第一幕  

 上座に向かって礼をする。

 次に、私の通う道場の師範に向かって礼をする。

 そして最後に相手の目を見て礼をする。

 三歩歩いてそんきょの状態に入る。

 今、この瞬間私は何も感じない。いわばの状態だ。

 はじめの合図で、立ち上がるり、互いが握った竹刀の圧が防具越しに私の鳥肌を立てる。私はこの殺意を感じる時だけが現実で生きている心地がする。

白刃を握っているわけではないが、まさしく真剣勝負だ。

 相手が竹刀を振り下ろし、面に切っ先が向かう。

殺し合いの始まりだ。

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幻獣の舞 池塘春草 @yuzukimuu

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