェか」

「ちくしょう! フォローが一切されない!」



 概念を介入とか、侵入とか言われても、それを体験することは難しい。

 実感こそが1番強く残る経験値であるのはディズ本人にも分かる。

 その実感を得られず頭の知識だけで覚えてもに留まるだけだ。


 理解して体感できなければ半人前。体感しても理解できなければ半人前。

 その事実に彼は頭を抱える。



「…………浮かない常識を浮くという常識で塗り潰すってことでいい?」

「塗り潰すってのは少し強引だが、大まか間違っちャいねェ。むしろねじ曲げろ」

「ねじる。曲げる」



 ねじ曲げると聞き、真っ先に思いつくのは歪み。

 歪みと聞くとディズの頭によぎるのは親の愛情だった。


 経験上の話。

 無償の愛を与えてくれる愛すべき家族でも、個人では別の感情を抱く。良かれと思ってやったことでも余計なお世話になってしまう。


 人には主観がある。親も子供も同様だ。

 親の愛と善意をいつしかエゴと受け取り、エゴはいつしか悪意と認識してしまう。

 我が子を想っての行動が、結果的に子を追い詰める。


 これも歪みと言えば歪みだ。

 そこにあるものは『己を正しいと思う心』だ。



「あ……俺は出来る、だ。俺が正しいって思い込めばいいんだ」



 正しい――――とは傲慢でもある。

 何を持って正しいのか? 何を正解と言えるのか? 完璧な正しさを持つことができる人間がはたしてこの世にいるのか?

 しかし、それで魔法の鍛錬ではそれで成功したのも事実だ。



「どういう【現象】が良いか…………」



 頭の中で想像できる。

 理屈で言うなら、あり得ない現象を引き起こせるはずだ。



「あり得ない現象。それはきっとこんな感じだ」



 ディズは手を前に突き出す。

 流動体である魔力を優しく慈しむよう空中に流す。

 それは風に舞う蜘蛛の糸だ。蜘蛛の糸は空中を漂い、共鳴を待つ。



(俺は正しく出来る。できる、できる、できる、できる、できる、できる、できる、できる、できる、できる、できる、できる、できる、できる、できる)



 世界の正しさなど分からない。けれど、自分の正しさを選ぶことはできる。

 今のこの瞬間のディズは正しいやり方を選んでいると信じる。


 マナが導いてくれると信じて――――。


 暗闇でも触れる事で、その形を理解できるようにハッキリと藍色を感じ取る。

 周囲にあるのは赤と緑、黄色のマナだ。でも、これは違う。必要なのは藍色だ。自分の魔力と藍色のマナ。


 ――――波紋が起こる。


 波紋と呼応して、手のひらに魔法陣が赤い線で出てくる。



「お?」



 ヴェルフリーディの驚きの声は耳に入らなかった。

 今まで魔法陣が手に出てきた経験はない。だけど、これで良いと理解できた。

 こういうものだ。マナに身を任せるのだ。



「マナと完全共鳴してやがる」



 空間と空間が軋むような感覚が、ディズは感触で理解できた。

 それはマナが世界に影響を与えているのだ。悪い事ではなく、成功への手順だ。



「そこだ」

「ここだ」



 奇しくも2人は同時だった。

 ディズは魔法陣を掴んで、ドアノブのように回した。



「…………やりやがった」



 平坦に呟いたヴェルフリーディの声がディズにも聞こえた。

 その瞬間――――世界が反転する。



「やるじャねェか」



 ヴェルフリーディの言葉が合図となった。

 空き家の部屋が、ゆっくりと確実に回転しているのだ。

 それもメリーゴーランドのような横回転ではない。観覧車のような縦回転だ。


 ここからはディズとヴェルフリーディの体感の話をしよう。


 人が部屋の中で立つ場所は『床』――――当然だ。

 結論から言えば、『床』が


 なぜそんな事が起こったのか?


