第14話 組み合わせ


これまでの学校生活で僕がクラスメイトの注目を集めることはほとんどなかった。


話している内容はわからないが、

度々視線を向けられることに、徐々に不快感を覚えていた。


そんな気持ちを抑えながら席に座ってき、いつも通りに授業を受けた。

そしてホームルームの時間になり、いつもより早く机の教科書をカバンにしまい、

部活に向かう準備を始めた。

すると、「あのさぁ…」と前の座席から田中が声をかけてきた。

いつもより歯切れの悪い様子にすぐに気がついた。

すこしイラッだっていた自分を隠し切れず、すこし早口に返事をした。

「何?」

「土曜は何してた?」

「えっ?」

「いや、高森さんと城本駅前にいたって噂になってるよ。」

「そんなこと?」

「誰かと遊んでるなんて話聞いたことなかったから。」

「…」

「それも高森さんと」

「どういう意味?」

「意外な組み合わせってこと。それと今、高森さんって…」


はっきり言わなかったが

田中の様子から面倒なことに巻き込まれていることは、

何となく感じ取ることができた。

この場にいてもさらに面倒なことになりそうだと感じ、

「そっか」と返事をして、教室を出た。


部活は何事もなく、いつも通りの雰囲気で始まり終わった。

こんなザワザワとした気持ちも周囲の反応も明日には落ち着くだろうと、

早めに着替えて部室を出た。

ただし、一つだけいつもと違ったのは部活が終わってからだった。


部室を出ると、同じ部活の山口が声をかけてきた。

「あのさぁ、ちょっといい?」

「いま?」

「5分で終わる」

さっさと帰ってシャワーを浴びたかったが、部活で波風は立てたくない。

着替え終えたあと、部室から20m程離れた鉄棒の近くまで、山口について歩いた。

声をかけられたとき、声は淡々と話していたが、顔は明らかに不機嫌だった。

なんとか取り繕うとしているようだったが、その感情を隠し切れないでいた。


「お前、土曜日に高森と会ってたのか?」


「うん、まぁ。」

「お前ら付き合ってるのか?」

「…そうだな…」

山口といい、クラスメイトといい、

これまでほとんど会話したことがないのに、

そんなことにだけ興味を持つことに理解が追い付かなかった。

また高森からの決定通り、その旨を初めて自分の言葉で発した声が、

耳に入ってきたとき、ふと我に返ると同時に、

急に恥ずかしさとおかしさがこみあげてきて、視線を落とした。


「ふざけんな!」

山口の急な怒声に驚くと、山口はそのまま一人で帰っていった。

この光景に部活を終えた周囲の生徒や教員もざわつき始めていた。


明らかに円満な会話ではなかったが、これ以上この場に留まる必要性はなく、

まっすぐ家に帰り、またいつもの日常を取り戻した。


はずだった。

次の日学校に着き、教室に入ると事態はさらに悪化していることに気がついた。

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