灯台の章
第1話 後戻りはできなくなったなぁ~
「なぁ…レーダー、アンタは何でこのバイトに応募したの?」
小太りの若い男がコーラを飲みながら後部座席から助手席の細身の男に話しかける。
「ブッシ、オマエと同じだろ…たぶん…」
30前半と思しき細身の『レーダー』と呼ばれた男が下校中の学生を眺めながら答える。
「アンタもかい? ドライブ」
小太りの男が運転席に座る背の高い男にも尋ねた。
クルリと振り返り、無言のまま頷く背の高い男。
「なんだかな~、この娘…保護って言ってもさ…それって誘拐ってことじゃないの?」
『ブッシ』と呼ばれた小太りの男がポテトチップスの袋をバリッと開ける。
「誘拐に、こんな目立つ車、用意しない」
少しカタコトの日本語でドライブがポテトチップスを1枚食べる。
「だよな…黄色いフォルクスワーゲン・タイプ2だぜ」
レーダーが煙草に火を点けた。
「いい車…だ…手入れもいい」
ドライブは気に入っているようだ。
「まぁJCウケはするかもだけどね~」
あっという間にポテトチップスを一袋食べたブッシが袋に残ったカスを大きく開けた口に落とし込む。
「あっ‼ あの子だ…」
レーダーが写真とコチラに向かって走ってくる女の子を見比べる。
「間違いないけど…コッチに走って来るのはなぜ?」
バンッ‼
サイドドアが勢いよく開いて、スラッとした長い生足が車内に入ってきた。
「出して‼」
「おいおい…お嬢さん…」
レーダーの言葉を遮るように写真の女の子が叫んだ。
「早く‼」
ドライブがタイプ2のアクセルを踏んで急発進した。
「だからさぁ…グッ」
後部シートで倒れそうになったブッシが何を言いかけて舌を噛んだ。
「ドライブどうしたの?」
レーダーがドライブに尋ねる。
バックミラーを見ろと無言のまま指で促す。
「ありゃ…なんだ? というか誰だ?」
助手席から首を出して後ろを確認するレーダー。
ゴルフクラブを振りかざした学生服の男が追いかけてくる。
「危険だったってわけか…」
レーダーが女の子に尋ねた。
「そういうことよ」
「ありゃ誰だ?」
「オニィよ」
「おにぃ? 君のお兄さん…で…君は?」
「JCでいいわ」
「女子中学生…ね」
「まぁ…労せず目的は達成したわけだが…」
レーダーが煙草を携帯灰皿でもみ消した。
JCがレーダーを指さす。
「俺か? 俺は…レーダー…まぁ、依頼人との連絡係だ、彼はドライブ、大概の乗り物を操縦できるし整備も熟す…アンタの隣で蹲っているのがブッシ…調達係だな…」
「じゃあ…よろしくね」
ニコリと笑うJC…
(後戻りは…出来なくなったなぁ~)
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