 部屋全体が、まるで転がされているように『回転した』からだ。

 ゆっくりゆっくりと――――『天井が壁』になり、『壁が天井』になる。『壁が床』になり、『床が壁』になった。

 まさに部屋が観覧車のように縦回転したのだ。


 彼らの立っている位置は『床から壁』になっていた。

 ディズは、足裏に接着剤でもつけたのか? と思うような位置に立っている。重力に引っ張られて落ちたりはしなかった。

 『壁から床』になった場所に立った。

 ヴェルフリーディはそのまま壁に立ったままだ。


 思わず、ディズの表情が緩んだ。



「俺…………凄くね?」

「お見事」



 素直な称賛を受け取る。

 ディズは足元にあるドアノブを掴み、ドアを開いた。


 ドアから覗いた外の世界は、いつも通りの光景だった。

 空き家の前。庭とも言えない地面に降り立った鳥は、当然のように地面を歩いている。つまり、この部屋の中だけ空間が歪んだのだ。


 部屋の中は反転し、外はそのまま。

 この不可思議さこそ、幻想という言葉にふさわしい。


 緩む程度で済んでいたディズの顔が満面の笑みになった。

 やってやったと言わんばかりだ。


 なんちゃって火炎放射器でも、なんちゃって消火放水でもない。

 これぞまさに魔法だ。



「これ、俺が【現象】の魔術でやったんだよな?」

「当然だろ? 【現象】っていうのは起こそうと思えば何でも起こせる。当人の腕もあるけどな」

「なんでも? じゃ、もっと凄い事が腕上げればできるのか?」

「いや、そりャ無理だな」

「無理なのかよ!? 言ってること違くね!?」

「いいか? お前のやったことは世界のルールをねじ曲げただけだ。お前の考えてんおは世界のルールを変えるくらいのことだろ? そりャ不可能だ。だから、ほれ…………来たぞ」

「え?」



 ディズの間抜けな声が終わった瞬間、世界が元に戻る準備を始めた。

 ゴゴゴッ! っという音と共に部屋が元の姿に戻ろうとする。



「おおおお!?」

「世界は常に元に戻ろうとするもんだ。【現象の魔術】っていうのはな。戻す必要のない事は一切戻らねェ。だけど、戻らなければいけない事はこうしてすぐに戻っちまう」



 ヴェルフリーディの言う通り、部屋は元へ戻っていく。



「概念そのものに手を加える事は、既にある常識や価値観を変えるってことだ。並大抵じャねェ。だが、【現象】なら、それも限定的にはできない訳じャない」

「今、まさに限定的な状況ってことかッ!」



 今までヴェルフリーディが立っていた壁は床へ戻る事になる。

 ディズは慌てて壁からジャンプして床へ戻り、なんとか着地する。



「もっと言うなら維持する力が必要って訳だ。お前には維持する力がねェんだよ。起こしたところで維持ができねェんじャ変える意味あるか? 無駄な労力を払う事が賢い訳がねェ」

