第3話 コチラ灯台って…言うべきだった

 ガチャッ…

 JCが受話器を握る。

「見たこともないクセに躊躇いなく取ったな…」

 レーダーがJCの顔を見ると、取ったはいいが、その先はどうしていいか解らないと顔に書いてあるような表情のJCがスッと受話器をレーダーに差し出した。

「もしもし…」

「……コチラはアメリカ海軍所属サラトガ…貴艦は本艦の進路上に位置している、直ちに15度回頭されたし…繰り返す、本館はアメリカ海軍所属サラトガ、直ちに回頭されたし」

「なんだ…米国海軍?」

「おい、レーダー‼」

 上の方からドライブが海を指さす。

 ブッシに黒電話を投げて、レーダーが階段を駆け上がる。

 ドライブが置いてあった古い双眼鏡をレーダーに渡す。

「なんだ…ありゃ」

 日の落ちた海に浮かぶ空母が一隻。

「レキシントン級サラトガだな」

「あぁ…じゃあ電話の向こうの相手に間違いないな…サラトガって言ってたわ」

「なんだって?」

「ん?」

「サラトガ…なんだって?」

「いや回頭しろとか…なんとか」

「灯台に?」

「灯台に…というか俺にか?」

 首を傾げるドライブとレーダー


「ちょっと、なんか喚いてるわよ‼」

 下でJCとブッシが黒電話をパスしあって騒いでいる。

「面倒くせぇ…切っちまえ」

 レーダーがブッシにそう伝えると、ブッシがチンッと受話器を戻した。


 ……同時刻『サラトガ』艦内では…

「大佐‼ 所属不明の艦は通信を切ってしまいました」

「な~に~」

 大柄の軍人が鬼のような形相で振り返る。

「一方的に交渉を決裂…これは開戦と判断していいな‼」

「えっ?」

「主砲‼ 目標、所属不明艦‼ 外さなくていい、威嚇じゃない‼ 1発で仕留めろ‼ 砲撃手、撃てー‼」

「えっ? えぇー?」

「なんだ貴様‼ 艦長に逆らうか‼ 誰かコイツを撃てー‼」

「えぇー?」

「大佐、サー・イェッサー大佐‼」

「なんだうるさい‼ 貴様も撃つぞ‼ 面倒くさい、ワシが撃つ‼」

 ターーンッ‼

「大佐ー‼ 副官を撃っちゃってどうするんですか?」

「うるさい‼ ワシの抜いた拳銃の先にコイツが立っていただけだー‼」

「砲撃手‼ 主砲準備どうした‼ とっとと沈めんかー‼」

「イェッサー‼」

「上官を呼び捨てにするなー‼」

「サー・イェッサー‼」

「2度までも…貴様も射殺だー‼」


 不幸な事故が頻発する艦内であった…。


 ……灯台内では…

「逃げろ…なんか撃ってきたー‼」

 レーダーが階段を落ちるように降りてきた。

「逃げろ‼ なんか撃ってきたぞー‼」


 爆音と大きな揺れが灯台を襲う…

 ほんの数十秒で、灯台は更地に変わった。


 立ちすくす4人…よく死ななかったものだと胸を撫でおろす。

 レーダーがコートのポケットから煙草を取り出して火を点けた。


(コチラ灯台って…言うべきだった)


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