第2話 扉が勝手に閉まったときに…

「レーダー…次の指示は?」

 しばらく口を押えて蹲っていたブッシが口を開いた。

 どうやら、そこそこの勢いで舌を噛んだらしく口の中で舌をモゴモゴと動かしている。

「どこに行けばいい?」

 ドライブも運転しながら横目でレーダーを見る。

「海だ…この街の海岸には灯台があるようだな」

「海好きー‼」

 JCが両手を挙げてテンションもブチ上がっている。

「この娘は、誘拐された自覚があるんかな?」

 ブッシが小声でドライブの耳元で囁くと

「海ー‼」

 ドライブが叫ぶ。

「オマエもかい‼」

 ブッシがドライブの太い腕をバシッと叩く。


「う~み♪う~み♪」

 JCとドライブのテンションが下がらないまま海岸の駐車場に車を停めた。

「海に似合うよね~、この車」

「フォルクスワーゲンタイプ2、この丸いデザインが人気なのだ」

 ドライブが胸を張る。

 車から降り砂浜を歩くと夕日が砂浜に4人のシルエットを映し出す。

 小柄で丸いブッシ、細身で背の高いレーダー、筋肉質なドライブ、そして華奢で長身のJC、バランスが取れてるようで、凸凹な4人組が足を止める。

「コレか…」

 レーダーが灯台を見上げる。

「近くで見るとデカいのね灯台って」

 JCが驚いている。

「自分の街だろ? 知らなかったのか?」

 ブッシが尋ねるとJCの表情が少し険しくなる。

「ん…JCどした?」

「…んん…うん…何でもない…なんだろう不思議なというか…なんか…怖いような、寂しいような…変な気持ちになった」

「入るのか? レーダー」

 ドライブが灯台の扉に手を掛けている。

「あぁ…」

 ドライブが灯台のドアを開けるとカビ臭い淀んだ空気が外へ流れ出す。

「何にもねぇじゃねぇか…」

 ブッシがドライブの後ろから中を見回す。

「とりあえず待つか」

 レーダーが中へ進む。

 4人が中へ入るとパタンッと扉が閉まる。

「お約束ってヤツね」

 JCが嬉しそうに笑う。

「笑うとこか?」

 ブッシが呆れたような顔でJCを見た。

 ドライブは壁から飛び出した階段を上って行く。

「レーダー…」

 灯台の頂上からドライブがレーダーに上から何かを落とした。

「おい…」

 落としかけながらレーダーがキャッチしたのは黒電話

「電話?」

 ブッシがレーダーが抱く様に受け取った黒電話を指さす。

「何それ? 電話って言った?」

 同じように黒電話を指さしたJCがレーダーに尋ねる。

「知らないのか…昔の電話だ、昭和のな」

「嘘…これが電話、コレを持ち歩くの?」

「持ち歩けないんだ…固定電話だからな、公衆電話みたいなもんだ」

「公衆電話?」

「それも知らないのか…平成後期産まれは困ったもんだな」

「別に困ったことなどないわよ」


 RiRiRiRiRi…

「鳴るじゃない…スマホと変わらないわ、大きさ以外は」

「線が繋がって無い電話が鳴る…気づくべきだったんだ」


(扉が勝手に閉まったときに…)

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