第17話 BLTサンド
山口とは親しくないが、かといってこれまで険悪でもなかった。
中学に入学し、1年生で部活に入ってから部員として一緒になった。
山口は明るく周囲に気配りもできる。まさにいい人だと思う。
そんな山口とは部活内での会話はあったが、特にこれといった思い出もない。
部活でも試合に勝っても負けても、いつも同じような態度だった。
そんな山口と話したのは久しぶりだった。高森とのことは知らなかった。
だからなんと話し出していいのか、山口の気持ちもわからなかった。
「いつも何話してたの?」
「気になるの?」高森は含み笑いをうかべていた。
「いや。そうじゃなくて。」
「特に何もないわ。」
「会話してないの?」
「そんなわけないでしょ。学校やテレビのこととか。」
「ふ~ん。」
「そっちは普段何話してるの?」
「部活のこと。」
「部活以外のことは話さないの?」
「特にないかな。そういえば山口と部活一緒だって知ってたのか?」
「それくらいグラウンド見れば誰でもわかるわよ。」
「高森は山口と仲良かったのか?」
「う~ん。普通でしょ。学校で会うくらい。」
「…なんで…」
「何?」
少し尋ねるべきか悩んだが、
今まで疑問として抱いていたことを高森に聞いてみようと思った。
「…なんで山口は高森のこと好きになったんだろうな。」
「…えっ?」
「そんな接点や会話もないのに、どうしてあいつは3回も告白できたんだろうな。すごいよな。」
あいつの普段の姿と2人で話したときの姿で大きなギャップを感じていた。
その溝を僕はまだ埋められずにいた。
僕の問いに高森は大きくため息をついた。
「…それ私に聞くの?本人に聞けばいいじゃない。」
「…確かに。…そうだな。ごめん。」
「そういうとこだよ。」
「えっ?」
「あんたが凄いと言ってるのは3回も告白した山口のこと。
告白するのとされるのは違うんだから本人に聞いて。
それにどっちが凄いとかそんなものに優劣はないの。
あと結果は振られてるってとこも忘れないでね。」
「…そうだな。。」
「なんか釈然としてないみたいだけど、想像と経験は違うのよ。
こればっかりは自分で解決して。あと、少しお腹減ったからサンドイッチ買ってきていい?」僕がうなずくと高森は席を立ちカウンターに向かった。
高森の言うことはもっともだった。
言葉にすると山口と少し距離を開けていたことも、どこかでなんとか穏便に済ませられないかと甘えていたことも感じた。
山口と僕はこのまま口を利かないのだろうか。もしこのままになったとしても、
もともと話すことも少なかったから特に学校生活に問題もないだろう。
山口は怒っているのだろうか、それとも悲しんでいるのだろうか。いくら考えても
やはり僕には山口になんと話かけていいのか分からなかった。
5分ほどで高森は帰ってきた。
「おかえり」
「ちょっと悩んだけど、BLTサンドにした。」
高森の手にはサンドイッチが握られている。
「BLTサンド?」
「えっ、知らないの?」高森は何故か楽しそうだった。
いつもなら指で調べていたかもしれない。
だけど聞かないといけないこともある。
「BLTサンドって何?」
「BLTっていうのはね。」
案の定、高森は笑みを浮かべながら説明を始めた。
僕は今日1つ新しいことを教えてもらった。
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