「なるほど」



 一瞬だけ【現象】を起こしても、それはやってないと同じだ。



「それだけじャねェ。変えるってのはってことだ。共通を与える。常識を創る。基準を超える。それはんだよ。範囲を超えることができないなら、そもそもとは言わねェんだよ」

「…………厳しいわ」



 ヴェルフリーディは『自分の基準だけ満たす事は正解ではない』と言っている。

 つまり、『然るべきタイミングに、然るべきレベルで、然るべき期間、【現象】を起こす必要がある』のだ。


 例えば割れたコップを片付ける掃除ならば、『掃除する事に意味がある』のだ。

 それを履き違えてはいけない。


 割れたコップを掃除するのに、手段や道具だけ集めるのでは意味が無い。


 『魔法を使う労力』と『自力で掃除する労力』が、釣り合わなければ意味が無い。


 さらに割れたコップを掃除し終えたという当人の基準が、他人の基準で掃除した内に入らなければ、やっていないのと同じになる。それでは意味が無い。


 さらに言うなら、人間が魔法を行う以上、後手に回るべきではない。

 物事に対して先手を打てる方が魔法として機能性が上がる。

 コップが割れてからでは遅い。コップが割れる前に対処しなければならない。


 掃除をするのではなく、掃除をしない状況を作るべきなのだ。



「色々、制約というか…………考えなきゃいけない事が多いなぁ」

「魔法は叡智だとか、人間が良く言ってるじャねェか。なら考えろよ」

「はぁ~、頑張るわ」



 やろうと思えば、なんでもできる。

 それは全て自分次第なのだろう。人生と似ている気がする。

 やろうと思い、行動できるかが全てなのだ。選択肢は多くはない。けど、少なくもない。ただし、その中から選び取る必要がある。



「…………選べるように頑張るのか」

「なんだって?」

「こっちの話。それより俺って魔法の才能ある感じ?」

「質問を質問で返すけどよォ。才能をどう考える?」

「…………あ~、難しい質問だったか」

「まァ、才能ってのは細分化して考えるべきだ。読み解く力、書き出す力、速読、速筆も元から持ってれば才能といえば才能だ。才能ってのは行き着けば生かし方だぜ?」

「至言過ぎる。あ…………じゃあ、質問変える。俺の魔法に特徴ってある?」

「やっぱ器用な事だな」

「…………器用って言われてもさ。実感ないんだよ」

「自信持て、絶対に器用。アホみたいに器用だ。魔力を操作する能力が高い」

「……………………………………………………どのように生かしたらいいですか?」

「知・ら・ね!☆」

「む・じょ・う!☆」

「妖霊から見ても器用だと思うが、妖霊ならもっとハイレベルでできるしな」

「ぬあぁ~! 希望を打ち砕くような言い方するなぁ!」

「上げて落とすスタイルでやってるんでよろしく」

「さては友達いねぇな?」



 何にしても、ディズは選ばずに生きた経験を持っている。

 二の轍は踏まないと意気込んだ。


 今思えば、彼の前世にだってチャンスはいくらでもあったのに取りこぼしたのだ。その原因は頑張れなかった自分にもある。だから、前世で頑張れなかった自分が、今こうして頑張れていることが凄い事だし、『選択』できている。

 その事にディズは大いに満足している。


 自らに苦労を強いる事も、快楽に身をゆだねる事も、それは等しく『選択』なのだ。

 勝ちたい訳ではない。納得した方が選びたいのだ。


 明日も同じく進歩のある洗濯をしたい。と思った瞬間。ディズは明日の予定を思い出す。



「なぁ、明日ヴェイビットに……隣町に行くんだけどさ」

「この町の外か? ほんで?」

「友達に、魔法を教えてくれって言われててさ」

「教えりャ良いじャねェか?」

「何を教えればいいと思う?」

「魔法だろ?」

「そうじゃなくて」

「クハハ。つまり、自信がねェと?」

「分かってんじゃねぇか!」

「マナについて教えな。そうすりャ後は成り行きで行けるだろうさ」

「成り行きって、それでいいのか?」

「難しく考え過ぎだ。そもそも魔法ってのは人に魔力がある限り使えるもんだ。叡智とか、至宝とか、探究とか、色々言うが究極は手段だ。目的と手段を履き違えるなんぞ。バカのやる事だよ」

「……そっか、確かに――――」



 魔法が至上ではない。

 それは分かっている事だが、ディズという男はここに縋っている。だからこそ、知らぬ間に自分で魔法を高い位置まで上げてしまっている。



「魔法は特別じャねェ。忘れんなよ。特に、こっちの世界ではな」

「…………わかった」



 魔法は特別だというのはこの世界ではありえない。

 生物である限り魔力はある。使えるか、使えないかはあるかもしれないが、魔法という技法は生きていく上で絶対に必要な訳でもないのだ。


 前世で魔法がオカルト以上のものでしかなかった彼にとって、魔法はどうしても特別という先入観がある。

 その先入観こそ、最大の敵になるかもしれない。

 ディズは肝に銘じて、マナを撫でるように触るのだった。





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