あなたへ

 これは、あなたへ宛てた手紙です。


 今、わたしの綴る言葉を受け止めてくれているあなたは、どんな方なのでしょうか。

 わたしを愛してくれるあなたでしょうか。

 わたしが愛するあなたでしょうか。

 わたしを嫌ってくれるあなたでしょうか。

 わたしが愛したいあなたでしょうか。

 わたしを知らないあなたでしょうか。

 わたしが知らないあなたでしょうか。

 私でしょうか。


 あなたへ

 わたしを愛してくれるあなたへ

 ありがとう。

 愛してくれてありがとう。出会ってくれてありがとう。

 たくさんのありがとうを、あなたへ。

 無数の人々の中から、ほかでもないこのわたしと出会ってくれて、そしてさらに愛してくれること。それは本当に奇跡的で、運命的で、まさに有り難いことです。

 ありがとう。それしか言えなくてごめんなさい。ありがとう。ありがとう。わたしはしあわせです。


 あなたへ

 わたしが愛するあなたへ

 ありがとう。

 あなたがいてくれること。それがわたしの生きる理由です。

 生まれてくれてありがとう。生きていてくれてありがとう。亡くなったあなたも、ありがとう。

 空想上のあなた、もうこの世にはいないあなた、わたしのことを知らないあなたに、わたしの言葉が届くことはないでしょう。

 それでも、わたしは世界の片隅で愛を綴る。伝わらなくても、わたしの愛は本当です。わたしがあなたを想う気持ちは真実です。

 愛をくれてありがとう。


 あなたへ

 わたしを嫌ってくれるあなたへ

 ごめんなさい。まずは謝らせてください。

 何かしてしまったでしょうか。ごめんなさい。

 思い当たらないことがだめなのでしょうか。ごめんなさい。

 すぐに謝ることがいけないのでしょうか。ごめんなさい。

 そして、ありがとう。

 わたしを嫌悪し、わたしと関わることをやめてくれたおかけで、わたしがあなたを苦しませることはなくなったのでしょう。ありがとう。あなたは優しい。

 わたしを嫌悪しているのに、わたしと関わることをやめられないあなた。きっと、わたしとあなたの周りの人のことを思っての行動でしょう。いつまでも苦しませてごめんなさい。ありがとう。あなたは優しい。

 わたしを嫌ってくれるあなたに、この言葉は伝わらないでしょう。相手に伝わらない謝罪は、謝罪とは言えません。わたしは赦されない。

 だからせめて、わたしはあなたに愛を捧ぐ。ありがとう。


 あなたへ

 わたしが愛したいあなたへ

 昔のわたしが、嫌いだと思って突き放してしまったあなた。今のわたしでも、どうしても愛することができないあなた。

 待っていてください。わたしはいつか、あなたを愛せるようになります。

 今日のわたしにはできなくても、明日のわたしになら、あさってのわたしにならきっとできる。

 わたしはあなたを愛したい。


 あなたへ

 わたしを知らないあなたへ

 わたしが知らないあなたへ

 世界中のあなた。

 わたしがこれまで関わりを持ったことのないあなた。これからも関わりを持たないあなた。これから関わりを持つあなた。

 あなたがいてくれるおかげで、わたしもここにいることができます。

 もしも世界にわたしひとりだけだったら、わたしは、わたしがわたしであることが判らないでしょう。

 ありがとう。



 そして、私へ

 わたしを愛してくれる私へ

 わたしが愛する私へ

 わたしを嫌ってくれる私へ

 わたしが愛したい私へ

 わたしを知らない私へ

 わたしが知らない私へ

 

 いまのあなたは、どんな私なのでしょうか。

 

 わたしを愛してくれますか。

 わたしが成りたい私ですか。

 わたしを消してしまいたいですか。

 わたしのままですか。

 わたしを忘れてしまいましたか。

 わたしの想像もつかない私ですか。


 わたしは変わるでしょう。あなたになるでしょう。

 あなたが、私が、しあわせであることを願います。

 わたしを思い出したくもない過去だと吐き捨てようと、わたしの愛せない私になろうと、どんな変化が訪れようと、その未来が私なりのしあわせであることを願います。

 願って、信じて、わたしはあなたに愛を伝えたい。

 ありがとう。しあわせでいてくれてありがとう。生きていてくれて、ありがとう。



 あなたへ

 すべてのあなたへ

 すべてのあなたが、あなたなりのしあわせを見つけて、素敵に生きることを祈って




 1月 30日





 ────────



『僕は』


 今日は曇っているので、わたしは死ぬことにした。

 未来を願ったはずの手紙は、遺書となり過去に取り残された。




 2月 1日





 

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