第11話 決定
週末の土曜日の昼過ぎ。
僕は城本駅前の竹野書店にいた。
9時から11時までは部活のため屋外で汗を流した。
部活を終え帰宅し、ゆっくりシャワーを浴びて、
母が昼食に用意してくれたホットサンドで昼食を摂った。
家で一通りの身支度を終え書店に向かうと、
5分ほど前に書店に着いた。
屋外の汗ばむ程の気温から逃れるため書店に入った。
店に入ってすぐの新刊や話題書のコーナーの前に着くと、
「すいません」と背後から声をかけられた。
振り返るとそこに高森がいた。
図書室ほどの驚きではないが、書店で声をかけられるのはなんだか恥ずかしい。
軽く会釈を済ますと、高森から
「どこかいきたいとこある?」と尋ねてきたが、行く当てもなかった。
「いや特に」
「ならそこのカフェに入ろう」と書店を出て、書店の目の前にあるカフェに入った
。
店に入ると昼食を終えたカップルや、一人で読書をしている男性や女性グループ客の姿があった。高森は慣れた様子で右奥にある窓側のソファ席に腰を下ろした。
店員さんからメニューを受け取ると、高森はふぅとため息をついた。
「お昼食べた?」
「少し。」
「お腹減ってる?」
「少し。」
「私も少し食べてきたから、じゃあチーズケーキセットのホットコーヒーにするね。そっちは決まった?」
普段は来ないカフェメニューに目移りする中、見慣れたメニューが目に入った。
「僕はホットサンドのセットにするよ。」
「ドリンクは?」
「ホットのカフェオレで。」
高森は目が合った店員さんに、右ひじをあげサッと合図を送り、
テーブルに来た店員さんにオーダーを伝えた。
店員さんはオーダーを受け戻っていった。
それと入れ替わるように僕たちのテーブルにはナイフとフォークがセットされた。
中学生ならファストフード店が雰囲気的や価格的にも入りやすいだろうが、
高森は躊躇なく、このカフェへと足を進めた。
このお店の常連というわけではなさそうだが、カフェや一人での外出は普段からしているようだった。そして高森は今日ここに呼んだ意図を話し始めた。
「今日は来てくれてありがとう」
「別に。」
「早速本題なんだけど、」
「本題?」
「メッセージでも良かったんだけど、それでは本気度が伝わらないと思って。。」
「…別にいいよ」
「今日呼んだのは1つ決定があって。」
「決定?」
「卒業式の日が終わるまで、私と付き合ってるフリをして欲しいの。」
「…はい?」
この時、僕は高森を見くびっていたことを悟った。
僕には高森への好意もなければ悪意もない。
メッセージをやりとりしていても、平凡な中学生だと思い、
無関心に近い存在だった。
僕には高森の発した言葉の意味が全く理解できなかった。
店内の音楽と食器の重なる音、周囲の会話が、
決定を聞いてから生まれた数秒の間を埋めてくれていた。
そんな理解が及ばない話だったが、心のどこかで面白いと思う自分も確かにいることに気がついた。
「どういうこと?」
僕の問いに対して、高森は意図を話し始めた。
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