第28話 塾

残りの7月中は塾選びをした。


いろいろ調べて、いくつかの塾へ見学にも行ったが、

とりあえず近場で以前から名前も場所も知っている塾を選んだ。

夏休み後も学校が終わってから通える範囲の中から、

塾の外観や通っている生徒の雰囲気なんかを見ていたが、

やはり中に入ると、参考書や講師、授業の雰囲気など、

実際に体験しないとわからないことの方が多かった。


人生を変えるかもしれない受験に直結することとして、

本当はもっと調べるべきなのかもしれない。

でも探すことに時間を費やすよりも、勉強をする時間を選んだ。

もっと前から真剣に進路を考えていればと、

スタート時点で横位一列ではないことを感じた。

費用について両親にお願いすると、反対することなく了承してくれた。


勉強は好きではないが、嫌いでもない。

好きな教科は勉強している感覚はなく、苦にはなっていなかった。

その一方全く興味がない教科は少し焦りを感じていた。

好きの反対は嫌いではなく、無関心とよく言う。

つまりそういうことだった。


テストのために勉強しているだけなら、範囲も決まっており、

何とか乗り切れたが、高校受験や入学後を見据えると、

基礎が弱いことは今後も付きまとうことになる。


そのため塾では基礎から学び直した。

学校では適当に流していたことも、

さすがに塾となると誤魔化しが効かない。

もっと前から勉強していればと、

今更思っても仕方ないがその時ばかりは少し後悔した。


ただ一方で無関心だったことに少しずつ興味を持つことも増えた。

興味がひきつけれることのほとんどは、講師の雑談が大半を占めていたが、

勉強に関することはもちろん、将来高校生や大人になってからのエピソードは、勉強のモチベーションや進路や将来のイメージにもふんわり繋がっていった。


お盆を迎えたあたりまでは、何も考えずほぼ勉強をしていた。

家でも塾の宿題をしていたので、もしかすると一生で一番勉強したかもしれない。

ついこないだまで塾にも通わず、部活しかしていなかったのに、

意外にも新しい生活にすんなり馴染んでいた。


夕食を終えて部屋に戻り、塾の宿題を片付けようとしたとき、

スマホの振動音が聞こえた。

光ったスマホの画面に無意識に目を移すと、

サッカーニュースを通知するアイコンと、山口からのメッセージが入っていた。

山口とはあの「お疲れ会」以来会っていない。


メッセージの内容は山口の近況報告と、「今何してる?」という質問だった。

「のんびりしている」と山口に返事を返し、机に向き直すと同時にまたスマホの振動音が聞こえた。













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