第4話 見なきゃよかった…

「進路妨害の所属不明艦…着弾を確認‼」

「よし、よくやった‼」

 サー・イェッサー大佐は満足そうに頷いた。

「しかし…諸君…残念ながら犠牲者も出してしまった、英霊となった兄弟に…敬礼‼」

 ビシッと敬礼して、足元に転がる銃殺された乗組員に涙するサー・イェッサー大佐。

 自分で撃ったわけだが…それを犠牲者と割り切るあたりは、さすがというか歴戦の軍人らしさを感じる。

「なおれ‼ では諸君、我々の戦果を確認するため、本艦は着弾地点へ移動を開始する」

「艦長、副艦長以下…あの…犠牲者?のその…遺体は…どのように?」

「海の男は、海に還る…それが弔いだ…」


 ドボンッ…ドボンッ…

 甲板から犠牲者が海に投げ込まれる。

 副艦長、砲撃手、伝令係の3名が不幸な犠牲者となった艦内に大佐の笑い声が響く。

「カーッカカカカカー‼ 海の藻屑となった敵艦を眺めるのは最高だなー」


 ……

「レーダー…あの艦近づいてくるよな」

 ブッシが不安そうにレーダーに尋ねる。

「速度が落ちてないな…」

 確認するようにドライブもレーダーの顔を見る。

「真っすぐ進んでくるね」

 JCが艦を指さす。

「結果…乗り上げるんだろうな~」

 レーダーが煙草に火を点け深く煙を吸い込む。


 レーダーが煙草を吸い終え、吸殻を足で踏みつぶして3分…

 巨大な激突音の後に同時に4人の足元を揺らす衝撃が2秒遅れでやってくる。


「そうなるわな…」

「うん」

 レーダーの一言に3人が大きく頷く。


 ……

「座礁?」

 艦内で引っくり返ったの姿勢でサー・イェッサー大佐が伝令係(2代目)が、これまた引っくり返ったまま敬礼している。

「よし‼ 現状確認のため、全員甲板に集合‼」

「サー、イェッサー‼」

「貴様‼ 艦長を、上官を呼び捨てにするかー‼」

 タンッ…

 艦長室に銃声が1発響いた。

 ……

「なんじゃこりゃー‼」

 サー・イェッサーが夜空に吠える。

 座礁だと思われた艦は、びっくりするくらい綺麗に崖に突き刺さっている。

「艦長‼ 現状報告‼ 本艦は航行不能です‼」

「見りゃわかる‼」

 赤鬼のような形相で怒鳴るサー・イェッサー。

 しばし、苦虫を噛みつぶしたような顔で崖を睨んでいたサー・イェッサー大佐

「何をしている…上陸だー‼」

「艦長‼ 崖を上れと言うことでしょうか?」

「当たり前だー‼」


 崖をよじ上る兵士を見上げながら、う~ん…う~んと唸るサー・イェッサー。

「俺は…艦を失ったら艦長ではなくなる…ただの大佐になるのか?」

「艦長‼ 崖上に人がいるとの報告が…」

「艦長と呼ぶな‼ 俺は…俺はただの大佐になったのだー‼」


 ……

「なんかタダノ大佐とか聴こえたが…」

 レーダーが崖の下を覗き込む。

「誰かいるのレーダー?」

 JCがレーダーに尋ねる。

「あちゃ~」

(見なきゃよかった…)

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